自分の気持ちがわからない 〜虐待により感情を閉じ込めた影響〜

虐待により感情を閉じ込めた影響

自分はどうしたいのか?どんな生き方をしたいのか?などの自分の気持ちを掴みづらい、そして何かしたわけでもないのに日々疲れている、そんなケースをカウンセリングしていくと、虐待を体験したことで自分の気持ちを心に閉じ込めたことが原因だったことがわかりました。

■自分の気持ちがわからない

Dさんは、「〇〇へ旅行に行ってみたい」とか「ダイビングをしてみたい」などの”〇〇してみたい”という欲求が他の人と比べて薄いなぁと思ってました。

自分はどうしたいのか?、何が欲しいのか?、どういう職業につきたいのか?、どんな生き方をしたいのか?、などなど自分の欲求があまりわからないとのことでした。

自分はどうしたいのかがもっとわかるようになればいいのになぁというのがDさんの悩みの一つでした。

また、自分はどうしたいのかがわかりにくいだけではなく、喜び、ワクワクする、楽しい、寂しい、などの感情が沸き起こることも少ないとのことでした。
感情といったものをあまり感じず日々淡々と過ごしている自分がいるとのことでした。

感情というものをあまり感じず日々淡々と過ごしていること自体はDさんの悩みではなかったのですが、感情が豊かではないことは幸せかどうかということに関しては影を落としていました。

なぜなら幸せは感じるものだからです。

Dさんは「幸せ」を感じることも少ないそうです。

そして、疲れていました。
何かがあって疲れたというものでは無いのですが、日々「何をしたわけでもないし、何かが起こったわけでもないのにしんどいなぁ・・・。なぜ私は疲れているのかなぁ???」と思っていました。

■虐待で閉じ込めた感情

Dさんと「自分は〇〇したい」という欲求や、「嬉しい」とか「さみしい」などの感情があまり湧いてこないことについてのお話をしていると、Dさんの子どもの頃の心理的虐待の体験が影響をしていることがわかってきました。

Dさんのお母さんは感情的に不安定だったそうです。
感情的にDさんにつらくあたる日が多々あったそうです。

例えば、
子ども頃のDさんがお母さんに話しかけただけなのですがお母さんが逆上して感情的に怒られる、非難されることがあったそうです。
子ども頃のDさんは何が気に障ったのかはわかりませんでした。

このような、お母さんが逆上して怒ることは多々あり、逆上してしまうと
「本当、イラつく子」「ホント、ムカつく子」などの、存在を否定するような、使ってはいけないような言葉も言われていたとのことでした。
そして逆上してしてしまうと手もでることも多々あったとのことでした。

子どもの頃のDさんにとっては何がお母さんのスイッチに触れてしまい怒りだしているのかがわかりませんでした。

子どもの頃のDさんは「話を聞いて欲しい」「自分に関心を持って欲しい」「世話をして欲しい」「私のことを大切にして欲しい」「甘えさせて欲しい」などのお母さんに対して何かを求めるということは危険な目にあうかもしれないことでした。

その為、子どもの頃のDさんは欲求を心に閉じ込めていくようになりました。

またお母さんに「本当、イラつく子」と言われた悲しい思い、
自分を大切にしてもらえないさみしさ、
怒られても助けてくれるつらい思い、
それらをケアーしてくれる人もおらず、子どもの頃のDさんは、それらの気持ちも心に閉じ込めていくようになりました。

まだ子どもなのに色んなものを心に閉じ込めなければいけないってつらいですね。
この欲求や、感情を閉じ込めることは、Dさんがお母さんからの心理的虐待を受けることを少しでも少なくする術でもあったのでした。

■疲れていた原因は抑圧だった

この時の欲求や感情を閉じ込めてしまったものは、大人になっても閉じ込めたままでした。
閉じ込めることにエネルギーを多大に使っていたので、Dさんは何かしたわけでもないのに毎日疲れていたことがわかってきました。

そして欲求や感情を閉じ込めたまんま心が動かなくなっていたので、大人になっても何がしたいかがでてこなかったり、日々の生活で感情もあまり動かないようになっていたこともわかってきました。

Dさんは欲求や感情が沸き起こる力を取り戻すために、また閉じ込めることにエネルギーを多大に使っていて疲れてしまう状況を改善する為に、カウンセリングで閉じ込めた思いを解放することにチャレンジしていきました。

虐待で辛かった思い、怖かった思い、存在を否定されて悲しかった思い、もっと大切にして欲しかった思い、それらを解放していきました。
いっぱい泣きました。

閉じ込めた思いを解放していくと徐々に「〇〇したい」「〇〇のような生き方をしてみたい」など心が求めているものがわかるようになっていきました。
日々の生活で喜怒哀楽の彩りがもっとでるようにもなってきました。
“幸せ”も、前より感じるようにもなっていきました。

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感情を閉じ込めることにより否定的な思いを感じないようにできることがあります。
悲しいと毎々感じていたらつらすぎってやってられない、逃げたいと感じてたら生きづらい、もうやりたいくないと思ってもやらざる終えないような状況がある、等等のシチュエーションでは感情を閉じ込めて感じないようにすることが必要になることはあるかもしれません。

しかし、弊害としてDさんのように「自分はどうしたいのか?」、「何が欲しいのか?」などの自分の欲求がわかりづらくなることや、ワクワクする、幸せを感じるなど感情を感じる力が少なくなることもあります。

そしてDさんのように感情を閉じ込めることに多大なエネルギーを使ってしまい、何か起きたわけでもないのに日々疲れているという現状が起こることもあります。

もし、あなたにもこのような弊害がでていたら、この弊害とさよならする為に、閉じ込めた感情を解放してあげることに取り組むといいかもしれません。

心が求めているものがわかりやすくなったり、幸せ感をもっと感じられるようになったり、感情を抑え込む疲れからさよならしてもっとエネルギッシュに生きられたりできるよう祈っています。

(完)

心理学講座4回シリーズ/同シリーズ記事はこちら
  1. 子どもに優しくできない〜虐待を受けていた影響からの解放〜
  2. 私が悪いと思う癖〜虐待が作る私が悪いと発想する心理パターン〜
  3. 怒りの声を聞くとダメージを受ける〜面前DVの影響からの脱出〜
  4. 自分の気持ちがわからない〜虐待により感情を閉じ込めた影響〜

 

この記事を書いたカウンセラー

About Author

若年層から熟年層まで、幅広い層に支持されている、人気カウンセラー。 家族関係、恋愛、結婚、離婚、職場関係の問題などの対人関係の分野に高い支持を得る。 東京・名古屋・大阪の各地でカウンセリングや心理学ワークショップを開催。また、カウンセラー育成のトレーナーもしている。