「喫煙習慣のある人が禁煙をしたい」「普段運動しない人が運動習慣を持ちたい」など、「これまでの慣例を改めて、新しい行動習慣を作りたい」と思うことがあるでしょう。
人が行動を変えるには、5つのステージを経ると考える「行動変容ステージモデル」があります。
このモデルは禁煙の研究から生まれたモデルですが、現在は生活習慣の改善など、さまざまな行動についても研究されています。
行動変容ステージモデルの5つのステージは、前関心期・関心期・準備期・実行期・維持期です。
多少逆戻りするケースもありますが、大まかにはこれらのステージ順で変容していきます。
生活習慣の改善や行動習慣の変化には、対象者がどのステージにいるのかを理解し、そのステージに応じた働きかけが必要になります。
今回は禁煙を例に解説します。
●前関心期
前関心期は、「行動を変えようと思っていない」状態です。
「禁煙なんか、自分に必要ない」「別に現状を変えなくてもいい」という時期ですね。
この時期に無理に禁煙を勧めたりすると、「タバコでリラックスできるんだ」「タバコくらい自由に吸わせて」などと反論が返ってくるでしょう。
前関心期の対応は、まずは信頼関係の構築です。
「この人と話してもいいかな」と思わないと、働きかけることすら難しくなります。
解釈や決めつけをせずに、相手への共感を大切にしましょう。
また、正論で言い争いをしないように気をつけましょう。
そして、改善していくことのメリットを知ってもらう、現状維持でのリスクを知ってもらう、問題を認識するための会話をしてみましょう。
また、「タバコをやめたくない」「タバコをやめた方がいいかも」といった相手の中にある矛盾した気持ちを話せる状況を作り、「矛盾した気持ちが出てきますよね」と現状の肯定もしましょう。
●関心期
6ヶ月以内に行動を変えようと思っているステージです。
「そのうちタバコをやめようか」と思っている状態です。
関心期には、タバコをやめることに不安や抵抗がまだあったりします。
「タバコをやめると太る」とか「やめると言ってやめられなかったらカッコ悪い」などと思うこともあるでしょう。
関心期には、「タバコをやめるとご飯が美味しい」「タバコをやめると体を動かすのが楽になる」など、行動が変わった後のメリットなどの情報提供が必要です。
●準備期
1ヶ月以内に行動を変えようと思っているステージです。
「いよいよタバコをやめよう」と決めた、作戦開始直前の時期です。
この頃は、いつから始めるのか、具体的な日にちを決め、どのような行動をするのか、具体的な行動ができるよう促す対応が求められます。
例えば、「今月の誕生日からやめる」「ニコチンパッチを貼り始める」など。
タバコをやめると「宣言する」なども、準備期にするといいようです。
●実行期
行動を変えて6ヶ月未満のステージです。
タバコを吸う行動を、実際に別の行動に置き換えていく時期です。
この頃は、「またタバコを吸いたくなる」など、元の習慣に逆戻りしやすい時期です。
実行期には心理状態を確認しながら、環境の調整をするなども必要になるでしょう。
例えば、タバコの代わりに手に取りやすいところに飴やガムを置くとか、禁煙に成功したらもらえるご褒美の写真を貼っておくとか。
実行期は、周囲の人が積極的に、小さな変化でもいいので、本人では気がつきにくいポジティブな変化を伝えていくようにしましょう。
また、自分自身で変化に気がついて、感じてもらうことも心がけるといいでしょう。
●維持期
行動を変えて、6ヶ月以上のステージです。
禁煙が半年以上続いた状態です。
ここでは、行動の結果、手に入れて維持しているメリットを再評価する機会を作るといいでしょう。
例えば、禁煙の結果、息が苦しくならずに階段を使える、浮いたタバコ代が趣味に使える、喫煙所を探してイライラする時間がなくなった、など。
それから、周囲の人からは、行動を継続していることへの賞賛なども伝えたいところです。
「がんばっているね」「すごいと思うよ」「素晴らしいね」といった声かけが、これからも続けていこうという意欲につながるでしょう。
●ステージに応じた働きかけを
行動が変容していくには、5つのステージを経ていきます。
それぞれのステージについて理解すると、今いるステージでは何が必要で、どういう気持ちになりやすいのかが想像しやすいでしょう。
「変化できない」と誰かや自分を責めるのではなく、それぞれのステージに応じた働きかけをしてみてくださいませ。