人が自分を愛そうとしてくれていることを認めることができていますか?
こんばんは
神戸メンタルサービスの平です。
この日、ご相談におみえになった女性は、開口一番、「子どもの学校の行事がいやでいやで仕方がありません」とおっしゃいました。
昨今、彼女と同じような思いをもっている保護者は少なくないようです。
理由はさまざまで、「PTA活動が苦手」という人もいれば、「なぜ、そんなことをしなければならないのか理解できない」と活動に参加することを拒否している人もいるようです。
ご相談者の彼女の場合は、人がよく、「いろいろな役を押しつけられてしまうのが重荷になっている」というのがいちばんの理由でした。
そして、重荷に感じながらも器用なほうで、どんな役もソツなくこなしていたんですね。
そのため、さらに期待されたり、より責任のある役員候補になったりと、わが首を絞めるようなことがつづいていたのです。
最近は引っ越しをして、子どもの送り迎えという仕事が加わったことも彼女の忙しさとストレスを増大させる要因となっていました。
ご主人の実家に同居していたのですが、ご主人の仕事の都合でこのたび10kmほど離れた町に転居。
しかし、子どもたちが「学校を変わるのはいや」と言うので、これまで通りの学校に通うこととなったのです。
遠くなったので、小学1年生の娘の送り迎えが必要になりました。が、彼女は車を運転しないので、電車を2回、乗り換えて、送ったり、迎えにいったりしなければならないのです。
そんなこんなで、日々、時間に追われる中、学校行事に関わることにも限界を感じるようになりました。
しかし、「ノー」というのがすこぶる苦手なタイプであるがゆえに、ひとり強度のストレスを抱える状態にまで追いつめられていたのです。
お話をうかがってみると、彼女の性格は完ぺき主義に近く、「頼まれたからにはちゃんとやりたい」と考えるほうで、それは学校行事だけでなく、子育てや家事など、さまざまな面にもあらわれていました。
つまり、忙しいからといって、彼女が学校行事や日常のことに手を抜くということはありません。
その結果、ますます忙しくなり、余裕がなくなり、イライラピリピリとしてきてしまいます。
そんな彼女の性格は、ご主人、おかあさん仲間など、まわりの人もよくわかっているようで、「なにか手伝おうか」としばしば言ってくれるといいます。
しかし、彼女は「こんなにたいへんなことを、人に任せるのは申しわけすぎる」と思い、一人でぜんぶを引き受けてしまいます。そのため、ますます余裕がなくなるという悪循環に陥っているわけです。
そう、彼女がもっとも苦手にしていることの一つは、「人に物事を頼む」ということなのでした。
その心理の裏側には、こんな強い思い込みがあることがわかりました。
「人は自分の敵であり、万が一、なにかを頼んだりすると、表面的には受け入れてくれるだろうが、内心では根にもったり、嫌われたりされるだろう」
その背景には、彼女の母親の存在があったようです。
母親も人がよい人で、なんでも引き受けてしまうタイプだったそうです。
しかし、家では「困った、困った。なんで人は私に無理ばかり押しつけてくるんだろう」など、頼んでくる人を非難するようなことをよく言っていたとか。
そのため、「人にものを頼むと、陰で悪口を言われる」という思い込みが彼女のなかにできたようなのです。
そんな彼女にこう提案してみました。
「あなたがお手伝いを頼みたい相手がほんとうにそんな人たちなのか、あらためてチェックしてみませんか?」
彼女は困惑しながらも、この話をご主人にし、相談に乗ってもらったそうです。
すると、ご主人はこんなふうにおっしゃって、彼女はもう、びっくりしてしまったのです。
「どうすればきみの助けになるのか、ぼくを筆頭にみんなよくわからない。なにも手伝うことができて、きみに対して罪悪感をもっているんだよ」
与えることはいくらでもできるのに、受け取ることができない。
受け取るということは、人に自分を愛させてあげるということです。
彼女がほんとうに苦手としていたことは、人が自分を愛そうとしてくれていることを認めるということだったようですね。
来週の恋愛心理学もお楽しみに!!