問題解決には選択の力を使おう

カウンセリングの中で、取り組んでいる事柄がうまくいかない、うまくできないというご相談を受けることがよくあります。
その内容は、与えられた仕事が捌けない、管理しているプロジェクトがうまく進まない、やっている事業がじり貧で将来が心配、など様々です。
そんな時、私達は自身の外側の世界に問題を見出しがちです。
上司が悪い、部下が悪い、会社が悪い、システムが悪い、社会が悪いなどその矛先は様々です。
確かに、そのような私の外側の世界にも問題があるのでしょう。
しかし心理学的な捉え方では、その状況は私の外側の世界の問題ではなく、寧ろ自分自身にあると考えます。
なぜならば、それを問題と捉えているのは自分自身の心だからです。
同じ状況に置かれた人がみんなその出来事を「問題」と捉えるかどうかというと必ずしもそうではありません。
例えば、今まで長年おつき合いのあった取引先が倒産したことを「問題」と捉える人もいれば、これを機に新しい取引先を開拓するぞと思う人がいたり、新たな事業分野に進出して経営の多角化を進めようと思う人もいたりするでしょう。

ところで、私達が持っている大きな力の一つに「選択の力」があります。
「選択の力」があるとは、私が何をするか、どうするかを決める主体であるということです。
しかし、私達はその「選択の力」に知らず知らずのうちに制限をかけてしまっていることがあります。
そうすると、あたかも選択肢が無いように見えてしまいます。
行き詰った感じがするのですね。
例えば、「私はこれしかできない」「私には力が無い」という自己概念や「世の中そんなに甘くはない」「こうあるべき」などの観念やルールがその選択の力の阻む原因です。
これらの自己概念や観念などの制限の中で今まで生きてきた訳ですから、その制限を取り外すことは怖くて心理的な抵抗があるものです。
しかし、その制限の中での今までのやり方が結果的に問題を作り出しているのですから、その制限を取り払うことで問題が解決する可能性が広がります。
また自身の新しい可能性すら生み出されます。

さて、その問題を作り出しているのが自分自身の心の中にあると捉えると、問題を解決する方法は自分の手の内にあるということになります。
外の世界ばかりに問題の原因を押し付けていたのでは、問題の解決は自分の外の世界が変化することしか無く、それは難しいことです。
問題を自分の手の内に取り戻すことで、問題解決の糸口が見つかるのですね。

では、具体的にどのように自身の問題と取り組むかというと、先ず問題は何かを見極めます。
この段階では問題の原因を外の世界にのみ見出しても構いません。
次に、制限を全く設けずにそれを解決するにはどのような方法があるか選択肢をできるだけ多く探します。
制限を全く設けないわけですから、自身に抵抗がある事柄や突拍子もない事柄が出てきても構いません。
次に、出てきた選択肢の中で、自分が容易にできそうな事柄と、容易にはできそうにない事柄に分けてみます。
容易にできそうな事柄があれば、それを実行してみるというのが最初にやってみることです。
しかし、容易にできそうな事柄が見つからない場合や、それをやってみたもののうまくいかなかったということもあると思います。
その場合は、容易にはできそうにない事柄の中から比較的容易にできそうな事柄を選びます。

そして実はここからが重要なのですが、「私はどうしてそれが容易にできないと感じているのか」もしくは「私はどうしてそれをやりたくないと感じているのか」という自分自身の感情と向き合います。
感情と向き合うというのは、その感情が何故あるのかを探すことです。
なぜそう感じるのかを何度も何度も繰り返して自問していくと、いつ頃からある感情なのか、何がきっかけでそう感じたのか、なぜ今でも抵抗があるのかなどが見えてきます。
時には何も感じなくなる空白が生まれたり、行き詰ったりすることもありますが、それはその空白を感じ続けたり、行き詰りを感じてもらえればやがてその心の層を抜けて進み始めることができます。
焦らずに心のペースに従って進めることが秘訣です。
そうすると、そこには様々な心理的な体験や自己概念、ルールといった選択を制限する事柄が見出されるでしょう。
ここで重要なことは、その見出された事柄を「よい」「悪い」で判断するのではなく、「そう感じても仕方がないよね」といった感覚で受け容れ認めることです。
それには事情や理由があるわけですから。

さて、ここからが本当の意味での「選択の力」の行使です。
今抱える問題を解決するのか、それともそのままにした方がよいのかを選びます。
もちろん、問題をそのままにしてよいという選択でも大丈夫です。
もし、問題を解決する選択をしたのであれば、容易にはできそうにない事柄にチャレンジしてみます。
それでもうまくいかない場合は、更に別の方法を試してみます。
問題を解決しなくていいという選択をしたのであれば、それも自分が選択したこととして認め受け容れてください。
それは、問題から逃げたわけではなく、そちらを選択したのです。
「選択を自分でした」という捉え方は、その後問題と接していく上でもきっと役に立つことと思います。

選択は、私達が持つ大きな力なのです。

この記事を書いたカウンセラー

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恋愛や夫婦間の問題、家族関係、対人関係、自己変革、ビジネスや転職、お金に関する問題などあらゆるジャンルを得意とする。 どんなご相談にも全力投球で臨み、理論的側面と感覚的側面を駆使し、また豊富な社会経験をベースとして分かりやすく優しい語り口で問題解決へと導く。日本心理学会認定心理士。