「仕事で何かを売りこんでお金をもらうことに抵抗がある」
というお話を聞いたことがあります。
「なので営業職にはつきたくないんです。」
キャリアカウンセリングの仕事をしていた時代に、よく聞いた言葉でした。
考えてみたら、私自身もむかし、アルバイトで量販店の店先に立って「今日はビデオテープが安いですよ!」と呼び込みをしたこともありますし(ビデオテープって…時代がばれてしまいますね。笑)、人材派遣会社の営業だった時代も長くありました。
安い!と言いきれれば、胸をはって売り込むことができるかもしれませんが、安くはなく、相手はそんなにほしがってもいないもの。
そんなものを人に薦めるのは申し訳ない、と思ってしまう良心的な方は多いかもしれません。
私もはじめて営業職についたときは、これはいったいどうやって売り込んだらいいんだろう?と悩んだこともありました。
人材派遣の営業でしたから、人材を売り込むわけです。
素晴らしいスタッフがいて、その人を売り込むときには自信満々で売り込めます。
断ったら損ですよ!くらいの気持ちです。
でも売り込む人材がいないときもあります。
会社を訪問して、人手が足りないとか、効率が悪いやり方をしているとか、何か困っていることを伺って、
「それならこういう人材がいれば、こんな風にうまくいきますよ!」と言って売り込むわけですが、
「じゃあ頼むよ。」と言われたら、探しても探してもそんな人はいなかったということもあるのです。
「君がそう言ったから頼んだのに、なんだよ。」と叱られることもあって、そうなると、まるで嘘をついてだましたような嫌な気分になって、売り込むときにどうしたって迷いが生じます。
きっと、営業職にはつきたくないんです、という方はこの気分が嫌なのでしょうね。
わかります。
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先日、テレビを見ていたら、有名なスタイリストの女性が素敵なローヒールの靴を薦めていました。
「足が痛いからローヒールを履くのではなくて、これが履きたい!というポジティブなローヒールなんですよ!」と言うのです。
そしてその方が「嬉しい!という気持ちで履いたら、自分に自信が持てるんですよ!」とも言っていました。
なるほどなあ、このスタイリストさんが大人気なわけがわかるなと思いました。
彼女は一見、靴を薦めているようで、実は【嬉しい気持ち】を薦めているんだなあと思ったのです。
靴は欲しくない人もいるかもしれませんが【嬉しい気持ち】は誰でも欲しいですよね。
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それから、部屋のお片付けで世界的に有名なあの可愛らしい方。
あの方は「物を捨てる」という罪悪感を【ときめき】に変えています。
物を捨てるなんて悪いことだという気持ちにフォーカスするのではなくて、好きな物だけに囲まれて暮らすことの【嬉しい気持ち】を薦めているのです。
そうしたら無駄な物を買うこともなく、捨てる必要もなくなるよ、と。
この人も優れた営業力を持っているなあと思いました。
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成功している人は「物」ではなくて【歓び】を売っているのですね。
そう思うと、相手の歓びは何だろう?と考えることができます。
これをどんな人がどんな風に歓んでくれるかな?と考えることは、自分にとっても歓びになりませんか。
以前、人生の大先輩に「どんなに小さなことでも、誰かが歓んでくれることを仕事にしていたら、飢え死にしない。」と言われました。
それはとても素敵なことだなと思って、時々思い出すようにしています。
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私の後日談ですが、「君がそう言ったから頼んだのになんだよ。」と叱られた件。
その時は「本当に申し訳ありません。」で半泣きだったのですが、その後も何度もその会社に通いました。
そうしてしばらくしたらまたご依頼をくれたのです。
私が成功した営業スタッフだったとは言い難いのですが、少なくともその時は何も売るものがなく、私の誠意を歓んでもらうしかなかったなと思い出します。
なんとか売上を上げようと思うことは苦しいかもしれないけれど、どうしたら相手が歓んでくれるかな?と考えて仕事をすることは、そんなに苦しいことではないかもしれません。
人が歓んでくれるかどうかなんて、もう考える余裕もない!という場合は、やりすぎの可能性があります。
そんな時はどうぞカウンセラーにご相談くださいね。