「誰かがやってくれるだろう」という心理

「誰かがやってくれる」ってなんで思っちゃうんだろう?

「職場の中に『いつも誰かがやってくれるだろうと考え、率先して行動しない社員』がいてイライラする」というご相談があります。
今日の講座では「誰かがやってくれるだろう」と考える心理と、当事者意識が持ちにくい理由について考察します。

「誰かがやってくれるだろう」と考えてしまう心理

お仕事にまつわるご相談の中に

「職場の中に『いつも誰かがやってくれるだろうと考え、率先して行動しない社員』がいてイライラする」

というものがあります。

例えば

「チーム全体で取り組めば1時間程度で終わる作業だけれども、数人の社員が取り組まないことでこちらに負担がかかり、不平等感を感じる」

といったお話です。

確かに不平等だと感じる気持ちに関しては個人的に分からなくもないですし。

不平等だと感じる状況が続くなら、チーム全体のモチベーションが高まりにくいという問題も生じますね。

そこで今日の講座では、なぜ「誰かがやってくれるだろうと感じるのか」について考えてみたいと思います。

実は「誰かがやってくれるだろう」と考えてる人の中には、本人にその自覚がないことが多いのです。

この心理を解説するものとして「リンゲルマン効果」(社会的手抜き)と呼ばれる有名なものがありますのでご紹介します。

リンゲルマン効果(社会的手抜き)

フランスのリンゲルマンが実証実験を行った「リンゲルマン効果」では

「集団になると人は手を抜き、1人で作業する際に発揮する力よりもパフォーマンスが減少してしまう」

ということを明らかにしました。

有名な「綱引き実験」というものがあります。

「綱引きにおいて、1人で綱を引くときの力を「100%」とした場合

2人で綱を引くときに使う力は93%、3人の場合は85%、8人で綱を引いた場合は49%になる」

という結果が検証されました。

人は、自分が組織や集団の一員だという認識があるときには無意識に手を抜いているということです。

また、手を抜いている本人にその自覚はないことが多い、とも言われています。

例えば、職場でも

「自分は与えられた最低限の仕事をこなしている」

と考えているからこそ、手を抜いているという自覚が持てないことがあるわけですね。

だから、手抜きを指摘をしても「私はやるべきことはやっている」と主張したり、手抜きを認めたがらない人が出てきます。

ここでお伝えしたいことは

「理由をつけて手抜きを正当化する問題ではなく、人は集団の中で無意識に手を抜くことがある」

ということです。

自分への疑いが強い人のパターン

一方、自分に厳しい人や自分への疑いが強い人ほど「私は手を抜いているのでは?」と疑い続けていることがあります。

例えば、上司や同僚から「十分やってるよ」と言われると、安心したりありがたいと思う一方で

「本当にそうかなぁ」

と受け取れない状態にある人。

この場合、自分自身の「無意識的な手抜き」に気づいているかどうかは別にして

自分への評価が厳しいがゆえに、結果的に「自分の手抜き(至らなさ)」に意識が向いている場合があるようなんですね。

だから、

「ミスなくきちんとしなきゃ」
「手を抜かないようにしないと」

といった意識が強い分だけ、何事も手を抜けない人も出てきます。

ただ、自分を必要以上に疑い続けてしまうとストレスになってしまいますけれども。

また、自分を疑うからこそ、積極的に関わることが苦手である人もいらっしゃるようです。

例えば

「自分が手を上げていいのかな?」
「自分の意見を主張して間違っていたらどうしよう」

などと考えてしまうので、結果的に手を抜くつもりはなくとも、手を抜いているように誤解される人もいるのかもしれません。

これはいわゆる無意識的な手抜きとは異なる話なのですが、しかし実際の悩みとして有り得る話なのですね。

当事者意識を持ち、良好な関係性を重視すると手抜きは起きにくい

さて、この誰かがやってくれるだろうという意識は、集団の中で起きえることです。

だからこそ、会社全体、数十人単位の部署全体、といった大きな単位で考えるほど発生しやすい問題ともいえるでしょう。

かといって、手抜きを徹底的に管理しても心地よい組織になれるかと言うと、そこも考えどころですよね。

このような手抜きの問題は、組織や人のマネジメントの課題と、個人の意識の持ち方と、分けて考える必要がありそうです。

ここで個人レベルで意識できることに付いてお伝えするとしたら

「当事者意識を持つこと」と

「他者との良好な関係性を作ること」でしょう。

ここでの当事者意識とは

「自分もその集団の中の大切なメンバーの一人だ」

と感じ、受け入れることです。

「自分自身の立場を曖昧にしたり、自分の価値を小さく見積もるのではなく

自分自身も周囲の人と同じような価値や影響力を持っている」

という意識を持ってみてください。

また

「周囲に支援者や応援者が存在すると、集団の中でも個人のパフォーマンスは低下しない傾向がある」

とも言われています。

自分自身が主体的に仕事に取り組むことはもちろん

周囲をサポートしたり、相談できる人間関係を構築しておくことが、相互の手抜きを防ぎ、パフォーマンスを高める一つの要因になります。

ここでも『人とのつながり』がとても重要な役割を果たすといえそうですね。

(完)

この記事を書いたカウンセラー

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年間400件以上の面談カウンセリングを行う実践派。「男女関係向上・男性心理分析」「自信・自己価値向上」に独特の強みをもち、ビジネス・ライフワーク発見なども対応。明快・明晰かつ、ユーモアと温かさを忘れない屈託のないカウンセリングは「一度利用するとクセになる」と評され、お客様の笑顔が絶えない。