執着を手放したいけれど、抵抗感が出てしまう心理とは
執着とは「一つのことに心をとらわれて、そこから離れられないこと」です。
「これしかない!」「絶対〜だ!」と執着をしていると、「思い通りにならない」と苦しくなります。そのため、カウンセリングでは「執着を手放しましょう」とご提案することがあります。
ちなみに、どんな人にでも執着心はあるものです。形や状態があるモノやコトへの執着(人、物、恋愛や結婚、仕事、地位、お金など)、考え方や感じ方への執着(過去の成功体験、自分のやり方、完璧主義、ネガティブな思い込みなど)と、私たちはいろいろな執着をします。
「執着しているから苦しくなる」という点は、比較的理解と同意を得やすいものです。しかし、いざ執着を手放そうとすると、抵抗が出てくる方も少なくありません。
執着の背景には、オソレが隠れていることがあるのです。今回は、執着の手放しに抵抗する時に心で起きていることを、4つのオソレから紹介します。
●失うオソレ
執着を手放すことは、別れることや捨てることではありません。手放しとは、選択肢を作ることです。
「絶対これ!」と握りしめていたものを、 いったん横に置いて、 「これを選んでもいいし、必ずしもこれでなくてもいい。」と 別の選択肢を用意することです。
仮に「絶対別れない」と執着しているとしたら、「別れない」を選んでもいいし、「別れる」を選んでもいいと、「別れる」も選択肢に入れてみることです。「別れる」を選択肢に入れてみたら、ようやく「別れたら…」と想像できるようになるでしょう。
そして、多くの場合、失った後に感じるだろうネガティブな感情を、先取りして想像するでしょう。例えば、喪失感・さみしさ・孤独・みじめさ・敗北感・ 劣等感・虚無感など。それらの感情を感じるのが辛いので、失うことが怖くなるわけです。感じたくない感情を避けるために、「手放したくない」と現状に執着することがあります。
また、失った時に「一人で耐えなければならない」と思うと、なおさら怖くなるでしょう。事実を一緒にうけとめてくれる人、ネガティブな自分をうけいれてくれる人の存在を感じてみると心強いかもしれません。
●今以上のものは手に入らないオソレ
私たちが執着する時、「今以上にいいものは手に入らない」と信じている場合があるようです。
「失ったら二度と手に入らない」と思っているから、一度つかんだものを手放せないわけです。「この人以上に私を愛してくれる人はいない」「この〇〇以上に私の心を満たしてくれるものはない」と思うから、手放しがたくなってしまうのです。
では、なぜ「今以上のいいもの」が手に入らないと思っているのでしょうか。ここには、自分自身に対してのネガティブな信頼があります。「こんな私は愛されない」「私にはこれくらいがふさわしい」などと、どうやら自分の価値を低く見積もっているようです。
「今以上にいいものは手に入らない」と怖れて執着を手放せないなら、自信を取り戻すこと、自己価値を認めていくことなどに取り組んでみましょう。自信があれば、「ご縁がなかっただけ」「タイミングが合わなかっただけ」「また次」「もっと良いものを」と思えるでしょう。
●自分がなくなるオソレ
価値観がガラリと変わる時、今までの自分が全部否定される感覚を持つ人もいるでしょう。固く信じていた価値観を手放すのは、それを信じてきた自分自身がいなくなることでもあります。まるで死の宣告をうけるような、自分がなくなるオソレを感じる場合があります。
特に、かつての価値観でがんばってきた人は、「今までのがんばりが無駄になる」ようで、新しい価値観を受け入れ難いと思うでしょう。また、これまでのがんばりが「報われていない」と感じている人も、「認められないままでは納得がいかない」と、現状に執着しやすかったりします。
ここでは、自分が自分を認めるということが必要になってきます。自分がどんな思いで、どんなふうにがんばってきたのかは、自分が一番知っているはずです。「よくがんばってきたよね」と、しっかりと自己承認しておきましょう。
●変化へのオソレ
私たちには変化を怖れる性質があります。
執着を手放した後、「よりよく変われる」という成功の保証はありません。だから、「失敗するくらいなら、今のままで」と保守的になりやすかったりもします。また、今現在が幸せではない状況であったとしても、「これ以上、不幸になる」ことを怖れて、現状維持を選択する場合もあります。
変化のオソレを超えるには、よりよく変化するポジティブなイメージと、チャレンジする勇気が必要です。そして、可能なら、応援してくれる仲間がいるといいでしょう。自分が自分の幸せな未来を信じられなくなった時、「大丈夫、あなたなら幸せになるよ」と信じてくれる人がいたら、その人のことを信じてみましょう。
オソレを軽減して、執着を手放していっていただけたらと思います。
(完)