もしあなたが幸せでないのだとしたら、誰かに復讐をしているのかもしれない。
◆自己嫌悪する目的:自分を愛さないという復讐(誰かへの復讐)
自己嫌悪はときに誰かへの「復讐」に使われることがあります。
復讐とは、自分を不幸にすることで、誰かに仕返しをしようとする心理のことです。
誰かというのは、「愛してくれなかった」とあなたが思った人のことです。多くは、両親や過去のパートナーなどがそれにあたります。
一般的な復讐は、自分に対して酷いことをしてきた相手に対して、何らかの攻撃をしてやり返すといった意味になります。しかし、心理学的な復讐はその攻撃が自分に向くのです。
相手を攻撃するのではなく、自分を攻撃することによって、自分を痛めつけ、自分を酷い状況におき、自分を不幸せにして、それを見せつけることで復讐をしようとするのです。
「ほら、見てごらんなさい。私はあなたのせいでこんなに苦しんでいる。あなたが私にしたことで、こんなにも傷ついているの。私が不幸なのはあなたのせいよ。」
自分の人生を台無しにすることで、相手への復讐をしようとします。これが心理学的な復讐です。
「え?自分の人生を台無しにすることが、どうして誰かへの復讐になるの?」とピンとこない人は、こう考えてみてください。あなたの大切な親友が自己嫌悪や自己攻撃をしていたとしたら、それを見ているあなたもつらくなりませんか?
それと同じで、あなたの両親も元のパートナーも、あなたが自分を痛めつけている姿を見ることはつらいことなのです。しかし、ここには「あなたは私を愛さなかった」という恨みがあり、「あなたが愛さなかった私を、私も愛しませんよ」というのが自己嫌悪を使った復讐なのです。
ゆえに、復讐する相手は、あなたにとって「大切な人」になります。やろうと思ってやるわけではないのですが、「自分を愛さない」ことは復讐にもなりうるのです。
◆自己嫌悪する目的:自分を愛させないという復讐(過去の自分への復讐)
さきほどとは逆の心理パターンになります。復讐は「あなたのせいで私は傷ついた」という被害者のパターンです。こちらは「私が誰かを傷つけてしまった」という加害者のパターンになります。
たとえば失恋をしたら、ふられた側は「あなたのせいで私はこんなに傷ついている」と被害者的な自己嫌悪に陥るでしょう。ふった側は「自分は相手を傷つけた。こんな自分は最低だ」と加害者的な自己嫌悪に陥るのです。
「大切な人を傷つけてしまった」「愛することができなかった」「助けることができなかった」と感じるとき、そんな自分のことを嫌悪します。そして自分は罰せられるに相応しいと感じます。
ゆえに加害者意識が強くなると、「こんな自分が人を好きになってはいけない」「人に好きになられてもいけない」と人と親密になることを自分に許せなくなります。そのため、自己嫌悪と罪悪感(加害者意識)がくっつくと愛されにくい態度を取り、人が自分に近づいてこないようにする傾向があります。
自分から距離をとって引きこもることもあれば、怒りを使って近づいてこないように拒絶することもあります。その目的は「自分を愛させないこと」にあり、誰かを傷つけた罰として「過去の自分への復讐」にもなりうるのです。
◇自分を愛さない、自分を愛させないために自己嫌悪をする人へのアドバイス
人は愛されなかったことよりも、愛せなかったことのほうに強い痛みを感じます。
親に愛されなかったという心の傷を使って、親を愛さなくなったという心の痛みのほうが、じつはずっと強いのです。
つまり、復讐をしたくなる相手とは、どうしようもなく愛したかったのに愛せなかった人に向くのです。もしあなたが自己嫌悪をすることで復讐をしていると感じたのならば、その人はあなたにとって大切な存在のはずです。
そして、自分を嫌ってでも、自分から遠ざけてでも、愛したかった人。それは、あなたが人生をかけてでも、幸せにしてあげたかった人なのではないでしょうか。
だから、カウンセラーとしては、大切な人に対してする復讐については、「そこまでして愛したかったんですね。でも、愛せなかったことがつらいのですね。」という側面から見ているのです。
ここまで読んで何かが心に響くのならば、心のなかでこうつぶやいてみてください。「本当はあなたのことを幸せにしてあげたかった」と。闇のなかにある一筋の光をぜひ見つけてみてください。
(続)