嫉妬ではなく賞賛を

先日、ある作家さんがインタビューに答えている古い記事を読みました。
「注目を浴びている新人作家さんをどう思うか?」
というインタビューに対して
「人の成功を素直に喜べるほど人間できていませんので、失敗しろって思っちゃいます(笑)」
ユーモアを交えて答えていらっしゃいました。

「多くのファンや、お金も得ただろうに。富と名声を得て成功しているように思える先生も、嫉妬とかするんだ」
と、僕は親しみと好感を感じたのです。

しかしながら、この嫉妬という感情は、組織やチームなどで成果を出したり、成功を収める際に、抵抗やマイナスに作用してしまうことがあります。

たとえば、チームのメンバーが何か成果をあげたとき
「先を越されて悔しい」と感じたり、「いけすかない奴」と嫌悪感を感じて、邪魔をしたくなったり、嫌味や意地悪といった攻撃というネガティブな方向に意識やエネルギーが向いてしまうことがあるからです。

嫉妬とは、「欲しいものが、自分には無いのに他者には有る」と感じた時に感じる感情です。

「出世が欲しいのに、自分には出世は無いが、同期の誰々は出世が有る」
「お金が欲しいのに、自分にはお金は無いが、お隣さんはお金が有る」
「魅力的でありたいのに、自分よりあの人の方が魅力が有る」

欲しいものが「自分に無い」と「他者に有る」の比較により、嫉妬を感じてしまうのです。

もし仮に、欲しいものをすでに持っていたり、自分にも手に入ると分かっていたらどうでしょう?

「同期の誰々が出世をし、自分も出世をする」
「お隣さんはお金持ち、自分も十分にお金が振り込まれる」
「あの人は魅力的だし、自分には自分の魅力がある」
など、「自分にも有る」と思っていれば、嫉妬することはありません。

「自分より先に出世したあいつに嫉妬する」というのであれば、それは「出世」というものより「順番」を第一に欲しているからではないでしょうか。
「有る」「無し」も大切ですが、「欲しいもの」というのも大事な要素になります。

嫉妬をする側があるということは、嫉妬される側もあります。
では、嫉妬される側の気持ちについても、あくまで一例ですが紹介したいと思います。

以前、責任感が強く生真面目なのに劣等感が強く自己評価の低い男性がいました。

自己評価の低さと「迷惑をかけてはいけない」との思いから人一倍頑張り、嫌われまいと自身の嫌な部分を隠して隙や気持ちを見せないものですから、周りから一目置かれるのと同時に「どこか、いけすかない奴」と反感も買いやすい所もありました。

その男性は、認められたい一心で頑張り、成果も上げるのですが「いくら頑張っても認められない」「感謝されずに妬まれる」「孤独で寂しい」「周りの皆が羨ましい」と感じて、良い成果を出したとしても満たされない気持ちを抱えていました。

そして、成果を出して周りから賞賛されている仲間を見て、ついポロリと「うらやましい」と漏らしたことで、その仲間から「あなたに嫉妬して、負けじと頑張ってきました!」とドヤ顔で気持ちを打ち明けられたことで、周りから嫉妬されていたことに気付けたのです。

嫉妬という感情は、ネガティブな側面だけでなく、やる気、モチベーションに繋がるというポジティブな側面もあります。

ただ、嫉妬する側にも、される側にも、立場や状況は違えど、共に満たされない気持ちがあるようです。

嫉妬する気持ちが辛いと感じることもありますが、それは「自分に無い」に強く意識が向いているからです。
そんな時は、「有る」にもっと意識を向けて、「すごい」「素敵」「羨ましい」と賞賛を送るようにしてください。

人は、「無い」や「ネガティブ」にどうしても意識が向きやす生き物です。
だからこそ「有る」や「ポジティブ」といったものに意識を向ける練習が必要です。
そして見つけたポジティブを褒める。賞賛を送るという形で相手に伝えることです。

あなたが他者が持っているポジティブな部分を見て、それを伝えることで、相手もあなたが持っているポジティブな部分を見やすくなります。
何より他者のポジティブに意識を向けていくことで、ポジティブにアンテナが張られるので自分自身のポジティブにも気付くようになっていきますので、その際は自分自身にも賞賛を送ってください。

他者に賞賛を送ることで、相手からも労いや感謝が生まれます。
ポジティブにアンテナを張り、自分自身に賞賛を送れるようになれば、嫉妬という感情を感じにくくなります。

嫉妬とは、称賛する気持ちの裏返しです。
気持ちを裏返すことなく、嫉妬の裏に隠れた気持ちに意識を向けて素直に伝える。
できることから始めてみませんか。

嫉妬を手放して、承認、賞賛、労い、感謝の循環を作るためのヒントになれましたら幸いです。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

我慢や犠牲的な生き方、依存的な恋愛、生きづらさを乗り越え、独立開業やカウンセラーになる夢を叶える。ユーモアに富んだ表現で心理学をわかりやすく伝え、クライアントの魅力や可能性を見続けて、クライアントと一緒に「その人らしく」「楽になる方法」を考えるスタイルに好評を得ている。