彼のようなタイプは、恋愛の段階を踏んでいくことが苦手なんです
こんばんは
神戸メンタルサービスの平です。
その日、私どもを訪れた彼は32歳。有名な理系の大学を出て、だれもが知る企業に勤める非常に真面目な男性です。
彼はいままで、女性とおつきあいしたことはまったくなかったし、自分に関心をもってくれる女性がいるなどということも考えたことがありませんでした。
しかしながら、結婚したいという気持ちはあったわけです。
その彼が、母親から「私がお金は出してあげるから」と、半ば強引に有料のお見合いサイトに登録させられわけです。
そのときから、びっくりするようなことが起こるようになりました。とにかく、モテるのです。
じつはお見合いサイトではよく起こることなのですが、彼が優秀な大学を出ていて、一流企業に勤めているという、条件面が素晴らしいのがその理由です。
そして、そこでは、出会う女性、出会う女性が、目をキラキラさせながら自分とのデートにやってきます。
「素晴らしい男性に違いない。こんなエリートのお嫁さんになれたら、自分はどんなに幸せだろう」と彼女たちに思われているとは、彼はただびっくりするばかりです。
その彼が私どもにご相談におみえになったのは、女性たちにほんとうの自分を知られたら、きっと失望されるだろうという恐れがあったからなのでした。
「デートをしても、自分のことをまったく見てもらっていない、知ってもらっていないという気がしているんです」と彼はいいました。
「なんとか結婚できたとしても、こんなつまらない退屈な男だということが知られたら、きっと離婚されてしまいます‥‥」
そんなことから、お見合いサイトの人もびっくりするほどモテているのに、女性とつきあうとか、結婚しようとかいう気持ちになれないというのが彼の問題だったのです。
1回目の面談カウンセリングの最後に、私はこんなふうに彼に言いました。
「あなたのその不安や心配を、まずは相手の女性にコミュニケーションしてみてください」
「あ、はい、そうしてみます」
「ただ、あなたがそう言っても、お相手の女性は“またまたー、そんなことはないでしょ”とか、“もう、謙虚なんだから。そこが、ス・テ・キ”などという反応をすると思います。
それでも、まずはちゃんと伝えようとすることがいちばんです。そして、あなたが今日、カウンセラーである私に話してくださったことのすべてを彼女にぶつけてみましょう」
「やってみます」
「そして、お相手があなたが話すことをまったく信頼してくれないとしたら、その彼女はあなたとの結婚を人生の逆転満塁サヨナラホームランのように考えています。
つまり、表には見えないかもしれませんが、このタイプの女性は大きなコンプレックスを抱えている場合が多いのです、あなたが完ぺきなパートナーでないと困るので、あなたのコンプレックスが目に見えなくなっているのですよ。
反対に、あなたの話を聞き、“それ、わかります。じつは私も‥‥”などと言ってくれる人も必ず出てくると思います。そんな人は、あなたとうまくいくベスト・パートナーかもしれませんよ」
それから3カ月後、彼はまさしく、私が言ったような“それ、わかります。じつは私も‥‥”というタイプの女性とめぐり逢いました。
彼女は田舎育ちで、長女として、子どものころから母親の代わりに家事にがんばってきた女性でした。
男女関係にはうとく、男性からは何度かアプローチされたことがあるものの、自分に自信がなかったゆえ、なかなか本格的なおつきあいには発展せず、婚期も延びていたのです。
そして、彼女も彼と同じく、自分の気持ちを隠すタイプだったので、たがいに理解しあえたそうなのです。
しかしながら、おつきあいがはじまると、両者とも自分を相手に合わせるタイプで、「ああしてほしい」、「こうしてほしい」ということも伝えることを遠慮してしまうため、なにかとうまくいかなかったのでした。
そこで、私は彼がおみえになったとき、ふだんはほとんど行ったことのない女性カウンセラーと二人でのカウンセリングを行ってみました。
私が彼の心理を話し、女性カウンセラーが彼女の心理を代弁するという方法です。
これを見ていた彼はこう言いました。
「ほ、ほんとうにその通りです。いつもそんなかんじのデートで、たがいに下を向いて恥ずかしがったままで終わっちゃうんです」
二人はほんとうに親密になる一歩手前のところで恐がっていたようなのです。
彼のようなタイプは、彼女をホテルに誘って、次は旅行に誘って‥‥という段階を踏んでいくことが苦手です。
いっそ、ストレートに「結婚したいです」と言ってしまうほうがよほどラクであり、結果的にその方法で二人は結婚し、現在は幸せな毎日を送っています。
では、来週の恋愛心理学もお楽しみに!!