心理用語に“パーソナルスペース”という言葉があります。
こんばんは
神戸メンタルサービスの平です。
心理用語に“パーソナルスペース”という言葉があります。
これは“自分の空間”といいますか、その人の“領土”のようなものです。
そして、それは、自分以外のだれにも入ってもらいたくないという空間でもあります。
たとえば、一人暮らしのみなさんであれば、あなたの部屋にだれを入れるかということは、あなた自身が決めますよね。
入れてもいいと思うのは家族やパートナーや親しい友だちであって、それ以外の人には自分の空間には入ってもらいたくないと思うでしょう。
このパーソナルスペースにまつわるご相談を、ある男性からいただきました。
彼は家庭をもっているのですが、家の中に自分の居場所がないと言うのです。
彼は出張族で、単身赴任していた時期も何度かあるそうです。
最近、ようやくマイホームから通える事業所に異動となったとのことでよろこんだのも束の間、家の中で不満を感じる出来事がちょくちょく起こるようになったそうなのです。
たとえば、彼が仕事から帰ってリビングでくつろいでいたら、奥さまにこんなふうに言われたそうです。
「その椅子はいつもワンちゃんが寝るところだから、座っちゃダメ。隣のソファは私の指定席だからダメ。いま、あなたが座っているところは、子どもたちがテレビを観るときに座る席よ。子どもたちがいないときはいいけど、帰ってきたら空けてあげてね」
「じゃあ、おれはいったいどこに?」‥‥というような状況だというのです。
出張族、単身赴任族のご家庭のみなさんはよくおわかりでしょうが、ご主人が不在のとき、家はそのすべてのスペースが奥さまのものとなるものです。
キッチンはもちろん、リビングも“私の領土”であるわけです。子どもたちやペットは「私が一緒に暮らしたい存在であり、私が許可して居させている」ので問題はありません。
しかし、そこにふだんはいないご主人が帰ってくると、まるでエイリアンがやってきたかのように感じられてしまうのです。
奥さまは長年、ご主人がいないものとして生活し、家という自分の領土を快適に暮らせるようにしてきました。
そこに、ご主人がやってくるわけですが、ご主人もご主人でここは自分の家だと思っていますから、リビングでくつろごうとしたりするわけですね。
それが「私のリビングに座らせてあげているだけ」という感覚の奥さまには気に入らないわけです。
もちろん、昔からそうだったわけではありませんよ。
「頼りたいときに、あなたはいない。この何十年、私は一人でがんばってきたのよ」という頼りにならないご主人への当てつけの気持ちも少なからずあるでしょう。
というわけで、奥さまの中には、「おいてあげているのだから、もっとありがたがって、謙虚にしていなさい」という思いがあるのですが、ご主人には、まさか自分が奥さまのスペースにお邪魔しているという自覚はまったくありません。
リビングでもそうですから、それがキッチンとなるともっとたいへんです。
ご主人が「たまにはサービスで皿洗いしてあげよう」などと思い立っても、「お皿の置き方がなってない!」とか、「そこにコップは置かないで!」とか、怒られるばかり。奥さまの領土では奥さまのスタイルに合わせないといけないのです。
ご相談者のご主人にこんなお話をしたら、いろいろ思いあたるところがあるようでした。
今回のご相談にかぎらず、長い間、奥さま一人で家庭を守ってきたようなお宅では、同じようなことがよく起こるようですよ。
来週の恋愛心理学もお楽しみに!!