様々な罪悪感(1)〜やらかした罪悪感編〜

やらかしてしまった罪悪感は、同じ事を繰り返さないために

今回は「やらかしてしまった」という罪悪感についてです。
ミスや失敗をしてしまったり、誰かを傷つけてしまったりということは、やりたくはありませんが、私たちはやらかしてしまうことがあります。
そんなとき、自分を責めすぎた結果、自分以外の人を悪者にしてしまったり、その場から逃げてしまったりしてしまいます。

子供の頃なら、テストの点数が悪かったとか、イタズラをしちゃったとか、友達につい酷いことを言ってしまったとかそのようなことって、私たちは、少なからずあるのではないかと思います。
大人になってからも、寝坊して約束の時間に遅れてしまったとか、仕事でミスをしてしまったとか、お付き合いしている人とは、別の人に対して魅力を感じてしまったとかもありますよね。

何かをやらかしてしまった。
失敗やミスをしてしまった。
そういう時に、「悪いことをしてしまったな」「申し訳ないことをしてしまったな」なんて私たちは感じます。
これが、やらかしてしまった罪悪感です。

日常に起こる些細なミス、例えば手が滑って、家族が使っているマグカップを割ってしまったなんてことから、借金をしてしまって家族に多大な負担をかけてしまったというような大きな罪悪感まで、様々あります。

「やらかしてしまった!」となったとき、私たちは罪の意識、つまり罪悪感を持ちます。
そして、その罪を「償わなくてはならない」と感じます。
また、「罪があるのだから、罰せられる」とも思います。
この感覚が、「嫌な感じ」なんですよね。

例えば、家族が使っているマグカップを不注意で割ってしまったということならば、そのマグカップが相当高価なものや、思い出の品で世界に一つしかないというような物でなければ、素直に謝って、代わりのものを買ってくるなんてことをして償おうとするかもしれませんね。
「やらかしちゃったけど、ごめんね。これで償わせてね」という感じです。

やらかしちゃったとき、素直に謝罪することができて、償うことができると考えるなら、私たちはそのようにするものですよね。
ところが、「謝って許されることではない」と、思えば思うほど、謝れなくなってしまいますし、「償いきれるものではない」と思えば思うほど、逃げたくなってしまいます。

例えば、借金をしてしまって、家族に多大な負担をかけることになってしまった。
両親が長年必死で貯めてきた預金を、返済に充て、自分だけでなく親や兄弟も今後働いて、残りの借金を長い年月をかけて支払っていくことになってしまったとしましょう。

「ごめんなさい」では許されないような気持ちになってしまいます。
例え、親や兄弟が「みんなで頑張って残りの借金を返済していこう」なんて言ってくれたとしても、「恨んでいるに違いない」「私は家族の人生を台無しにしてしまった」と自分を責めますし、家族からも責められているように感じてしまいます。

このように大きすぎる罪悪感は、罪の意識を感じても、「許されるわけがない」「償えるわけがない」と思うので、自分を罰し続けることになってしまいます。
ここからが厄介で、自分を罰し続けるのですが、自分を強く罰すれば罰するほど、その罪の意識に耐えられなくなってきて、「そうはいっても、あの人だってあんな悪いことをしていたよね」という感じに、自分以外に悪い人を作り出し、誰かを攻撃するようになってしまったりするのです。

例えばこんな感じ。
「借金をした私も悪いけれど、お父さんだって毎晩お酒を飲んで、家族とあまり会話もしてくれなかったじゃないか!」
「お母さんだって、私が悩んでいることに全く気づいてくれなかったじゃないか!」
「お兄ちゃんなんて、彼女と遊ぶことばっかり考えて、いつも楽しそうにしているだけじゃないか!」

もう、言いがかりですよね。
「あなたの借金と、そのことってどのように関係するの?」と、他の人が聞いたら思うようなことなのです。

そのように、自分の罪の重さに耐えかねて、自分の他に悪い人を作り出してしまったとしたら、その人たちに対して思っているようなことを口に出してしまうかもしれませんよね。
言われた側は、「は?」となってしまいますし、状況によっては、「助けようと思っているのに、なんだその態度!」となってしまうかもしれません。
そして、「ほら、やっぱり私のこと許してなんていないし、助けようなんて思ってないのよ!」と、「私は許されない」という思いを強化させていきます。

そのような状態って、居心地が良いものでは当然ありません。
だから、その場から逃げたくなってしまうのです。

逆に、どれだけ自分が悪態をついても、「一緒に頑張っていこうね」なんて言われても、居心地の悪さは増していきます。
借金をした私は悪い人、それに対して協力して助けようとしてくれる家族は良い人と感じますから、ますます罪悪感は大きくなっていって、居心地は最悪になっていくのです。
そして、「私はここにいちゃいけないのだ」なんて感じて、家族や借金を放置して家出してしまうなんてことも起こったりします。

こうなると、やらかしてしまったことに対する責任をとることもできません。

私たち人間は、完璧ではないので、意図せずそのようなことになってしまうことってあります。
それが、大きなミスだったとしても、罪悪感から自分を責めすぎると、責任が取れなくなってしまうのです。

自分を責めすぎることよりも大切なのは、何が原因で、ミスをしてしまったのか?
どうして、そんなことをやらかしてしまったのか?
そのことに目を向け、同じ事を起こさないようにすることなんですよね。

「申し訳ない」「ごめんなさい」「傷つけてしまった」「迷惑をかけてしまった」そのことを受け止めることは大切です。
しっかり受け止めたら、誰かを悪者にしたり、逃げ出したりして更なる罪悪感を作るのではなく、「その事」に向き合いましょう。

やかしてしまった罪悪感は、同じ事を繰り返さないために、謝罪した後は、学んだり、態度を改めたりしていくことが、自分を責めるよりも大切なのです。

(続)

 

心理学講座4回シリーズ/同シリーズ記事はこちら
  1. 様々な罪悪感(1)〜やらかした罪悪感編〜
  2. 様々な罪悪感(2)〜やっていない罪悪感編〜
  3. 様々な罪悪感(3)〜私は毒である罪悪感編〜
  4. 様々な罪悪感(4)〜何が起こるか編〜
この記事を書いたカウンセラー

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