「嫌われた」と誤解せず、相手の本音を知り、関係修復に役立つ言葉の届け方をお伝えします。
自分は毒であるという観念があるタイプの彼(彼女)との恋愛の処方箋をお届けします。
■「自分は毒だ」という観念とは?心の中の思い込みが与える影響
私たちの観念の1つとして、「自分は毒である」という観念があります。
観念とは、すべての人が持っている「思考のとらわれ」のことです。
例えば……
・自分は〇〇な存在である。
・男性は〇〇という行動をとるものだ。
・女性は〇〇という行動をとるものだ。
・結婚は〇〇あるべきだ。
・家族は〇〇あるべきだ。
・社会人は〇〇すべきである。
こうした「思考のとらわれ」を、私たちは無数に持っていて、物の見方・捉え方・感じ方・発想の仕方に影響を与えます。
「自分は毒である」という観念がある人は、
自分という毒の存在が、愛する人に害を与えてしまうという物の見方・捉え方・感じ方・発想の仕方をしてしまいがちです。
罪悪感、自己嫌悪、無価値感がある方は、この観念を持ちやすいようです。
■なぜ愛する人から距離を取ってしまうのか?観念が生む別れのロジック
「自分は毒である」という観念を持つ人は、下記のような発想をしてしまうことがあります。
・自分は毒のように害を与える存在である
↓
・毒のような存在の自分は、愛する人に害を与えてしまう(与えている)
↓
・愛する人に害を与えたくない
↓
・愛する人に害を与えないように、距離をとろう
(関わることへの遠慮という場合の距離の取り方もあれば、別れるということで距離を取る場合もあります)
というような発想の仕方をしてしまうことがあります。
■別れの背景にある心理とは?A子さんとBさんのストーリーから読み解く
例を使って説明してみましょう。
とある女性、A子さんは、Bさんという彼氏と付き合っていました。
Bさんは、経営に関する重要なポジションを担う人で、ハードワーカー気味の方でした。
ただでさえハードワーカーなのですが、会社の経営が芳しくなくなり、
会社を立て直すために、Bさんのハードワークに拍車がかかるようになりました。
A子さんと会える日は、月に一度くらいになっていきました。
その月に一度も、ドタキャンになることもあります。
また、デート中に突然仕事の電話が入り、途中で切り上げてしまうこともしばしば。
A子さんは、しゅんとしながらも「仕方ないよね……」とけなげに送り出します。
それが何度も続いたある日、彼からメールが届きます。
「僕じゃないほうが君は幸せになれると思う。別れよう」
突然の別れのメッセージに、A子さんは呆然としてしまいました。
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実は、Bさんは「自分は毒である」という観念を持っていたのです。
そのBさんの発想、行動は……
・自分は毒のように害を与える存在である
↓
・A子さんを幸せにできていない。それどころか、辛い思いをさせてしまっている
↓
・A子さんに、これ以上辛い思いをさせてはいけない
↓
・これ以上、辛い思いをさせないように別れたほうが、A子さんのためになる
↓
・「僕じゃないほうが君は幸せになれると思う。別れよう」のメールを送信
という発想のもと、メールをしていたわけです。
■「嫌われたわけじゃない」──距離を取る愛し方を知る
このように、「自分は毒である」という観念を持っている人は、
愛する人に害を与えないように、距離をとろうとします。
それは、嫌いになったから距離を取ろうとしているわけではありません。
愛する人に害を与えないようにしよう(これ以上傷つけないようにしよう、
これ以上辛い思いをさせないようにしよう)とする、
このタイプの人なりの「愛し方」なのです。
この場合、A子さんの立場になった方が気をつけたいことは、
「自分が嫌われたんだ」と解釈しないことです。
そう解釈してしまうと、彼からの別れの提案をすんなり受け入れてしまうかもしれません。
■相手の“本音”に気づけたら、別れは回避できるかもしれない
「自分が嫌われたんだ」と解釈しなければ、
「急にこんなことを言い出すなんて、彼に何かあったの?」という発想も出てくるでしょう。
自分の至らなさが原因で言い出したわけではない、という発想です。
そう思えると、別れを受け入れずに、
急に距離を取ろうとする彼に、「一度会って話そうよ」と事情を聞き出そうとする行動を取れるかもしれません。
もし、話し合いの場を設けることができたとしたら、
大切なポイントは、パートナーに「辛い思いをさせている」という印象を与えないことです。
「自分は毒である」という観念を持っている人は、
愛する人に害を与えないように距離を取ろうとします。
ですから、話し合いの際に、「パートナーを傷つけている」「辛い思いをさせている」
という印象を持つと、ますます距離を取ろうという心理を強化してしまいます。
とはいえ、突然の距離を取る話(例えば別れ話)が出ると、心はショックを受けると思います。
また、今までの出来事(たとえば、A子さんの例で言うと、会えない日が続くなど)で、
心は疲れていたり、つらい思いが蓄積していることもあるでしょう。
頭では「辛い気持ちを出さないほうがいい」とわかっていても、
涙が出てしまうことや、言葉に感情がにじんでしまうこともあるでしょう。
実際に、話し合いでは感情的になってしまった、泣いてしまったというお話もお聞きします。
理屈では、「辛い思いをさせている印象を与えないこと」が大切だとわかっていても、
心はやっぱり、つらいものはつらいと思うのです。
ついつい辛い心情が言葉に出てしまったり、涙がこぼれてしまう・・・
そんなお気持ちも、よくわかります。
ですので、話し合いに臨む前に、自分のケアをすることも大切です。
ショックを受けた思いや、心に蓄積している辛さを誰かに話して、感情を解放しておくのです。
感情を解放することで、心は回復していきますから。
そうして、楽になった心で話し合いに臨むほうが、より良い結果につながりやすいでしょう。
■彼の観念に働きかける言葉とは?「毒じゃない」と伝えるメッセージ例
「自分は毒である」という観念を持っている人は、
愛する人に害を与えないように距離をとろうという発想をしているわけです。
だからこそ、その観念を打ち消してあげる言葉が、鍵になります。
たとえば、A子さんのシチュエーションだったら……
「会える時間は少ないけど、それでも私はあなたといられて幸せよ。
限られた時間でも、私に会おうとしてくれていて大切に思ってくれていることが伝わってくる。
私はこれからも、あなたと一緒にパートナーシップを築いていきたいの」
このように、
「あなたは私を害する人ではなく、良いものを与えてくれている人ですよ」
というメッセージを送ってあげることが大切なのです。
そうすることで、相手の“距離を取ろうとする”考え方や行動を、変えることができる場合があります。
「ああ、別に離れなくてもいいんだな!」と。
もちろん、1回の言葉で気持ちが変わるとは限りません。
気持ちの変化には時間がかかることもありますし、何度も話し合いが必要なこともあるでしょう。
その場合は、あなたの心に負担がかかるかもしれません。
その負担は、一人で抱え込まずに、誰かに話を聞いてもらいながら、心のケアをしつつ、関係の修復に取り組まれてくださいね。
(続)
- なぜ彼は突然別れを告げたのか?:自分は毒だと思う彼への処方箋
- これだけしてるのにと怒る彼に冷めていく私〜悪循環を断ち切る処方箋〜