私たちの頭の中は、顕在意識と無意識からできています。
顕在意識は、私たちが頭で考えている事柄が意識にある状態です。
自覚できている意識です。
一方、無意識には階層があり、顕在意識に近い浅い部分が潜在意識、顕在意識から離れて遠くにあるのが本来の無意識です。
本当の無意識には私たちの先祖から脈々と引き継がれてきた生物・人間としてのパターンがあり、それが神話・伝説・夢などになって時代や地域を越えて類似する姿・象徴・行動が時代や地域を超えて繰り返されていると捉えられています。
例えば鬼子母神の話や山姥と小僧、グリム童話の赤ずきんちゃんなど女性が子供を食べる話は世界中にあり、これは母親が子供を飲み込み支配してしまうという無意識の負の側面についての行動や心のパターンを具象化したものと言われています。
ユング心理学でいう元型の1つ太母(グレートマザー)の一側面です。
この本当の無意識は、私たちには認識ができないと考えられています。
一方、浅い部分の無意識、すなわち潜在意識は何かをきっかけに私たちの顕在意識に登ることができる意識です。
最近の研究では「匂い」が潜在意識を顕在意識化させる強力な引き金になるとも言われています。
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さて、私たちは日常生活の中で、「こんな暑い日にはさぞやビールが美味しいだろうなぁ」と思ってみたり、「明日会社に行くのがいやだなぁ」と思ってみたりします。
これらの事柄を意識できている時間はこれらのことが顕在意識化されているわけです。
しかし、そのように思う原因は潜在意識下にあり、なかなか思い出せない場合もとても多いものです。
夏が近づいてきた昨今、ビールのCMが花盛りですが「こんな暑い日にはさぞやビールが美味しいだろうなぁ」と思った原因は、そのCMが影響しているのかも知れません。
花火を見ながらグビリとおいしそうにビールを飲むシーンや、自分時間に自分流にビールを楽しむ姿など、私たちの中にある日常や憧れなどにリンクしてイメージを私たちの中にそのシーンを作り出すのがCMの効果です。
昔、某自動車メーカーが自社の車を見て走るエリマキトカゲのCMを放送し、CMは大ヒットしたのですが自動車の販売台数は伸びなかったことがありました。
CMは商品の販売を促す、あるいは企業や団体などの認知度を高めることを目的として大金を注ぎ込んで制作されるものですから、CM業界ではこのCMは失敗作と言われました。
エリマキトカゲの印象が残り、またエリマキトカゲはブレイクしましたが「何のCMだっけ?」「車のCMだけどどこのメーカーだっけ?」というように、エリマキトカゲのみに注目が集まり、消費者がその自動車に乗っている姿をイメージできなかったのですね。
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イメージは、潜在意識の影響と現在の状況がミックスして作り出されます。
私たちは自分がイメージした内容により行動や行動の在り方を選択します。
先ほどの「こんな暑い日にはさぞやビールが美味しいだろうなぁ」と思うと、ひょっとしたら夕方にはビヤガーデンにいるかもしれませんし、寛ぎながら自宅で少し贅沢なビールを飲んでいるかもしれません。
潜在意識の中に「暑い日のビールはおいしい」「ビヤガーデンは楽しい」「寛ぎたい」などの思いがあり、それがひょっとしたらCMから受ける印象と重なって、自分の中でビールを飲んでいる自分のイメージを作り、行動へと移るのです。
もし仮に潜在意識に何らかの理由で「ビールはおいしくない」という経験や思いがあると、今日がいくら暑くてもビールを飲む自分はイメージすることができず、ビールを飲みに行こうとは思わないわけです。
私たちが何らかの行動を起こす、起こさないにかかわらず、イメージが大きな影響を及ぼします。
何か行動を起こそうとしても、自分の中にイメージが湧かなければ行動を起こすことに二の足を踏んでしまいます。
起こそうとする行動に潜在意識からネガティブなイメージが影響を与えれば、そもそも行動を起こそうとは思いません。
私たちが行う行動は、作り上げたイメージが元になっているのです。