私信〜お世話になった皆様へ〜

拝啓
この季節、凛とした厳しい空気の中、夕焼けの美しさが一層増すようになってきますね。
‘心が洗われる’とは昔の人はよく言ったものですね。
私が企業を卒業する決心をしたのは、昨年のまだ紅葉の美しい季節だったかと思います。
突然の退職に驚かれた方もたくさんにいらっしゃったようです。
1年が過ぎ、心も整理され、やっと皆様にお伝えしたかった事が出てきました。
人との別れであれ、何であれ、後になって分かることってたくさんあるものですね。
出社最後の日にあったのは‘もういいんだな…’という安堵感でした。


直接的な原因は物理的に会社にいけなくなった日があった事。数週間、眠れない日が続いた後ある朝足が物理的に進まなくなりました。
体というのはある意味、心より正直な事もあるのかもしれません。
ぜんまいがとまってしまったみたいだなぁ、と玄関先で足をぶらぶらさせながらぼんやりと考える事、数分。
あぁ、また無理をしすぎたかな。
さすがに今回という今回は、診断書を貰ったほうがいいらしい…
やっとそう思えたのは、‘休みます’と会社に連絡をいれ、友人に状況をメールで送った後でした。
何かあると、「飲みに行きましょう」とのべつまくなくお誘いをし、ビル地下の喫煙コーナーではとにかくお話をすることを楽しんでいたような私をご存知で居てくださる方は随分と心配をしてくださった方もいるとお伺いしています。
今になってお伝えしたいたこと、
お手紙で失礼かもしれませんがお伝えしますね。
最後の上司の方へ
私ができなかった事は、あなたをもっと信頼する事であったようです。目標とするゴールが違っていた、とは今も思っていません。当時は、私自身が助けを必要とする状況であったのでしょうが、人間辛さがある一定を上回ると頑固になり不信感が募る生き物のようですね。うまく助けを求める事ができなかった事、お許しもらえると嬉しいです。
最後の同僚へ
あなたへは今も答えが出ない気がしています。能力や経験、性別ももちろんですが正反対であったあなたが何を感じて、私を攻撃していたのか、もしくは私が攻撃されていると勝手に感じてしまったのか、何を見ていらしゃったのでしょうか?分かるのは元には‘嫉妬’があったのか、と思うところです。
ですが、もしこのお手紙を読んでくださっていたのであれば、理解していただきたい事があります。私もあなたに嫉妬があったんです。役職がない私のほうが、少し分が悪いじゃない?とは私が思ってもイイのかしら、とは思うのですがね。当然、どんな風にあなたに見えたとしても私も人の子、権威を持つ方のの言う事は聞かねばならぬ…という抑圧は持っていますから反応していないわけではなかったんですけどね。
ただ、発見が一つありました。幼少の頃の姉との葛藤に良く似ていた、という事です。火彼女との、繋がりあえない痛みを再現していたのでしょうか。
ただ、一番悲しかった事は、入社したばかりの子達に私たちの葛藤で混乱を招く事も少なからずあったという事です。結局は私が‘居なくなる’という後味の悪い結果を残してしまいました。これはある意味‘リベンジ’かもしれません。きっと、共存する道はあったのでしょうけど、探せなかった事だけは後悔しています。
会社の中で天国に行ってしまった後輩へ
ちょっと長めの会議が終わり、研修生たちと自分のオフィスに帰るエレベーターの中、「ねえ、今日上の階のスタッフが亡くなったらしいよ。」と聞き、まさかと思いながら名前を尋ねてみたらあなたの名前でした。何かの間違いじゃないの?だって、一昨日コンビニでまた飲みにいこうねって話をしたのよと詰め寄る私にオフィスの階数と、名前を繰り返してくれる他チームの管理職。一瞬さすがに天井が揺れたような気がしました。
2年後輩のあなたは、事あるたびに「うえにしさ〜ん!」となついてくれましたよね。あなたがたくさんの同僚や先輩から愛されていた事、あなた自身よりも周囲のほうが分かっていたかもしれません。
