同性の親に近づいてみるという裏ワザ
こんばんは
神戸メンタルサービスの平です。
先週に引き続き、勤務先の上司と不倫していた女性のお話です。
なにごとにもパーフェクトだった上司と別れたあとは、だれとつきあってももの足りないと感じるようになった彼女。その恋愛パターンのルーツには、単身赴任で家にいないことの多かった父親の影が見えました。
また、恋愛するときの彼女は“子ども”の自分を使い、パートナーに対してはわがままな態度をとりがちでした。不倫相手の彼はそれをかわいいと言ってくれましたが、ほかの男性にとっては必ずしもそうではありません。
この彼女の恋愛パターンを変えるには、どうすればいいのでしょう?
カウンセラーがよく行うのが、「おかあさんに近づいてもらう」という方法です。
母親は、父親のパートナーであり、彼女にとっては“成熟した女性のシンボル”です。
父親をめぐってはライバルのような関係でもありますが、母親に近づくことで、「なぜ、おとうさんはおかあさんを選んだのか」、「大好きなおとうさんが結婚した相手とは、どのような女性なのか」を学ぶことができるのです。
さっそくお話を聞いてみると、彼女の母親は非常に家庭的かつ温厚なタイプとのことでした。
そして、女の子はだれもがそうなのですが、母親を見て、「自分も将来、あんなかんじになるのだ」と考えます。
ところが、彼女の場合、母親が家事全般を完ぺきにこなすタイプだったので、「なにをとっても、おかあさんにはかなわない」と感じていたようです。
そこで、彼女がこだわったのは、それなりに名の通った私立大学に進学するということでした。母親は高卒だったので、学歴で勝つことで、コンプレックスを晴らしたつもりだったのです。
とはいえ、実家暮らしの彼女は、家事全般はみな母親におんぶに抱っこ。母親もかわいいわが子のことゆえ、なにもかも完ぺきに面倒を見ていました。
言い換えると、本来、彼女は母親側に立って、男性の愛し方を学びたいところなのですが、実際は父親側に立って、母親に面倒を見てもらっているような状態だったわけです。
つまり、彼女にとって必要なのは、父親のような男性というよりも、母親のような男性なのかもしれませんね。
かつ、不倫の彼と会っているときは、家庭的なことはまったく必要ではなかったわけです。
そんな彼女は、家庭をもつことに対してまったく自信がもてずにいました。
さらに、自分には子どもは必要がないとも思っていました。心理的に見ると、子どもをもつことで、自分が子どもではなくなってしまうという恐れがあるからです。
私は彼女にこう聞いてみました。
「おかあさんの素晴らしいところは、どこだろう? おかあさんにはどんなことを感謝してる?」
この質問に、彼女はなかなか答えることができませんでした。
その代わりに、「おかあさん、なんであまりお化粧しないんだろう」、「おかあさん、シェイプアップすればいいのに。昔はあんなにきれいだったのだから」などと文句ばかりが出てくるのです。
これは、母親を承認したくないという彼女の心理から出た言葉です。
母親を承認するということは、母親にできて自分ができていないことがあると認めることになります。だから、だから抵抗があるわけですね。
それでも、彼女自身、多少は家庭的なことができるようにならなければいけないとは思っていました。
そこで、母親に近づくという意味で、料理や掃除、洗濯などの家事に挑戦してみたところ、意外にも興味が涌き、楽しむことができたのです。
しかも、「思っていたほど、自分はできないわけでもなかった」という経験も彼女はしました。
料理などはできるようになると、こんどはだれかに作って上げたいと思ったりもしますよね。
彼女がそれを実践したところ、与える側のよろこびも感じることができて、心のバランスがとれてきたのです。
読者のなかにも、恋がうまくいかないと感じている人は少なくないでしょう。
「同性の親に近づいてみる」というのは、じつは古典的な心理療法の一つでもあります。なにをしてもうまくいかないときは、裏ワザとして、試してみてもいいかもしれませんよ。
では、来週の恋愛心理学もお楽しみに!!