こどもの応援団になる
不登校や学校への行き渋りで悩むお子さんと接する親御さんは、つい心配から
「なんで学校に行かないの!」
と、責めたり
「学校に行きなさい」
と、登校に躍起になるかもしれません。それで効果が出ればいいのですが、逆効果になってしまうこともあります。そんなときに試してほしいことがあります。それは「こどもの応援団になる」ということです。
応援団とは
応援団とは、どんな状況でも選手に声援を送り、支え続ける存在です。たとえ選手がミスをしても、責めたり諦めたりせず、最後まで信じて応援し続けます。
・こどもの応援団になるとは
こどもの応援団になるとは、具体的にどういうことをいうのでしょうか。2つあります。
それは
1,こどもを責めない
2,敵ではなく味方であることを伝える
です。
味方だからね
野球の応援団を例にすると、ピッチャーがホームランを打たれたとき、
「なにやってんだよ!!もう応援やめちゃうぞ」
と、観客は選手を責めるかもしれません。でも、応援団は違います。むしろそのようなピンチのときこそ
「味方だからね!」
とばかりに選手により大きな声援を送ります。
・親も同じ
親も同じです。子供が一番のピンチなときほど応援団でいたいと、思うものです。
しかしそう心では思うのに、ついついこどもを責めてしまったり、追い込んでしまうことがあります。
鬼監督になっていませんか?
こどもにとって親というのは、野球チームでいえば「監督」のような存在でもあります。監督だからこそ「作戦ミスをしてしまった」と、親は自分のことを責めてしまいやすいのです。
すると、このピンチをどうにかしなければと躍起になってしまうのです。そして
「なにやっているんだよ!」
と子供を責めてしまうことがあります。
そうするとこどもは誰も応援してくれる味方がいないと感じて、立ち直るのが難しくなってしまうかもしれません。なかには野球(学校生活や人生そのもの)を諦めようとしてしまう子もいるかもしれません。
そうなることを親御さんは望んでいないと思うのです。だとしたら、親御さんが心では思っている
「応援団でいてあげたい」
ということを、実行してあげていいのだと思います。
でも、こんなことを書いていますが、かつての私も鬼監督でした。こどもに「このチーム(家族)には味方がいない」とすら感じさせてしまったかもしれません。
そんな私がなぜ、鬼監督をやめて、こどもの応援団になろうと、思ったのでしょうか。
・なぜ、応援団なのか?
実はこどもこそが、小学校のころ運動会の応援団をつとめたのです。
「ふれーふれー、白組!」
雲一つない炎天下のなか、こどもは一生懸命声を張り上げ、はちまきをし、大きな白い旗をばさっばさっと振り、堂々たる応援をしていました。白組がピンチなときこそ、大きな声援を送る姿を見て、わが子ながら
「なんてかっこいいのだろう!」
と、思ったものでした。
わが子の不登校記
そんなわが子は中学生になり、あることをきっかけに不登校になりました。昼夜逆転し、なにを聞いても答えないし、ふさぎこんでいるのです。そのこどもの姿に、私は優しくしたくてもできないのです。あの頃、一番苦しかったのはこどものはずなのに。親である私が
「作戦ミスだ。このミスを取り返さなければ」
という思いから、
「学校に行きなさいよ!」
と、こどもを追い詰めてしまう鬼監督になってしまったのです。
・楽しい時間が笑顔をもたらした
そんな鬼監督の自分自身もまた、どんどん追い詰められていき、大変苦しいのです。どうにかしなきゃと相談した先輩カウンセラーに
「せっかく親子で時間があるのだから遊んだり、おいしいもの食べたり、楽しんだらいいよ」
と、アドバイスをもらいました。
わらをもすがる気持で、こどもと食事にいったり、劇団四季やライブを見に行ったりしました。その時間は思いのほか楽しいのです。あれだけ悩んだ学校よりももっと大事なことがありました。こどもも笑顔がもどり、元気になっていく姿を見て、
