今日は、中国何千年の歴史の中から受け継がれ、語り伝えられてる古典の中か
ら、心理学や感情にまつわるお話をします。
中国古典と言えば、学校の漢文の時間で習ったような、とっつきにくいイメー
ジを持つ方もいるかもしれませんが
本屋さんにいくと、平易な現代語訳の書籍・解説本がいっぱいありますので、
いざ、お読みになるとなれば、そんなに抵抗感はないと思います。
土地・株が値上がりしたバブルの頃には、時流に乗らず、浮利追わざるべしと
決めた人達の間で、大ブームでした。老子・論語・荘子・菜根譚(さいこんた
ん)・荀子などいろいろ。その中で、今回ご紹介するのは「孫子」です。
では、孫子と彼が書いた兵法書、そして、時代背景について簡単にご紹介しま
す。
紀元前6世紀頃の中国には、大小120の国があり、その中でも有力な12ヶ
国に肩を並べるように、呉の国が台頭します。
この呉の王として紀元前515〜496年に在位した、コウリョ(常用外漢字
のため、パソコンで変換出来ませんでした。あしからず。)に仕えた軍事専門
家がいました。
その名を孫武(そんぶ)と言います。子(し)は先生を表すので、孫武先生の
通称が孫子(そんし)と呼ばれたようです。
また、彼がまとめた兵法書そのものを孫子と呼ぶこともあります。今から、お
よそ2500年前に書かれたとされ、内容にして13編392文、文字数約6
000、400字詰め原稿用紙で15〜16枚くらいの量です。
古くは、日本の戦国武将やナポレオンも愛読したと言われます。また、ベトナ
ム戦争の長期化で、人心・経済ともに疲弊したアメリカが、その後の軍の建て
直しや、争いが起きた時の早期終結を目指す参考書として活用しました。
1991年の湾岸戦争などは、その一例です。現在では、主要国の軍隊で、欠
くべからざる教材として、採用されてます。
戦史的な事例の引用は皆無に近く、抽象的ながらも簡潔明瞭な論考をとってま
す。作戦・戦略の立て方・進め方、そして、その中での対人関係にも触れてる
ので、幅広い解釈ができ、あらゆるシーンに応用できます。
したがって、人間性・ヒューマニズムを無視して、役目オンリーに、徹底的に
シビアにと言う訳でもありません。携わるのは人だから、情や心、感情を無視
することはできない点を踏まえた上で書かれてます。
よって、軍事関係者以外の方にも愛読者層が幅広い書物です。特に、ビジネス
リーダーの方に多いです。書にある「将軍」や「兵」を、お勤め先の「上司」
「部下」に読み換えて、解釈ができるからです。
管理職の方や、経営者の方の会合の研修題材に使われることもありますし、一
般の方にもファンがたくさんいらっしゃる書物とお考えください。
さて、孫子には何らかの形でお聞きになる名言が、いくつかあります。
そして、僕達カウンセラーがお客様に、問題解決のための入り口として、前提
として御提案することが
何千年もの時空を超え、現代にも通じるところがあるなんて、驚きを禁じえな
いと同時に、彼の洞察力の広さと深さに、ただただ感心するような、おなじみ
の一文を今日は御紹介します。
☆彼(か)を知り己(おのれ)を知らば百戦殆(あや)うからず。
*彼を(かれ)と読む本もありますが、正確には(か)です。
彼・・・自分以外の対象、他人、他者、相手。
百戦・・・百は多くの、たくさんの、の意。日常生活に置き換えると「あらゆ
るシチュエーション」。
殆・・・危。あぶない。
意訳すると
☆相手のことを知り、自分のことがよくわかれば、日々の暮らしの中での、あ
らゆるシチュエーションで、まあ、なんとかやっていけますよ。
僕達カウンセラーが問題解決の前提として御提案し、おすすめするのは、まず
自分のことを知る、自分を見つめていく、です。
御自身が考えてることは何か、とか。その前提になるのは、自らの考え方や行
動を決定付けていくもとになるものがあります。それは「感情」です。
いろんな御相談を伺っていくうちに、ハウツーや一気に解決する方法を教えて
ください、ってお声もよく聞きます。わかります。それくらい辛い思いをされ
てきたんじゃないでしょうか。
ただ、このように考えていただいてみてはいかがでしょう?感情がベースにな
って、それが人の行動や思い、考え方を左右するのであれば、その「感情」に
着目してみてはどうですか?と。
ネガティブなものがこみ上げることもあるでしょう。しかし、それとは逆に、
楽しいワクワクするようなものを感じることもあると思います。
自分のことを知る、見つめる、イコール、自分が感じてる感情を感じてみる事
だと、カウンセラー的視点では解釈します。
そんなのあんたがこじつけて解釈してるだけやろ?ええ、たしかにそうかもし
れませんね。でも抽象的な故に、いろんな解釈ができるのが、中国古典の面白
さで魅力だと僕、向井は思います。
相手を知ることも大切ですが、その相手にどう対応できる御自身でいらっしゃ
るかは、もっと大切なことだと思います。
「己を知り彼を知らば百戦殆うからず。」と読みかえてもいいほどで。
齢を重ねられると、感情に目を向けたり、表出することが、年齢不相応に感じ
たり、世間体にかかわることのように思えたりして、知らず知らずのうちに抑
圧したり、処理しようとするうちに
御自身が感じてることがわかりにくくなることも、あるかもしれません。
しかし、人の行動や考え方の規範になるものだとすれば、「感情」に着目し、
「感じていける」ようになることをおすすめします。
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