流れを変える方法

皆さんは、「今ある状況を変えたい」「今ある環境を変えたい」と思ったことは無いでしょうか。
しかし、なかなか状況や環境を変えることができないことがありますね。
今の環境の中で何とかしようと必死にもがいても、なかなかうまくいかないことがあるものです。

それは、自分が理解している範囲で状況をコントロールしようとしていたり、過去に成功した方法や、過去の上手くいかなかった方法を自分の許容できる範囲でアレンジした方法で乗り越えようとしていたりするからです。

心理学では「自分の現在の状況や身の回りに生じているできごとの全ては、自分が選択した結果である」という捉え方をします。
同じ事柄が起こったり、同じ状況であったりしても、その対処方法が異なれば自ずと結果が異なってくる、従って、そこから生じる結果は自分が選択した結果ということになるのですね。
少々厳しい捉え方ですが、その対処方法を選んだのは、例えば誰かに委ねるという方法も含めて自分自身ですから、事実はそうなのです。

私たちは連続的な時間の中で生きています。
従って、生じた状況やできごとに対して、自分がどう感じるか、どう捉えるか、それに基づいてどのように行動するかがが現在の状況に影響を与え、常に新しい状況を形成していきます(いわゆる、フィードバックです)。
状況や出来事が一見変わらないように見えたり感じたりしても、鴨長明が方丈記でしたためたように、「行く川の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたかは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたるためしなし」と同じように、時間という流れの中で、常に起こることや状況は一瞬たりとも立ち止まっているわけではなく、常に過ぎ去り、また新しく生まれ変わっているのです。

従って、流れは常に過去へと過ぎ去り、また新たに流れを変えるチャンスは生まれ続けているのです。

私たちは、置かれた状況や生じたできごとに対して、特に意識することなく反射的に感じ、習慣的に捉え方を決め、その結果行動することがとても多く、これが次の新たな状況やできごとを作り出すのですが、このプロセス(道筋)が“パターン”として固定化されていると、同じような結果を繰り返してしまうことになります。
その結果が、自分にとって望ましい形であれば問題はないのですが、もし望んでいない結果であれば、そのプロセスの中の“何か”を変えないと生じる結果は変わらないものです。

人が何らかの行動を決定するプロセスを大まかに分けて考えると、
(1)イベント(できごと)が生じる
(2)感覚器官による取り込みを行う(聞く、見る、触る、臭うなど)
(3)感じる(好きだ、嫌だ、怖いなど)
(4)捉え方を決める(どういうことだろう、どうなっているのだろうなど)
(5)行動を決める(感謝する、反撃する、放置するなど)
という流れになります。

“(1)イベント”は自分以外の外部からやってくる事柄なので、自分から変えることはできません。
“(2)感覚器官による取り込み“は、人により個人差があったり、年齢による変化が生じたりしますが、こちらも自分の現在の感覚器官の特性という意味では余り変えることができません。

さて、私たちが対処できるのは(3)以降のプロセスになります。

“(3)感じる”は“(4)捉え方を決める”と密接に関連し、個人により様々ですが、どうしてそう感じるのか理解したり、慣れたりする(馴化)と変えることができます。
例えば、上司が怖かったのは、昔よく怒られた父や母を意識していた(投影)からだと理解し、上司が父や母とは別の人格をもった人間であるとわかれば上司は怖くなくなるかもしれません。
あるいは、父や母を一人の人間として捉え直すことができる(許し)と、上司も一人の人間として捉え直すことができるかもしれません。

そうすると“(5)行動を決める”に変化を生じます。
今まで上司に近づきにくかったのが近づきやすくなって、実際に接しやすくなるかもしれません。
私たちは、怖れを感じている人が近づいてくると、自分も怖くなるという感情の伝播が起こします。
あなたを怖れている人が恐る恐るあなたに近づいてきたら、あなたも怖くなるのではないでしょうか?
一方、あなたに親近感を持っている人が、あなたにフレンドリーに接してきたら、あなたもその人に親近感を感じるのではないでしょうか?

行動が変わる(変容)すると、自分の外側に与える影響も変化し、その変化が新しい状況を形成するので、“(1)イベント”も従来とは異なる形になるのです。
これで、流れが変化します。

ここで、流れを変えるのに一番効果的なことは、従来自分が怖れからできていなかったこと、やりたくないと思っていた事柄まで行動を変容させることです。
そうすれば流れも劇的に変えることができるようになります。
自分の枠やこだわり、執着を乗り越えるような自身の変化は、新しい大きな流れを作り出します。
もっとも、この変化には、自分が自分でなくなる怖れや、どうなってしまうかわからない怖れなどが伴うので、心理的抵抗も大きくなりますが。

流れを変えるには、自分自身が変化すること、それが大切なのですね。

この記事を書いたカウンセラー

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恋愛や夫婦間の問題、家族関係、対人関係、自己変革、ビジネスや転職、お金に関する問題などあらゆるジャンルを得意とする。 どんなご相談にも全力投球で臨み、理論的側面と感覚的側面を駆使し、また豊富な社会経験をベースとして分かりやすく優しい語り口で問題解決へと導く。日本心理学会認定心理士。