お葬式の日、まさか全国から管理職たちが飛行機や新幹線を使って駆けつけあなたが大切にしていたお得意先の皆様が参列するなんて、想像もしていなかったのはきっとあなた本人くらいですよ。
会社が好きで、いつも夜遅くまで仕事をしていましたよね。お酒にはあまり強くなく、社員旅行では酔ってしまって顔に落書きされたり…。
あなたが亡くなった影響は、今も痛みとして皆の心の中に残っている事もあると思います。あなたの一番本意とすることではないのでしょうけど…。
当時社員代表であった、私に会社と交渉するようにアドバイスくださる方もいらっしゃいましたね。私は何もしませんでした。ただ、リスクマネジメントに関して前向きに検討してくださるようにお願いしただけです。戦う事に意味があったのか、なかったのか、選択をしなかった結果は分かりません。ただ、心が痛みすぎている管理職も含め人事の方、いわゆる‘会社’と言われる人たちに悪いところを指摘したところで構造的な問題が一気に改善するとは思えなかった事です。私の目には、彼らも危機的な状況に映ってしまったんです。
これで良かったのかな?と、自問自答も随分と減りました。
あなたが私に残してくれたものの一つは、実は今の仕事を選択する事でもあったこと、やっぱりご存じないのか、天国から見ているのか?
トラブルというのは一度表面化すると、立て続けに起こるものなのでしょうか、システムや構造や流れに歪みがあるところは出てくるものなのでしょうか、数度の全社的なトラブルで疲弊しきっていた社員の方がたくさんいらっしゃいましたね。
不思議なもので、トラブルを共に乗り越えられた場合には、ある意味大きな連帯感が生まれるようです。
ただ、個人の心を取り扱う場合と同様に、余りに疲労が過度になりすぎたような状況や、社会的に例えそれが軽微であったとしても制裁を加えられるような状況においては何か標的を内的であれ外的であれ作り、攻撃を始めてしまいます。
こういう場合には、それが内部の人たちの意見であったとしても、誰それの何が悪い…という意見はほとんどの場合は一致をみないものですね。
報道などで、企業の問題が出てくるたび、働いている方の心身の健康を思います。
何分にも私自身が、当時のトラブルの余波なんでしょうね、作業面では感情を全く感じず機械のように自分を取り扱い、当然作り上げられるものも一人で短時間に…が刷り込まれていますので温かみのないものになります。その後ぐったりと疲れ、疲労が回復しない、といった体調不良や、何事も丁寧さが欠け切り捨ててしまうといった癖を直すのに数年を要しました。
何が良くて、何が悪いのか。
システムなのか、構造なのか、人の育成なのか。
カウンセリングはそれを論じる事は原則的は出来ません。
ただ、金銭や物そのものに価値を置き、不要な戦いをしてしまう、そして痛みや罪悪感を隠しながら‘正しいのか正しくないのか’を論じ、どちらかを切り捨てなければならないような社会とは少し趣が違うかと思います。
ただ、人間の中にある自然な欲求や、原則を少しでも生き返らせたい…それが今の私の仕事です。
その中に、逆説的ですが今の社会の行き詰っている状況を打破するものがあるのかもしれない、と感じています。
今日は一日PCの前で誰ともお話していないな、
今日は一体何日なんだろうな、
今日が終わっていないのに、もう1年後の予定が詰まっているな
そんな事を感じたときに、あなたの心に「誰かの愛」や「共感してくれる誰か」が必要かもしれません。
どうぞ、いつでも私たちをお使いくださいませ。
いわゆる、物理的な援助は出来ないかもしれませんが、あなたのハートに今必要な栄養剤をお伝えする事ができるかもしれませんよ・・・。
追伸:今も皆さんの事、愛しています。
敬具
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