私にもどんなことでも話してくれて、ぜんぶをさらけ出してくれます
こんばんは
神戸メンタルサービスの平です。
彼女のパートナーは陶芸家。といっても、思うままに作品をつくり、それを売って生計を立てているのではなく、大手の陶器メーカーに勤務して生活の基盤となる収入を得ています。
そして、自分の時間に作品づくりをし、時折、コンテストに出品して、それなりの賞を取ることもあるようです。が、生業として陶芸家になるのは経済的になかなか難しいことであるようです。
しかしながら、彼は芸術家として独自の世界観をもっています。
その一つとして、結婚に関してはネガティブなイメージがあるようです。つまり、結婚しようとは考えていないのですが、女性との交友関係は多いほうといえそうです。
彼はなかなかのイケメンで、陶芸家という肩書きがあるので、けっこうモテます。そして、作品づくりがうまくいかないときなどに、女性とのふれあいを求めるタイプなのです。
彼女と出会ったのもそんな気分のときでした。が、意外と身持ちの堅い彼女は他の女性たちと違い、彼の誘いをはねつけたのです。
それどころか、彼は彼女から厳しく説教されました。
「あなたはいつもこんな一時しのぎのなぐさみで自分を満たしているの?」
彼がこれまでに出会ったほとんどの女性たちは、彼に嫌われたくないと、従順に彼に接していましたので、女性からこんなにこっぴどいことを言われたのは初めてでした。
当然、反発し、悪い態度をとります。が、彼女はたたみかけるようにこんなふうに言うわけです。
「バツが悪いからって、開き直るんじゃないわよ。あなたはそれほど悪い人じゃないでしょ。けど、自分を大事にしていないから、女も大事にできないのよ。
それこそ、主人に怒られた犬のようにしょぼくれる彼。
「自分に自信がないときだけ、女関係で優位に立って、無理やり自信を回復してるってことよね」
直球でグイグイ攻められ、彼女に対してはぐうの音も出ません。
「いつもこんなふうに自分の気持ちをごまかしながら生きてきたのね。かわいそうに。だれもあなたと心でつながれなかったのね」
涙を浮かべながら言われたその言葉がとどめの一撃となり、彼は彼女にのめりこんでいったのです。
彼とおつきあいをはじめた彼女は、彼のことを身近な人たちに紹介したいと思ったのですが、彼は「ぜったい内緒にしたい」というタイプでした。
また、彼女は結婚し、家庭を作り、子どもももちたいと思っていますが、彼は「扶養家族ができると、自分の創作活動が制限される」という恐れをもっていました。
自分の世界にだれかを入れたり、自分から出たりということをまったくしようとしないのですね。
言い換えれば、「この世界には自分の居場所はない」、「この世界で自分はまったく通用しない」という思いが強く、そんな自分を隠そうとしていたのです。
仮に作品が評価され、いっとき名が売れたとしても、陶芸の世界でそれを継続することはほんとうに難しいということを彼は知っていました。
落ちぶれた自分を知られるぐらいなら、はじめからだれにも自分のことは知られないほうがよいと思っていたのです。
どこか変ですよね。
芸術家はだれもが自分の作品を評価されたいという思いで創作活動に打ち込みます。彼もそう思いながらも、自分を隠そうとしているのですから。
この二人は、それから1年半後に別れることとなりました。そして、なんと、彼女はその後、ある彫刻家と結婚したのです。
その彼女が、こんなことを私に話してくれました。
「スポットライトを浴びたとき、前の彼は、自分のアラがさらされ、みんなに笑われてしまうと思うような人でした。
結婚した彼は、そんなダメなところも含め、自分のすべてを知ってほしいという気持ちをもつ人です。
だから、私にもどんなことでも話してくれて、ぜんぶをさらけ出してくれます。それが一流と二流の違いなのかしら」
では、来週の恋愛心理学もお楽しみに!!