自分を好きになるための心理学 〜自己評価とネガティビティバイアス〜

自分を好きになるには、ネガティビティバイアスの影響を理解しながら「自分とつながる必要がある」のです。

カウンセリングの現場では、「なかなか自分を好きになれない」といったお声を伺うことって少なくありません。
実は、自分を好きになるには、ネガティビティバイアスの影響を理解しながら「自分とつながる必要がある」のです。
今回の講座では自分を好きになるをテーマに、まずネガティビティバイアスの影響についてお伝えしていきます。

さて、今回の4回シリーズ講座のテーマは「自分を好きになる」です。

カウンセリングの現場では、「なかなか自分を好きになれないんです」「自分をよい存在と思えないんです」というお声を伺うことって少なくないんですよね。

この「自分を好きになれないこと」が、恋愛やお仕事、結婚生活の中での問題などを引き起こすこともあるようです。

また、自分を好きでいられないことによってつらい気持ちを感じたり、生きづらさを感じることも有り得る話なんですよね。

頭では「自分を好きになりたい」と思ってる。

だから、自分をたくさん褒めたり、ねぎらったり、自分の良いところを見つめたり・・・そんなチャレンジをしてきた。

でも、自分のことが好きになれないというわけです。

ではなぜそんな事が起きるのでしょうか。

今回のシリーズ講座では「自分を好きになれないというお悩み」が「あれ?私、自分のことを好きになれるかも?」まで持っていければいいなという願いを込めて執筆していきたいと思います。

◯自己評価とネガティビティバイアス

心理学には「ネガティビティバイアス」と呼ばれる用語があります。

「ネガティビティバイアス」とは、人はポジティブな情報よりも、ネガティブな情報に注意を向けやすく、記憶にも残りやすい性質を持つ、という意味なんですね。

このネガティビティバイアスは、他者の印象形成や、自己の性格評価、また、自己の意思決定などさまざまな情報処理の過程で起きることが実験で確認されているものなんです。

つまり、人間はどうしても「ネガティブな情報に意識を取られやすいよ」ってことなんですよ。

これは自己評価などにも影響します。

例えば、個人の過去の記憶でも、幸せな経験よりは、辛い経験のほうが鮮明に記憶される傾向があるわけです。

なので、失敗した経験、傷ついた経験、誰かを傷つけた経験、愛されなかった経験、自分を良い存在だと思えなかった経験などをすると、それを忘れてしまう人もいるでしょうが、一般的にはそのネガティブな体験とそれに伴う観念が記憶としても残りやすくなるんですよね。

例えば、以前、大好きだった人をひどく傷つけてしまった経験がある人がいる、としましょう。

その人が「もう昔みたいに大好きな人を傷つけることはやめよう」と思うことは、その人の学びであり、成長の証なんだと思うんです。

ただ、「自分は大好きだった人を傷つけた」という記憶はやはり残りやすいのです。

その結果、今自分が人を大切にしていても、どこかで自分を否定的に捉えていたり、自分のことを良くない存在だと漠然と捉えていることも少なくないんです。

だから、例えば、いま大切にしているパートナーがいたとして、そのパートナーから「いつも大切にしてくれてありがとう」と感謝されたとしても、その言葉を素直に受け入れることができない人もる、ということなんです。

「自分は未熟で、確かに今はパートナーを大切にしているけれど、かつては大切な人を傷つけるような存在だったわけで、そんな自分が素晴らしいなんて評価は受け取れないよ」

といったふうに認識してしまうこともあるようですよ。

これは遠慮しているのではなく、「過去の体験によって自己評価が悪いままとなっている状態」と見ることができます。

もう少し突っ込んで言うならば「過去の記憶を根拠にずっと自分を良くない存在だと半ば無意識的に判断し続けている」とも言えます。

更に突っ込んだ書き方をすれば

「過去の記憶やその体験、自分自身の感情などを実は未だ受け入れることができずにいる。なので、過去の記憶から生じる自己評価を変えられずにいる」

ということもできると思います。

◯過去の体験を受容できないときに生じる観念が自己評価を下げる原因にもなる

また、私達が過去の体験を受け入れられずにいるとき、自分の内面で「これが正しい」と感じている観念が存在していることも少なくないんですね。

例えば、先程の例で言いますと「自分は過去に大切な人を傷つけるようなことをした」と思い、深く後悔したとき。

「だから自分はもう二度と大切な人を傷つけてはならない」という正しさを持つことがあるんです。

もちろんこの正しさ自体は悪くないんですよ。

ただ、この「もう二度と大切な人を傷つけてはならない」という観念は、何処かで今後も自分を責める理由になることがあるのです。

人間完璧ではありません。二度と大切な人を傷つけないようにしようという思いは素晴らしいにしても、悪意なく傷つけてしまうことはやはりありえるわけですよ。

そして、もし、こちらに悪意はなくとも大切な人を傷つけてしまったとき、この正しさは自分を強く責める理由になり得る、ということはおわかりいただけるのではないかと思います。

「悪意はないにせよ、また自分は大切な人を傷つけてしまった・・・」

自分の中に「大切な人を傷つけたくない」という思いがあったとしても、実際に大切な人を傷つけたという現実を前にして、またひどく自分を責め続けてしまう。

そんな自分をなかなか好きになることって難しいのかもしれませんよね。

この例以外にも、私はまた同じ失敗をした、また親にひどい言葉を伝えてしまった、また仕事をやめてしまった、などなど様々な事例の中で、「強く自分を責める理由」を持ってしまうことも有り得る話です。

これは、どうしても記憶として残りやすい「過去の記憶やその体験」と、そこに伴う自分自身の感情などを受け入れることができずにいることで生じる問題、と見ることができます。

言い換えるならば、「その自分自身とつながることができていない状態」なのです。

そうなんです。

実は自分を好きになるには、「まず自分とつながる必要がある」のです。

ここでの自分とつながるとは、「自分自身と向き合い、自分自身の感情や自分のあり方を受容する」と言い換えることができます。

この自分とのつながりがうまくいかないとき、僕達はなかなか自分を好きになることができなくなるようなんですね。

(続)

 

心理学講座4回シリーズ/同シリーズ記事はこちら
  1. 自分を好きになるための心理学 〜自己評価とネガティビティバイアス〜
  2. 自分の気持ちを大切にすることの意味 〜他人の価値観で自分を責めすぎていませんか?〜
  3. 自分の中の願いを見つめる 〜本当のあなたが願うことはなんですか?〜
  4. 自分を好きになるとは「自分とつながること」
この記事を書いたカウンセラー

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年間400件以上の面談カウンセリングを行う実践派。「男女関係向上・男性心理分析」「自信・自己価値向上」に独特の強みをもち、ビジネス・ライフワーク発見なども対応。明快・明晰かつ、ユーモアと温かさを忘れない屈託のないカウンセリングは「一度利用するとクセになる」と評され、お客様の笑顔が絶えない。