職場では頼み事をするシーンがいくつもありますよね。
たとえばあなたが家族の介護などで1週間休暇を取るため、その間の仕事を同僚や上司、部下などにやってもらえるよう頼む必要があるとします。
みんなそれぞれ自分たちの仕事で忙しいのにあなたの仕事までやってほしいとお願いするのは、相手の迷惑になるんじゃないかとなかなか言い出せないことがあるかもしれません。
一方で、悪びれもせずにうまく人に頼んで、しかも快く引き受けてもらえる人もいるようです。
頼み上手な人は、どのようなことをしているのでしょうか。
◇タイミングを見る
誰かに頼み事をするとき、相手に話しかけるタイミングは快く引き受けてもらえるかを左右すると言ってもいいかもしれません。
もしあなたが誰かに道を尋ねるとしたら、公衆トイレに駆け込もうとしている人に声をかけますか?そんな人に声をかけたら、にらまれたり、無視されてしまうかもしれません。
人は気持ちに余裕があれば他人にも優しくなれるのですが、余裕がないときはどんなに優しい人でも優しくなれないことがあるものです。
タイミングを見るというのは、まず話しかけようとしている相手の様子を見て、いまどんな状況なのか(急いでいるのか、ゆっくりしているか、など)を自分なりに理解することです。
もし余裕が無さそうにしているときであれば、その人がやろうとしているものを遮らないことが相手を大切にすることと言えるかもしれません。
そうすると、トイレに駆け込もうとしている人には声をかけないでしょうし、忙しく外出しようとしている人や電話をかけようとしている人に対しても、頼み事をするのは後にしようという判断がつきやすいかもしれません。
◇断ってもいいと思える頼み方をする
頼み事をするときに、頼んだ相手には断られたら困るとあなたは思うかもしれません。
とはいえ、引き受けてほしいという気持ちが前面に出過ぎると、高圧的なごり押しのように相手に感じさせてしまいかねません。
人は「やりなさい」と強制されたり「やって当然」などと傲慢な態度をされると、自分を大切に扱われていない感じがし、その途端に話を聞こうという気が失せることがあります。
頼み事というのは、それを引き受けるかどうかは頼まれた方が判断できる、つまり引き受けてもいいし断ってもいいですよ、というスタンスで依頼することが相手を大切にすることでもあるのかもしれません。
そのためには、「〇〇をやってほしいんです。」や「やってくれますよね?」などという言い方よりも、「〇〇をしていただくことは可能でしょうか?」「お願いできますでしょうか?」などと、断ってもいい(断る権利がある)と思える「お願い」のような頼み方をしたほうが、かえって引き受けてもらいやすいと言えるかもしれません。
◇相手の不満を先取りする
あなたが忙しいときに誰かから頼み事をされたとしたら「え?いま忙しいんだけどな。」など、ちょっと迷惑だ・・・という気分になったとしてもおかしくありません。
私たちは自分が取り組んでいることを遮られたり、自分がやるべきだと思っていることに追加して何かをしてほしいと言われると、余程余裕がない限り不満を感じるものではないでしょうか。
邪魔をしないでほしいという気持ちかもしれません。
さらに人は不満を感じたときに、その不満を誰かに分かってほしいと思うものではないでしょうか。
どう分かってほしいのかといえば、「言わないでも分かってほしい」と言えるのかもしれません。
あなたが「忙しいから嫌だな」と思ったときに、「お忙しいところ申し訳ありません」などと言われたとしたら、あなたは口では「いえいえ、全然問題ありませんよ。」と答えつつも、心の中では「(私が忙しいと)分かってるじゃないか」と、「分かってほしい」気持ちを相手に満たしてもらったようで、悪くない気分を感じるかもしれません。
相手の不満を先取りするというのは、頼み事をしたときに相手が感じる不満を、さきに言葉にして伝えることにより、相手に「分かってますよ」「そんなあなたを大切にしたいと思っていますよ」と言外に伝えることと言えるのかもしれません。
もちろん相手がどのような不満を感じているのか正確には分からないし、あなたが決めつけることはできませんが、相手を大切に思いたいという気持ちで頼み事をするのであれば、「お忙しいところすみません」や「面倒なことをお願いして恐縮です」とか、「期末で大変なときに申し訳ありません」などの言葉を添えることができるかもしれません。
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頼み事を受け入れてもらいやすくする秘訣は、相手への思いやりにあると言えるのかもしれません。
人は自分を大切にされると、お返しをしたいと感じるものです。(好意の返報性といいます。)
お返しを期待して相手の心を操ろうとするのではなく、心から相手を大切にしようと人と接することで、頼み上手なあなたになれるのではないでしょうか。