子育ては、時に悩ましいものです。今回は、子どもから大人になっていく時期の、子どもへの関わり方について、描いてみたいと思います。よろしくお願いします。
物理的距離が近い幼少期
子育てについて考える時、母親と子どもの物理的な距離が、日本は、とても近くて、その時期は、結構長いなと、よく思います。
母親は、子どもをおなかの中で育み、産みます。
そして、抱っこして、お世話して、とやるわけですが、とても距離が近いですよね。近いどころか、体の一部だった時期があるわけですから、くっついているといってもいいくらいです。
日本は、眠る時も、赤ちゃんと同じ部屋の人が多いんじゃないかと思いますが、添い寝をしている親子も、とても多いと思います。子ども部屋があっても、親と一緒に小学生くらいまで寝ているのも、珍しくはないと思います。
一方、海外では、モニターを置いて、見える状態にしながら、赤ちゃんの頃から、別の部屋で眠るという国もあります。そうなると、物理的な距離が、日本と比較すると遠いということになりますよね。
それが、良いわるいという話ではなくて、私たちの住む国では、親子関係は、ずいぶんしっかりとくっついた状態からスタートしているということなんです。
全部やってもらえて、ほめてもらえる時期
小さな頃は、何も出来ませんよね。1から10まで、誰かに依存して、お世話してもらって生きています。
お腹が空いたら、えーんと泣くと、ミルクを飲ませてもらえて、おむつが濡れて気持ち悪かったら、えーんと泣くと、新しいものに取り替えてもらえます。眠くなって、えーんと泣くと、抱っこして寝かしつけてもらえます。
とにかく全部、やってもらえて、もう少し大きくなってくると、できること全部、ほめてもらえたりもします。「あー」と声を出すことも、何かひと言、発するだけでも、立ち上がるだけでも、一歩踏み出すだけでも、周りにいる人たちは、ほめてくれて、喜んでくれましたよね。
こんな時期が、誰にでもあるのですが、小さいせいで、記憶にあるという方のほうが、ひょっとすると少ないかもしれません。
H2■しつけと教育のはじまり
だんだんと大きくなってくると、自分でできることが増え、言葉もわかるようになり、自分からも、何かを伝えたりできるようになってきます。自我も芽生え、自分の考えや、思いを主張するようになったりもします。
そうすると、好きなようにふるまうことを、親から止められたり、直されたり、コントロールされたりするようになります。しつけと教育です。
物事の良し悪しを教えていかなくてはいけませんから、何をやってもよかった時期と比べたら、ものすごくたくさんの禁止を言い渡されることになったりします。あれもダメ、これもダメって、感じるかもしれませんね。
それでも、思春期前、小学生くらいまでは、親の言うことを、少々うるさいなーとは思っても、まあまあ、腹も立てず、素直に聞いていたのではないかと思います。
思春期の子どもとの距離
親である私たちが、悩みに悩むのは、この思春期の子どもの扱いではないでしょうか。
私の友人の息子さんも、大人しい子どもだったのに、ある時から「はあ?」って言うようになったと、プリプリしながら教えてくれたことがあります。
何か話をした後に、「はあ?」って言われたら、カチンと来ちゃいますよね。
でも、これが、またさらなる自我の芽生えであり、子どもが意思をもって、一人立ちしようとしているところでもあります。だから、あれこれ言われることは、子どもにとっては、とても嫌なものになるのでしょうね。
大人の考え方を、批判し始めたり、反発したりするのも、思春期ならではと思います。
ご家庭によっては、激しくぶつかり合うなんてこともあるかもしれませんし、「うるせーくそばばあ」なんていうのは、反抗期の常套句ですよね。
でも、そんなふうに、ぶつかるのを避けるためだったり、腹が立つから、同じ空間に居たくなくて、子どもたちが、親から距離を取る(部屋にとじこもる、話をしない)なんてことも起こります。
親としては、うれしい言動ではありませんが、とても正常な成長の証でもあります。
子どもを大人扱いする
では、そんな子どもに対し、私たち親は、どう関わったらいいのでしょう。
「子どもを大人扱いする」
模範解答みたいになってしまいますが、これに関しては、私たち親が、自分の思春期を思い出すと、ひとまず納得できるように思います。
「勉強しなさい」「もう寝なさい」なんて、言われた時、どう思いましたか。
「うるさいな、言われなくてもわかってるし」って思いましたよね。
「友達と出かけてくる」って言ったら、「誰と行くの?どこに行くの?何時に帰るの?」と根掘り葉掘り聞かれて・・もううんざりって思いましたよね。
大人になった今だって、頭ごなしだったり、極度に心配されたり、反対されたりしたら、嫌ですよね。それも、親からだったら、なおさらうざい!ってなるんじゃないかと思います。
子どもが反抗的な態度になるのは、自分の意見に反対されていることに対して、というより、自分の意見を大切に扱ってもらえないことや、ちゃんと理解してもらえない。大人扱いしてもらえないことが、本当の理由ではないのかなと思います。
息子のお話
私の息子は、小学生の頃から、学校への行き渋りがありました。
親としては、なんとか行かせようとしていました。
学校で嫌なことや困ったことがあるなら、それを取り除こう。
歩いていかないなら、車で送って行こう。
宿題も減らしてもらおう。
今思えば、どれも、あまり効果がありませんでした。
そして、中学生になると、しっかりと不登校になりました。
そしてやっと、気づいたんですよね。
息子の言う通りにしてやってなかったなって。
「学校で嫌なことがあるの?」って聞いたから、なんとなく答えただけで、それが正解ではなかったのかもしれない。「学校行きたくない」のは、歩きたくないんじゃなくて、車でだって行きたくなかったんですよね。宿題が嫌だろうって思ったのは私で、本人は、不得意な部分があって、困っていたんです。
息子が、中学生になったから、自分のことをだんだん理解できたこともあったと思いますが、だましだましができなくなったのでした。
もうそうなったら、息子の意見をちゃんと聞くしか、道はありません。
ここに来てやっと、息子を大人扱いするということをやり始めたんです。
もちろん、大人じゃないので、びっくりするようなことも言います。でも、それを頭ごなしに否定したり、反対したりせず、受け止めました。そして、どうするといいか一緒に考えるようにしました。
そしたら、どうなったか。
息子は、元気になったんです。とても。
そして、自分に合ったやり方で、また学校へ行くようになりました。
息子の中で起こっていることを、親である私たちが、大切に扱おうとすることで、状況は変わっていきました。全肯定することが、人を元気にするのを、目の当たりにしました。
子どもから、大人への道は、ゆるやかで、長いです。
傍で見ていると、気を揉みますが、大人扱いする、大切にしてあげることが、彼らの力になるようですよ。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
お役に立つことがあれば、嬉しいです。
来週金曜日は、いしだちさカウンセラーがお送りします。
どうぞお楽しみに。