お金を通じて受け取ったもの

みなさんは、お金にどんなイメージがありますか?
お金そのものはただの物質ですが、人はそこに価値観や感情をかさねます。
そして、自分の持っている価値観や、感じている気持ちに合うように、お金の扱い方を選んでいます。

私は長い間、お金=我慢の対価だと思っていました。
汗水流して、苦労した分だけ、お金は手に入る。
毎月の給料も我慢料だと思っていました。
そうなると、たくさんのお金をもらうには、それだけ大変な思いをしなくてはなりません。
残業をしては、「これだけ尽くしたんだから給料をあげてくれ!」と会社に不満を持っていました。
また、大変な思いをすると、ちょっとくらいご褒美をもらってもバチは当たらないだろう。
奮発して高い買い物をしたり、仕事終わりに飲み屋に通ったりもしました。
我慢した分だけ、ストレス発散のためにお金が必要になりました。
結局、何に使ったのかよくわからないまま、お金はなくなり、働けどもお金が貯まらないということが悩みでした。

お金のイメージはどこからきたのでしょうか。
私たちは「お金とはどんなものか」「お金とどう付き合ったらいいのか」両親をみて学ぶことが多いものです。

私は、子ども時代に、父が夜遅くまで仕事をし、母が節約をして家計をやりくりする姿をみていました。
お金がないことで家族が喧嘩したり、「お金がかかる」と愚痴をこぼす姿を見てきました。

小学生のころ、母と買い物にいって、「何か欲しいものがある?」と聞かれたとき、私は「いらない」と即答しました。
だって、私のためにお金をつかったら、節約している母の努力が無駄になってしまうから。
父が苦労をして稼ぎ、母が我慢をしてためたもの。
それが私のお金のイメージでした。
そんな苦労と我慢の結果が、自分のために消えることが、申し訳ないと感じたのです。
そして、「ほしい」という気持ちを我慢するようになりました。

お金そのものはただの丸い金属や紙で、それだけでは意味を持ちません。
汗水垂らして手にしたお金でも、道端でたまたま拾ったお金でも、物質的にも金額的にも価値は同じです。
そこに「我慢」「苦労」などの意味付けをしているのは、私の判断なんです。

お金=我慢や犠牲の結果なら、お金を受け取りづらくなります。
そのお金を嬉しい気持ちで使うこともできません。

私は、お金を受け取るときには、「頑張ったんだから、もらって当然でしょ」って言い訳をしながら給料を受け取りました。
そして、幸せのためにお金を使えず、何に使ったのかわからないままにお金を消費していったのです。

あるとき、カウンセラーさんから「ご両親はとても良いお金の使い方をされましたね。」と言われたことがありました。
両親が節約しながら、子どもの養育にお金を使ったことを承認してくださったのです。

私は、内心、否定しました。
べつに、お金をかけてほしいなんて頼んでない。
お金よりも、もっと話を聞いてもらったり、抱きしめてもらったり、心が満たされるような愛がほしかった。
私はそう文句をいいながら、お金を通じて愛が注がれてきた事実を否定していました。

でも、大人になったら現在なら、子どものころとは違う見方ができます。
友達の誕生日をお祝いしたくてプレゼントを送ったり、恋人と美味しいものを食べたくて食事に誘ったり、大切な人に良い気分になってほしくて、お金を使ったりもします。

両親だって、私に喜んでほしくて、お金を使っていたのでは?

私のエゴは抵抗しました。

義務感から嫌々やってたんじゃないのか。
家計が大変とか嘆いていたじゃないか。
お金をかけても、私はろくな大人にならなかった。
苦労させやがってと文句を言うはずだ。

自分のためにお金を使われるなんて申し訳ない。
自分にはそれだけの価値はない。
私は自分をろくでもないものだと思い、父と母が苦労の先に与えたかったものを見ないふりしたのです。
でも、両親を我慢ばかりの暗い人生を歩んだ犠牲者として見たいのか、大切な存在のために献身した功労者として見たいのか、選ぶことはできます。

私にとって、お金のイメージを見直すことは、両親の愛を受け取り直すレッスンでした。
両親は私に安心や幸せを届けたかった。
父と母が苦労を背負ったのは、二人にとって、私はそれだけ価値ある存在だったから。
そう理解すると、なんだか、胸が締め付けられて、おもはゆい感じがします。

お金を犠牲や我慢の象徴ではなく、愛の表現として感じられるようになると、お金があることに感謝できるようになりました。
そして、お金をありがたいと感じるにつれて、お金を大切に使えるようにもなってきました。

お金にどんな気持ちを重ねるかは自分で選ぶことができます。
自分や誰かを大切にするための手段として、お金と接していきたいものです。

この記事を書いたカウンセラー

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人間関係、自己嫌悪、家族関係、仕事などの相談を主に扱う。じっくりと話を聴きながら、そのままの自分でもっと楽に自由になれる道筋を一緒に見出していくサポートを行う。 お客さまの個性やペースを尊重し、いつでも味方でいることを大切にしており、「話していて安心できる」「心の深いところをわかってもらえた」と好評である。