パートナーシップの問題と権威との葛藤

パートナーシップと権威との葛藤

「権威との葛藤」とは、権威者と衝突する現象をいいます。この権威との葛藤がもたらす影響は、複雑な人間関係の問題としてあらわれることが少なくありません。よく登場するのが仕事の問題ですが、恋愛や夫婦関係にも影響することがあります。

いわゆる自立の問題の中に「権威との葛藤」と呼ばれるものがあります。

この心理が恋愛や夫婦関係にも影響することがあります。

権威との葛藤とは

「権威との葛藤」とは、権威者(家庭内では主に父親、職場等では上司などの目上の人)と衝突する現象をいいます。

もう少し詳しく書くと、「権威」という価値観・概念に対して、プラスの要素とマイナスの要素を同時に感じ取っている状態(接近ー回避型の葛藤)で、自分自身がその権威を受け入れることができずにいる、という状態を示しています。

権威者の価値観や方法論を否定し、自分のやり方を主張したり、権威者の価値観に対するカウンター的な価値観を構築するなど、真っ向から葛藤、競争を始めるような心理です。

それにより、自分自身のアイデンティティを確立したり、自分自身の心理的な危機状態を回避したり、防衛するような作用があると言えます。

ここで登場する「権威」というのは男性性のシンボルの一つであるため、ここに葛藤を抱えると、男性性を発揮することに心理的な抵抗が生じるのです。

いわば、自分の中にある「男性性を拒否する」わけですね。

よって、相対的に女性性優位になることが多いです。(「男らしくない」とか「中性的な印象を与える」感じですね)

この権威との葛藤が強い分だけ、自分自身が権威者、リーダーになることが怖くてできません。

例えば、仕事上での昇進を拒否したり、無責任で身勝手な判断、行動を優先する人も出てきます。

この「権威との葛藤」は「親父越え」が一つのミッションである男性に多くみられるのですが、自立的な女性にも表れることがあります。

女性の場合は「父親」との関係に加え、「母親」との関係も絡んでくることがあるため、若干複雑さを見せることもありますね。

権威との葛藤がもたらすパートナーシップの問題

この権威との葛藤がもたらす影響は、複雑な人間関係の問題としてあらわれることが少なくありません。

(よく登場するのが仕事の問題ですが、このあたりの記事はすでにたくさん心理学講座にストックされていますので、そちらをご覧ください。)

権威との葛藤の問題は、人間関係である「恋愛や夫婦関係」にも影響することがあります。

例えば、結婚するということは、自分自身が、夫、妻、父、母、といういわば家族の権威者の立場に近づいていくわけです。

このとき、競争の心理や権威との葛藤の問題を抱えていると、子どもを持つことへの抵抗、夫婦の不仲、喧嘩が絶えない関係、別居や離婚、浮気の問題にもつながっていく要因となりえるんです。

そして、この心理を解消できずにいることで、何度もパートナーとの別れを迎えたり、自分自身が親になることを過剰に恐れたりするようにもなるのです。

具体的なパートナーシップの問題例

例えば次のようなケースが考えられます。

「ある男性の話。

その男性の父親が高圧的でいつも威張るタイプ。その父親を前に家族は委縮していた。

その男性は長男であったため、父親は非常に大きな期待をかけて、学業に大きな結果を求め、非常に厳しく接した。

その父親との関わりの中で、その男性はどこか自信喪失状態となり、そのまま思春期を迎え、学校を卒業する。

父親の影響が大きことから「自立心」や「忠誠心」「アイデンティティ」を形成できないまま成人を迎えることになった。

その結果、社会に出る段階でも「自分が何をしたいのか」が分からず、自分を過小評価したままであった。

もちろん、仕事も恋愛も満足にできない状態であり、特に仕事ではやりがいも感じられず苦痛を感じることになった。

その男性の能力的な問題はないにも関わらず、また異性から好感を持たれることがあっても、「この自分が評価されるはずもない」「異性から愛されるわけがない」という強い判断が続いていた。

そんな中、その男性に好意を向ける女性が現れた。その女性はその男性の攻撃的ではない性格や優しさに魅力を感じて恋愛関係になることを望んだ。

ただ、その男性は「なぜ愛されているのかがわからない」と思いながらも、彼女の好意を無下にはできないと思い、彼女と恋愛関係を持つこととなった。

しかし、自分が愛されているという実感を得られないその男性は、彼女の気持ち(愛情・好意)に非常に無頓着な言動をするようになった。

また、仕事が苦痛であることを彼女に愚痴るようにもなり、彼女に対して若干依存的な態度を示すようにもなった。

結果、その彼女は自分の気持ちが伝わらないこと、彼の言動などに耐えられなくなり、別れを選ぶことになった」。

権威との葛藤を持つと「愛される側に立つこと」が困難になる場合も

権威との葛藤がもたらすパートナーシップの問題は多岐にわたりますが、自分自身が力を持つ、魅力を持つことができなくなる、という側面からパートナーとも問題を抱えることが多いです。

また、権威との葛藤を持つと「自分自身が愛される側に立つ」ということも困難になる場合があります。

これは「能力的には問題がないのですが、自分自身のマインドが十分に成長していない(権威と葛藤しているので、自分は不十分だと感じている)状態で。愛されることに困惑する自立した人」に多く見られる傾向があります。

よって、愛してくれる人がいたとしても、拒絶的な態度を取ったり、相手を傷つけるような行動(浮気、浪費など)を続けてしまうケースもあります。

「葛藤している相手を幸せにすること」が抜け道

ただ、この権威との葛藤を問題を癒していくことで、恋愛、夫婦問題が解決したり、仲睦まじく愛し合えるパートナーシップを得ることができるようにもなることがあります。

最後に、この権威との葛藤を癒す方法を簡単にご紹介します。

まずは、自分自身が誰と葛藤しているか、を理解すること。

そして、理解できたら葛藤している相手のことを理解するようにつとめます。

その上で、葛藤している相手への競争心を捨てて、「葛藤している相手を幸せにできる自分」を目指すことなんです。

言い換えるならば「葛藤している相手を超える」ということです。

ここでの「超える」とは、能力的、経済的な面などパワーで勝つのではなく、「葛藤している相手を幸せにする」ということを意味している、という部分がポイントですね。

(続)

 

心理学講座4回シリーズ/同シリーズ記事はこちら
  1. パートナーシップの問題と権威との葛藤
  2. パートナーシップの問題と競争の心理
  3. パートナーシップの問題とエディプスコンプレックス
  4. パートナーシップでの「自立を超える」方法 〜アテにできない自分を超える〜
この記事を書いたカウンセラー

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年間400件以上の面談カウンセリングを行う実践派。「男女関係向上・男性心理分析」「自信・自己価値向上」に独特の強みをもち、ビジネス・ライフワーク発見なども対応。明快・明晰かつ、ユーモアと温かさを忘れない屈託のないカウンセリングは「一度利用するとクセになる」と評され、お客様の笑顔が絶えない。