お子さんと、初めて手をつないだときのことを、覚えていますか?
こどもの小さくて柔らかい手のぬくもり。こどもの「ママ、パパ、大好き」と、キラキラしたまなざしとともに、差し出される手。親が手を伸ばすと、こどもはうれしそうな笑顔で握り返してくれます。親子ともに、「言葉にはならないほどの愛しさと喜びが溢れてくる瞬間」と、思い出す方も多いのではではないでしょうか。
かけがえのない思い出
まだ我が家のこどもが1歳半だった頃。こどもは大好きな児童館のおもちゃに夢中です。そしてしばらくすると、こどもは次の場所に行きたくなります。すくっと立ち上がったこどもは、私の手を握ってきます。こどものうれしさいっぱいの笑顔とともに。私はこどもに
「次はどこに行こうか。一緒に歩いて行こうね」
と、話しかけたのを昨日のように思い出します。あのときのこどもの手のぬくもりは、私のかけがえのない思い出です。
どれだけ支えられたかを、本当に理解する日
小さなこどもの手から、私はいったいどれほど安心をもらっていたのでしょう。子育ては、大変なときもありました。でも、こどもの手に支えられて、一歩一歩ともに歩いてきました。
そして、それがどれほど貴重だったか。本当に理解したのは、わが子が成長し手を繋がなくなってからでした。
・15年の逆転
こどもが中学生になり、「親と顔すら合わせたくない」と思っているだろう日が、日に日に増えていきたようでした。私が挨拶しても、こどもは何も言わずに背を向ける。「そうだよね。あなたもついに、大人の入り口に立った。成長しているのだよね」と、自分に言い聞かせたものです。
そうして迎えたこどもの高校合格発表。やっと、おだやかな顔をする時間も増えたこどもと私は、合格祝いのランチに行きました。その帰り道のことです。こどもは、私に手を伸ばしてきて、言いました。
「今日だけね」
と。こどもは少し照れくさそうです。私はうれしさいっぱいの笑顔で、こどもの手を握りました。
立場が、逆転したなぁ。
でも、変わらず今も昔も言葉にはならないほどの愛しさと喜びが溢れてきました。
・戻りたくても戻れない、奇跡のような日々
当たり前ですが、こどもの手は幼かったときより、ずいぶん大きくなっていました。大人の手です。初めてつないだ手とは、全然違います。でも、その手の温もりは変わらずに、たしかに私の手の中にありました。
あっという間に過ぎ去る、子育ての日々。その中で、親子が毎日のように手をつなげる時間はほんのわずか10年ほどしかありません。短いようで長いようで、でも気がつけば一瞬でした。戻りたくても戻れない、奇跡のような日々だったのです。
過去の私へ、そして今のあなたへ
過去の私に、そして今、子育て真っ最中のあなたに、伝えたいことがあります。
大変な日々も、うまくいかない日々も、きっとありますよね。「思い描いていたほど、自分はいい親じゃない」と、悩む日もあるかもしれません。それでも、こどもの「ママ・パパ大好き」というまなざしと、小さな手のぬくもりに、親はいったいどれほど救われ、幸せをもらうのでしょう。実は、未来の自分が、誰よりも受け取るのだと思います。
いつかこどもは手を離れ、自分の道を歩み始めます。私たち親の記憶の中に、光り輝くかけがえのない一生の宝物として残ります。
なによりも、親もしんどいとき、辛いときは、しっかり休んでいいのです。いろんな人の手を借りて、無理をせず!頑張っているのだから。
親と子が共に生きた証
「子育て、永遠に続くのではないか」
そんなふうに思うこと、ありませんか? 今が大変ならなおさらです。でも、こどももいつか、親の手から離れて大人になっていきます。
私もまだ子育てが終わっているわけではありません。だからこそ、今この瞬間を出し惜しみせず、精一杯楽しみたいと思います。それこそが、今この瞬間と未来の自分に、最高の幸せを届けてくれるのではないでしょうか。
たとえこどもが巣立っていったとしても、こどもと手をつないだ感覚は、永遠に私のなかで生き続けます。親と子が共に生きた証。揺るぎない絆、そのものです。
来週は、小川のりこカウンセラーです。
どうぞお楽しみに。