転地療法のすすめ

現代社会に疲れ切ったときには“転地療法”を取り入れてみよう

こんばんは

神戸メンタルサービスの平です。

“集団無意識”という言葉がありますが、これはすなわち “集団意識”といってもいいかもしれません。

“集団意識”とは、知らず知らずのうちにまわりの感情や価値観に影響されたり、常識などに流されたりすることをいいます。

大都会に暮らす人の慌ただしい日常もその一つかもしれません。

現代社会の現代社会は分単位、秒単位で変化しているといわれます。

読者のみなさん‥‥、とくに通勤・通学でいつも同じ時刻の電車やバスに乗っている人は、発車の数十秒から1分ほど前、つまり、ギリギリに駅のホームやバス停に着くことは多いのではないでしょうか。

一方、私が住む田舎では、私の子ども時代もいまも、バスは一日に3本しかありません。

すると、ほとんどの人たちがバスの時刻の20分ぐらい前からバス停に来られます。

発展途上国でも、同じように、汽車が来る1時間ほど前から人々がやってくるというのをテレビで観たことがあります。

いつもなにかに追い立てられるような生き方をしている現代の都会人は、自分に対して“スピードアップの呪い”をかけているといってもよいでしょう。

「もっと速く、もっと速く、もっと速く、もっと速く!!」

ついゆっくりとしてしまう自分に、「なんておまえはノロいのだ!」と言っているがごとく‥‥。

でも、そんなアップテンポな毎日がつづくと疲れますよね。

現代社会に疲れ切った人々に会ったとき、われわれカウンセラーは“転地療法”をおすすめすることがよくあります。

のどかな南の島など日常を離れた場所に旅行をして、心身を癒すセラピーの一手法です。

みなさんは“沖縄時間”という言葉を聞いたことはあるでしょうか。

沖縄では宴会のときなど「夕方6時に集合ね」と約束をすると、開始時間の6時にやってくる人はほとんどいません。

6時に家を出れば早いほうで、要はすごくアバウトなのです。

また、宴会を途中退席する場合、「お先に失礼します」の挨拶をして抜けるのが常識だと思いますが、沖縄では“黙ってバックレる”が普通なのです。

来たいときに来て、帰りたいときに勝手に帰る。それでだれも怒らない、というわけですね。

都会の真ん中に住んでいる人にとっては、ほんとうにありえないことであり、カルチャー・ショックといってもいいでしょう。

つまり、常識が違うのです。

みんながちゃんとしていないので、ちゃんとしていない自分を責めることはない。

とにかく急がないので、イライラすることはないし、ゆっくりしていれば、心は安らぎ、やさしくなれる。

これがまさに転地療法の狙いなのですが、南の島など田舎のほうに行けば行くほど、時間の流れ方が都会とは違い、ただボーッとしているうちに、自分を取り戻すことができるといわれます。

あるときのこと、外資系企業の営業マンが、働き過ぎてイライラがピークになり、「もう、こんな会社は辞やめよう!!」と決意しました。

そして、上司に辞表を叩きつけたところ、その上司からこんなことを言われたのです。

「きみはまともに休みをとってこなかっただろう。よかったら、2週間ほど休みをとってみないかい。わが家は来週から家族でパラオに旅行するので、きみも一緒に着いてきなさい」

じつはその会社は外資系なので、休暇はとりやすかったのです。

現在も手づかずの自然が魅力といわれるパラオですが、そのころはもっと田舎で、ただただ美しい海やジャングルが広がるアイランド・リゾートでした。

上司はその素朴なリゾートで、子どもたちに海水浴をさせ、自分は魚釣りをし、腹が減ったら食事をし、眠くなったら寝てしまう‥‥、そんな気ままな休暇を過ごしていました。

「こんな夏休みを子どもたちに体験させるためだけに、俺はこの仕事をしているのさ」

せっかくのリゾートで所在なさげにしている彼に上司は言いました。

「きみはこの“なにもしない贅沢”が退屈で仕方がないんだろう? ここの生活に慣れたら、そのときはきっとなにかが見えるよ」

この言葉に彼はとても惹きつけられました。

それから彼の中でなにかが変わっていき、やがて彼は南の島専門の旅行会社を立ち上げることになったのです。

来週の恋愛心理学もお楽しみに!!

この記事を書いたカウンセラー

About Author

神戸メンタルサービス/カウンセリングサービス代表。 恋愛、ビジネス、家族、人生で起こるありとあらゆる問題に心理学を応用し問題を解決に導く。年間60回以上のグループ・セラピーと、約4万件の個人カウンセリングを行う実践派。 100名規模のグループワークをリードできる数少ない日本人のセラピストの1人。