「私こそがもう鬼監督をやめなきゃいけないな」
と、思ったのです。
通常登校への不安と葛藤
そんなわが子も新学期を迎え、担任の先生が大好きな先生に変わったこともあり、相談室登校するようになりました。こどもの生活もはつらつとしていくのを見て、私もほっとすることが増えていきます。こどもの姿を見ていた先生から
「通常登校しましょうか」
という提案がありました。
しかし、こどもにとってその提案は、非常に緊張感の高いもののようでした。数日前から気持ちも不安定になりました。こどもが私につっかかってきたり、無視したり。突然涙をにじませたかと思うと、走って逃げようとするのです。
・こどもの「一人ぼっちのSOS」
どうしようもないくらいこどもはSOSを出しているのだと気付いた私は、ようやく伝えたいことを伝えられました。
「私は、あなたの敵じゃないよ。味方だよ。たしかに私だって、学校行けって言っちゃったよね。ごめんね。私、心を入れ替えた。私はあなたの応援団になるって決めたの。それはね、あなたが小学校のころ応援団してた姿を思い出したからなんだよ。私もそうなりたいって思うぐらいあなたの姿はかっこよかった。応援団だから、あなたはもう一人で抱えなくていいし、どんなあなたもあなたでいてくれればいい」
言い終える前から、こどもは泣きじゃくっていました。そのぐらい、こどもは一人ぼっちの感覚のなか、なんとか生きてくれていたのだと思います。私も涙が止まりません。私も、こどもの応援団でいたいという気持ちに素直になれたのです。
・応援団でいる覚悟
今、こどもは通常登校しています。相当頑張っているようです。頑張っている姿も応援しているし、無理だと思ったら休んでいいのです。どうあっても私は見捨てないし、味方、応援団でいる覚悟ができました。
そう思えるようになった私が一番ほっとしているように思います。
わかりやすい味方以外全員敵
私こそがかつては
「わかりやすい言葉で、態度で味方してくれる人以外は全員敵」
だと思って戦って生きてきたのです。そして私の人間関係はいつもうまくいきません。好戦的で攻撃的な態度は、人が離れていってしまうものです。
そんな態度で、敵ばかり見て、敵ばかりカウントして、
「誰も味方も応援してもくれない」
と思っていたのです。
・支えてくれた人たちの思いを受け取る
しかし、私自身、幼少期も、学生時代も、会社でも、見捨てられてもおかしくないような自己破壊的な行動を繰り返していたのにも関わらず、味方してくれて、応援してくれた人はいたのです。
真実は、私こそが、誰のことも味方してこなかったし、応援しても来なかったのです。それに気付くのが怖すぎて恥ずかしすぎて、認めたくなかったのです。
そんな私が、どんなことがあっても、まるごと味方だし、応援しているなんて思えて言えるようになったのは、こどもの存在があったからなのだと思います。
不登校に悩む親御さんへ
不登校に悩む親御さんは、年々増え続けています。苦しいのはこどもだとわかっていながら、親も苦しむものです。でも、苦しいときだからこそお子さんの「応援団」になってみませんか?つまり
1. こどもを責めない
2. 敵ではなく味方でいることを伝える
ということです。
親である私たちがこどもの応援団になって初めて、ご自身のことをこれまで支え応援してくれていた周りの人たちの思いに、ご自身が気づくかもしれません。応援する側にまわって初めて、だれが応援してくれていたのか気づくということは、多いものです。「親になって初めて、親の気持ちがわかった」なんて方が多いように、です。
親御さん自身を支え応援してくれた人たちの思いを受け取りながら、今度はお子さんの応援する側にまわれたとしたら。それはきっと、お子さんにとっても最強の生きる力になってくれることと思います。
みなさんの子育てのお役に立てたら嬉しいです。
来週は、小川のりこカウンセラーです。
どうぞお楽しみに。