人から期待されるのがつらい

期待に振り回されて自分の気持ちがわからなくなっていませんか?

一般的に人から期待されるのはいい意味が多いもの。けれど、「期待される」と苦しくなっているとしたら。期待されていると敏感に感じ取ったり、期待に応えないと大変なことが起こると感じているのかもしれません。期待の心理を理解して、少しだけ期待の受けとめ方を軽くしていきましょう。

「人の期待に振り回されてしまう自分が嫌」と思っていませんか? 自分の気持ちを後回しにして、我慢をしていませんか? 人の期待を優先してばかりいると、人と会うと疲れてしまったり、人付き合いが面倒になったり、優しくなれないと自己嫌悪したりしやすくなります。

今回は、期待に関する心理を解説していきます。

●期待が苦しいのは

「期待」は、人があなたに対して何かを「してほしい」「こうなればいいのに」と願うことです。

人からの期待と自分がしたいことの方向性が一緒なら、何も苦になりません。むしろ、自分が望むことで相手を満足させられているなどと感じ、充実感を持つでしょう。

しかし、人からの期待と自分がしたいことの方向性が異なっていて、自分が犠牲や我慢をしてでも「期待に応えなければならない」と思っていると苦痛を感じます。また、能力以上の成果を「期待されている」と思うと、大きなプレッシャーにもなるでしょう。

この状態でしばらくがんばって、がんばりの限界を迎えると、期待してくる相手への怒りになることがあります。不自由さを感じて「期待を自分に押し付けないでほしい」と反発したくなるとか、「私の気持ちも知らないで」といった不満が噴出しやすくなってきます。

「人の思い通りに振り回されるのは嫌」「これ以上自分の気持ちを我慢したくない」など、いろんな思いが渦巻いてモヤモヤした気持ちになったりもするでしょう。そして、そんな風にモヤモヤしている自分に対して「このままではいけない」と思う人も少なくありません。心のどこかに「本当は期待に応えて相手を喜ばせたい」という思いがあるから、期待に関して悩まれるのかもしれませんね。

●期待に敏感

期待を重く感じる時に、「人からの期待に敏感になり過ぎていないか?」をチェックしてみてくださいね。

例えば、「またご飯に行こうね」と言われて、「また盛り上がる食事会をしなければならない」と思っていないでしょうか。相手が何の期待もなく社交辞令で言ったことでも、「期待されている」「ちゃんとしなきゃ」と感じるとしたら、自分の感じ方を軽くしていくといいようです。

これにはまず、誰かの期待に応えようとがんばってきた自分を認めていく必要があります。もしかしたら、思い通りにならないと怒る人がいたから、期待に応えようとがんばる癖ができたのかもしれません。期待に応えてたら、認めてもらえる・褒めてもらえる・愛してもらえると思って、けなげにがんばってきたのかもしれません。辛そうにしている人がいて、少しでも喜ばせたいと思ってがんばり続けてきたのかもしれません。

理由は様々でも、「相手はこれを望んでいるのではないか」と自分なりに考えて、一生懸命に期待に応えようとしたあなたがいたのではないでしょうか。まずはその自分を「今までよくがんばったね」と認めてあげてはいかがでしょうか。

自分のがんばりを認めると、「応える」「応えない」を選んでいいと思いやすくなるでしょう。

●期待と結びついた怖れ

次に、何らかの理由で、人の言葉が「応えなければならない期待」に聞こえやすくなっていないかを考えてみましょう。

例えば、3人の人が同じタイミングで上司から指示をされたとします。Aさんは「やり遂げて成果を出したい」と思い、Bさんは「できるだけがんばってみよう」と思い、Cさんは「これができなければ自分はここにいられない」と思ったとしましょう。Cさんの生き方は、自分を苦しくしやすいと想像できるでしょう。

かつては「期待に応えられなかったら大変なことが起こる」環境だったのかもしれません。けれど、今「これができなければ自分はここにいられない」とまで思い詰めなければならない状況でしょうか。期待と怖れを結びつけていないかも、チェックしてみてくださいね。

●期待の奥にある思い

期待には2種類あって、ひとつは、あなたが期待に応えると、期待した人の利益になるものです。時にはわがままな要求が含まれることもあります。これは、「応える」「応えない」をあなたが選んでいいでしょう。

もうひとつは、期待する経験や成果がいいものと信じていて、それらをあなたにも手に入れてほしいと願うタイプの期待です。親から子への期待として、学歴や就職や結婚や出産・子育ての期待で現れる場合もあります。親たちにとっての最良と子供たち世代の価値観が異なるので、ケンカの種になることもしばしばです。

ここで大切なのは、親の立場からすると「自分にとって最良だと思うことを子供に与えたい」という思いがあることです。親にその思いがあると認めることができると、「親が望むのは私の幸せ」ということが腑に落ちやすくなり、親の期待とは違う形で自分が幸せになっていいと思いやすくなるでしょう。

期待の奥にある思いを感じ取って、人は私を「苦しめたい」のではなく、「愛したいのかも」と思ってみてはいかがでしょうか。

(完)

この記事を書いたカウンセラー

About Author

自己嫌悪セラピスト。心理学ワークショップ講師(東京・仙台) 「自分が嫌い」「自分はダメ」「私は愛されない」などの自己否定、ネガティブな感情・思考をリニューアルし、自信や才能・希望へと変換していく職人。生きづらい人の心が楽になる気づきや癒しを提供。テレビ・Web記事の取材にも多数協力。