コントロールすればするほど、摩擦やストレスが生まれるのです。
私たちは、日々の中で自分の思い通りになるようにあらゆるものをコントロールしながら、生活をしています。
それは、変化を要求する対象が自分であるセルフコントロールから、自分以外の外側にある状況や他者(言動・態度・考え・価値観など)に向けられたコントロールまで多岐に渡ります。
今回の心理学では、自分以外の外側にある状況や他者に向けられたコントロールについて進めていきたいと思います。
■コントロールとは
人は、人や状況を思い通りに動かして、状態を変化させたいという欲求を持っています。
それは、過去に傷ついた経験から再び傷つかないようにするための防衛反応の一つであり、あなたの心の中にある不安や怖れ、無価値感や罪悪感などのネガティブな感情や状況や人(自分を含む)を信頼できないといった気持ちを感じることから、生まれるものです。
この人や状況を思い通りに動かして、状態を変化させたいという欲求から、相手を思い通りに動かそうとする行動のことを言います。
言い換えれば、人や状況に変化を促すことで感じたくない感情を回避して、安全・安心な場所に自分の身を置くために自分なりのやり方を自分や自分以外の人にも適用していこうとする行為です。
■自分以外をコントロールしようとすることによる弊害
コントロールする対象が自分であるときは、自分が目の前にある状況を変えたくて自分に変化を促しています。
ですから、自分の内面からの気持ちに基づいて行動しているので、気持ちと行動が一致しているため、それが自分に多少の無理を強いるものであったとしても、摩擦は起きにくいわけです。
仮に、あなたの中に複数の方向性があり、気持ちと行動が完全一致していないとしても、自分のことなので、自分で一致していない部分を調整して、自分と折り合いをつけることができます。
しかし、コントロールする相手が自分ではなく他者となると、相手にも意思があるため、それらを無視して相手に変化を促すことは、相手の意思に沿わないこともあるため、相手にとって「自らやる」というよりは「人にやらされている」という要素も強く、人間関係に摩擦が起きやすくなります。
傷つかないために手段だったはずなのに、対人関係で摩擦が生まれることで、再び傷ついたり、ネガティブな感情を感じたりする事態を招きかねないのです。
■ コントロールを手放すために必要なこと
コントロールとは、自分が安全・安心を感じるための手段なのですが、この方法は上手くいかないことが多いです。
その上手くいかない理由の一つに、自分以外の人や状況を自分のルールを基に運用すしていくことにあります。言い換えれば、相手の同意を得ずに施行されているルールであり、そのルールを守るように強制されているようなものなのです。
ここでの状況の改善策は、逆説的ではありますがコントロールをやめること(手放すこと)にほかなりません。コントロールを手放す鍵になるのは、これらのことです。
1つは、コントロールする元になっている過去の傷ついた経験や不安や怖れをケアすること。こちらは、カウンセリングに譲りたいと思います。
2つめは、あなたがコントロールしようとしていることをあなたのやりたいこととして表現してみる。
コントロールしようとしていることの多くは要望であり、それがうまく表現できない、表現することを許可できていないことから周りをコントロールしてしまいます。
あなたのやりたいことを表現するときのポイントは、相手の意向を聴くことや、相手が返してくるNOという答えを認めてあげることです。そうすることで、コントロールからコミュニケーションに変わります。
もちろん、全てが認められるわけではありませんが、そうすることであなたの要望がコントロールをするときよりも、平和に通りやすくなります。
3つめは、変えられるものと変えられないものを認識すること。
自分の変化の影響を受けて、自分以外と人が変化することはあるけれど、基本的には自分のことは変えられる(もちろん、変わりたくないと思うこともある)けれど、自分以外の人は変えることは出来ません。
そう考えると自分以外の誰かをコントロールすることが難しいことであり、変えることができないものを変えようとコントロールすることが摩擦やストレスを生む要因となっていることがお分かりいただけるのではないでしょうか。
ですから、人のことは変えられないと認識を持つだけでも、コントロールを手放す一助となります。
何かをコントロールしようとしている自分に気づいたら、思い出してみてくださいね。
(完)