苦手意識を解消するヒントは、「相手への理解」と「許し」です
なぜなら、私たちの物事の感じ方や捉え方は、人によって異なるからなのですね。
言い方のきつい人が苦手だと、できればそういう人とは関わりを持ちたくないと思ってしまいませんか?
怖いし不機嫌そうだし、怒られそう、などと感じ、近づくだけでもビクビクしたり、下手に出てしまったり、話も早々に切り上げたくなるかもしれません。
言い方がきついとは、たとえば「ストレートな物言い」や「命令口調」などがあげられるかもしれません。
言い方のきつい人が、いつも不機嫌で怒っているわけではないでしょうが、
なぜ怖く感じるかというと、ひとつの考え方として、かつてあなたの周りで、言い方がきつくていつも不機嫌で怒っている、怖い人がいたからかもしれません。
これは心の「投影」というしくみを使った考え方です。
投影とは、心の中にある感情や経験、過去に出会った人などを、心の外に映し出すことをいいます。
たとえば幼少期などに、いつも不機嫌で怒っている、きつい言い方をするお父さんが、怖くて嫌だなと思っていたとします。
すると、成長してからもきつい言い方をする人と出会うと、不機嫌で怒っていて怖かったお父さんを目の前の人に映し出して、当時お父さんに感じたのと同じような怖さや苦手意識を、目の前の人に感じてしまうことがあるのですね。
では、そもそもなぜ、あの人はきつい言い方をするのかというと、色んなケースがあると思いますが、ひとつには、そうしなければわかってもらえないという不安を抱えているのかもしれません。
例え話なのですが、虫が大嫌いな女の子に、男の子がいたずら心から、クワガタを持って近づいてきたとします。
女の子は最初、「やめてよ」と言ったんですが、男の子はクワガタを女の子の顔に近づけてきます。
何度か「やめてよ」と言ったけど、いくら言っても聞き入れてくれない男の子に、女の子はとうとう「オマエいい加減にしろよ、バカヤロー!」と強い口調で言ってしまいました。
男の子は、びっくりしてクワガタを落としそうになりながら、引き下がっていったんですね。
私たちは、おだやかな気分でいるときに、きつい言い方をしようとはしません。
そうしなければ相手にわかってもらえなくてとても困るときなど、「わかってほしい」「たすけてほしい」などの大きな不安を感じるときに、きつい言い方になってしまうのかもしれません。
あなたはもちろん、言い方のきついあの人に、クワガタを近づけているわけではありませんが、相手の人が何かしらの理由により、強い口調で言わなければ自分の思いは伝わらないという不安を抱えているのかもしれないのですね。
それはあなたに非があるという意味ではありません。その方のこれまでの対人関係において、人に理解されないと感じることが多かった場合など、誰に対しても強い口調で話すようになったということもあるでしょう。
そして、相手の不安を消し去ることができない限り、相手に変わってもらうことは難しいといえます。
ただ、「あの人は不安を抱えているのかもしれないな」などと理解しようとすることで、あなたの相手を見る目が変わり、苦手意識が軽くなることも考えられます。
また、言い方のきつい人に感じる苦手意識を解消するには、投影のもとになっている相手(上の例ではお父さん)への「許し」が役にたつでしょう。
許しとは、相手に感じている怒りを手放すことともいえます。
たとえばかつてのお父さんに感じている怒りを手放すことで、お父さんを投影する「言い方のきつい人たち」全員への苦手意識を持たなくて済むようになると考えられるのです。
その最初の一歩として、お父さんがなぜあんな言い方をしたのか、そのときどんな気分だったか、理解するところから始めてみてはいかがでしょうか。
家族を支えるプレッシャー、仕事がうまくいかない不安、お母さんとうまくいかないもどかしさなど、いろんな不安を抱えていたかもしれません。
あなた自身がもし、誰かにきつい言い方をしてしまうことがあるとしたら、そのときにどんな気持ちを感じているのかを思い出すことも、お父さんを理解するのに役に立つでしょう。
本当はきつい言い方をしたいわけではないけど、そうなってしまう。そんなもどかしさ、申し訳なさ、悲しさ、などがあるとしたら、お父さんもきっと、そうだったのかもしれませんよね。
許しは、過去の相手の言動をチャラにすることではありません。
すぐにはできなくても、自分を責める必要もありません。
ただ、大人に成長した今だからこそできることであり、人としてうまくできない状況や、完璧にできないことに理解を示し、共感し、持ち続けてきた怒りを手放そうとすることなんですね。
苦手意識の解消のため、ご参考になりましたら幸いです。
(完)