何かを決定するとき、会議を開くことがよくあります。
意思決定者がいて、みんなから意見を求めるような会議もあれば、みんなで何かを決定するような会議もあります。
前者の場合は会議の結果に対する責任の所在が明確ですが、後者の場合は責任の所在は曖昧になりがちです。
みんなで決めたのだから、その結果が望んでいないようなことになったとしても、誰のせいでもないといった“責任逃れ”がしやすいですね。
しかしながら、望んでいない結果になった場合、みんなにとって決していいことではありません。
特に後者のような終電で意思決定を行う場合に陥りやすい罠についてお話ししたいと思います。
集団での意志決定でよく見受けられる心理的な罠の1つが「集団分極化」です。
この集団分極化にはリスクの高い方向を選択してしまう「リスキーシフト」という状態と、それとは逆に慎重な方向を選択してしまう「コーシャスシフト」という状態があります。
リスキーシフトは、例えば一人だったら絶対にやらないような事をみんなで話し合った結果決定したり実行したりしてしまうというような状態です。
「赤信号、みんなで渡れば怖くない」といった状況です。
一方、コーシャスシフトは、一人だったら何気なくやってしまうような事でも、みんなで話し合っているうちにやらないことを選択してしまうというような状態です。
コーシャスシフトは、一般的にリスキーな選択をする事が好ましくないと思われている事柄について、起こりやすくなります。
この集団分極がなぜ起こるのかは諸説あり、また今なお研究が進められていますが、現在の知見をおおまかにまとめると、以下のようになります。
(1) 集団のリーダーや声の大きいメンバーの意向に同調する雰囲気が形成され、それに異を唱えられない状況になる。
(2) メンバーが自分の存在をアピールするため、より極端な方向の意見を出す。
(3) 集団の決定で責任の所在が曖昧である。
集団の意志決定で見受けられる心理的な罠をもう一つ紹介します。
メンバー相互の関係が緊密な集団で危機的な場面で意志決定をしなければならないときに、メンバーがお互いに意見を一致させようとする「集団思考」と呼ばれる状態があります。
集団思考になりやすい全体的な兆候としては、
(1) 自らの集団の力量や道徳性を過度に高く評価している。
(2) 決定に対する警告を無視する。
(3) 相対している状況を軽視する。
(4) 沈黙しているメンバーも多数派の意見と同じと感じ、集団の意見に背かないように沈黙する。
(5) 反対意見に対しては集団の圧力がかかる。
(6) 反対意見から集団を守ろうとするメンバーが現れる。
と言われています。
本来は、よりよい決定を行うための集団での意志決定ですが、このような心理的な罠が潜んでいるのです。
このような心理的な罠を回避するには、誰がどのような内容の話をしたかの議事録を作成し、決定に至ったプロセスの責任の所在を明確にすることです。
そのような方法をとることで、極端な発言は抑止され、メンバーに冷静な発言を促すことができます。
少し議論が偏り始めた時には、発言内容にまで踏み込んだ議事録を作成することを誰かが提案すると良いのではないでしょうか。