対人関係を円滑にする「推測力」を賢く使おう
常識推論とは、心理学用語で「人間が日常生活の中で自然と行なっている推論」のことをいいます。
たとえば「犬はワンワンと鳴く」「コーヒーを飲むと目が覚める」「太陽は東から出て西に沈む」など、日常的に経験する状況について、これまでの知識や経験、情報を元に「こういうものだよね」と推測することをいいます。
この能力自体は、社会的生活を送る上で非常に重要な働きをすると言われています。
たとえば「レジでお会計を待っている時には、並んで待つものだよね」「目上の人には敬語を使った方がいいよね」といった推測が、社会の秩序や暗黙のルールを作ることで、見知らぬ人とも安全で安心して関われる場を作っていることも多いのですね。
しかし、この常識推論は便利な推測力ではあるのですが、ときとして「すれ違い」も引き起こすといわれているのですね。
たとえば、パートナーが熱を出して寝込んでいる時、「病気で寝込んでいる時は人恋しくなるだろうから、ときどき声をかけてあげよう」とあなたは考えました。
しかしパートナーから「こういうときには、静かに寝かせてくれた方がありがたい」と言われてしまったとしましょう。
正直なところ、良かれと思ってした行動だっただけに、内心ショックを受けてしまうかもしれませんよね。
自分の愛情が否定されてしまったような気分になることも少なくないかもしれません。
ですが、ここで起きたことは「自分の推測と、相手の気持ちが違っていた」ということだけ。
自分を責めるのではなく「このすれ違いは”常識推論”からきているもので、愛情の問題ではないかもしれないな。」と立ち止まり、「病気の時にはひとりでそっとしておいてほしい人もいる。」そんなふうに情報推論の元になっている「情報」を日々アップデートしていくことができれば、より相手を思いやれる「気遣いの達人」になることも可能なのですね。
では最後に、常識推論をどのように活かしていくといいのか、また、ハマりやすい落とし穴について3つほどご紹介します。
よかったら参考にしてみてくださいね。
1.相手の立場になって考えてみる。
たとえば、パートナーとデートのプランを考えている時、パートナーが自分の案に反対してきたとしましょう。
そのとき「せっかく一生懸命考えたのに・・!私の意見を否定するだなんて、私のこともうそんなに好きじゃなくなったのかな」と推測してしまったとしたら、そこで一度立ち止まり、相手の立場になって考えてみましょう。
もしかすると、否定をしたい、というよりも別の意見を持っている可能性もありますし、反対するだけの事情があるかもしれません。
相手の意見や考えを一旦受け入れることで、あなたの中で情報が増え、より相手を思いやれる提案ができるようになれますよ。
2.コミュニケーションを丁寧に行う
私たちはつい、相手の言葉を最後まで聞かず、推測で「それってこういう意味で言っているんでしょ」と決めつけてしまったり「ふつう分かるでしょ」と自分の気持ちをあまり伝えず誤解させてしまうことがありますよね。
ですが、本当の気持ちは、お互いにしっかりと伝え合うことが大切。
コミュニケーションをする際には、相手の言葉を最後まで聞き、相手に伝わるように伝えるよう心がけましょう。
3.相手の気持ちや考えを推測するときに注意する
たとえば「眉間に皺が寄っている時には、悩んでいるか困っているかもしれない」「そわそわしているときには、何かやましいことを隠している」など、世間でもよく知られているしぐさでも、あくまで推測であり、正しいわけではありません。
思い込みで判断しそうになった時には、相手にちゃんと確認するようにしましょう。
常識推論は、対人関係を円滑にするために役立つツールでもあります。
常識推論を意識的に活用して、相手の気持ちや考えを理解し、より良い関係を築いてみてくださいね。
(完)