愛させる勇気

だれかに私を知ってもらいたい!

こんばんは

神戸メンタルサービスの平です。

彼女は30代後半の独身女性です。

首都圏で充実した仕事生活を送り、すでに多くのキャリアを積んでいます。社内での人望は厚く、彼女を慕う後輩も少なくありません。

が、こと男女関係となると、まったくうまくいかないのです。

モテないタイプではけっしてありません。デートのお誘いはちょくちょくありますし、まわりの人々からは、客観的に見れば申し分ない条件を備えた男性を何度か紹介してもらいました。

しかしなぜか、おつきあいを始めても長続きしないのです。というか、彼女曰く、「なんだか、めんどくさくなっちゃうんですよね‥‥」。

彼女のご両親や親しい人たちは、「この相手なら、いい結婚ができるのに‥‥」などとヤキモキしたりするのですが、彼女自身があまりその気にならないのです。

そんな彼女に、「一度、カウンセリングをうけてみれば?」と私どもをすすめてくださったお友だちがいたんですね。

で、自らの意思というよりは、お友だちの顔を立てるためにとりあえず来ました‥‥という彼女が、その日、私の目の前に座っていました。

そして、私から、いやーな言葉を聞くわけです。

「いつも“だれかのために”とがんばってばかりで、自分のことは後まわし。あなたのそのパターンは、この面談を受けられるにあたっても出たわけですね」

その後も彼女は私の口から、聞きたくもない言葉を山のように聞くことになります。

「あなたは人を愛することはできても、愛を受け取ることは苦手なんでしょうね。

そういう人はいつも“相手に迷惑をかけていないかな?”、“私がいると迷惑かな?”と、迷惑ということばかりが頭の中にあるものです。

まわりに気を使ってばかりいますから、一人でいるほうが気がラクなんですよね。

あなたはいつも自分を抑えて生きているのですが、人間ですから、当然、“わがままな自分”だって存在しています。

けれど、人前でそんなものを出してしまった日には、はなはだしく迷惑をかけてしまうので、とてもとてもとても、人に見せることなどできません。

ですから、そんなあなたがおつきあいできる異性は“とても手のかかる人”ですよね。

あなたに迷惑ばかりかけるような人としか、恋愛が成り立たないんじゃないですか?」

話がそのへんまで行くと、彼女は号泣しはじめました。

真面目で品行方正な家庭で育ってきた彼女は、恋愛ぐらいは親に縛られず、好きな人としたいと思っていました。

それは当然のことなのですが、彼女の心の中には「そう思うのは、すごくわがままなことなのではないか」という恐れのようなものがあったようです。

そして、「恋愛は不良がするもの」とでもいうような思い込みがあったため、彼女が好きになる相手は、どこか破天荒だったり、反逆児のようなタイプだったりする男性ばかりでした。

最近の彼女は、ほとんど実家にも帰っていないと言います。帰れば必ず結婚のことを言われるのがいやだからです。

そんなこんなで、だれにも本音を言えずに生きてきた彼女ですが、これからも一生、世界のだれにも心の中にある思いを理解されることはなく、孤独に死んでいこうとしているように私には感じられました。

で、聞いてみたのです。

「ほんとうに、それでいいの?」

彼女はふたたび号泣しながら、こう答えました。

「だれかに私を知ってもらいたい!」

私は言いました。

「でも、言わなきゃ、その気持ちはだれにも伝わらないよ」

「恥ずかしくて、言えるわけがないじゃないですかっ!」

で、私はまたイヤなことを言います。

「もう、言っちゃったじゃない、いま、私の前で。‥‥それで、どんな気分?」

彼女や一瞬、びっくりしたような表情になり、こう答えました。

「あれ、なんか、めっちゃスッキリしています」

私は彼女に言いました。

「うんうん、そうだよね。だれでもいいから、たった一人、いま、ぼくに言ってくれたようなことをぜんぶ話せる人をもってください。

それができるようになると、いつも“人に迷惑をかける”と思っていたことが、じつはまわりの人との絆を強める役割を果たしてくれるということがわかってくると思いますよ。

そうしたら、そんな素敵な人間関係があるんだと実感することもできるでしょう」

あなたが信頼し、自分の素直な思いを言葉で伝えること。

それによって、相手はもっともっと、あなたのことを大好きになってくれるものなのです。

来週の恋愛心理学もお楽しみに!!

この記事を書いたカウンセラー

About Author

神戸メンタルサービス/カウンセリングサービス代表。 恋愛、ビジネス、家族、人生で起こるありとあらゆる問題に心理学を応用し問題を解決に導く。年間60回以上のグループ・セラピーと、約4万件の個人カウンセリングを行う実践派。 100名規模のグループワークをリードできる数少ない日本人のセラピストの1人。