『40代からの心理学』を考える

4年に一度のスポーツの祭典、オリンピックがメキシコで行われたこの年、日
本の学生達の一部は学生運動をして自己表現を成すことを続け、日本で始めて
心臓という臓器が人から人へ手渡され移植手術が行われ、年の終わりには東京
府中市で白バイ警官に変装した男が現金輸送車を奪い逃走しました。
そして、次の年、アームストロング船長は月に降り立ちました。
1968年。
今年、この年に生まれた人たちが40代に仲間入りです。


実は私も同年代。
40代も間近に迫ってきました。
私よりも先に生まれ、道を作ってくださっている上の年代の方々。
そして無責任にも私達が作ってきた道を、舗装するのか別の道を切り開くのか
、どう歩いていかれるのでしょうか下の年代の方々。
人並みに年並に(仕事柄、お陰さまで人様以上かもしれません)、出逢い何ら
かの形で関わりをいただいた素晴らしい人たちのおかげですこぉしぐらいは、
時代とは変遷するということ、そしてその度に人の生き方にバリエーションが
加わっていくということ(個人それぞれの生き方というよりは、その時代時代
に‘許される’生き方や個性も含めて)を理解できるようになりました。
そして、自分の世代、という集団から、ぐるっと上下それぞれの世代を更にす
こぉしぐらいはいまより若い頃よりも愛をもって見渡せるようになっているか
しら。(期待)
いわゆる下の世代と接した時の、違和感と意外性。
それが自分の価値観や、それを形つくってきた背景も浮き彫りにしてくれます。
ある夕方。
今日も一日終了!と地下鉄に乗り込みました。
最近興味が向かうのはリクルートスーツの学生さんたち。
紺色のスーツ。一生のうちに冠婚葬祭以外に二度と履かないでしょ、と推測さ
れる、装飾が全く施されない、その代わりに『質素でしょ?真面目でしょ?』
というメッセージのみを主張したような黒いパンプス。
運よく座席に座れた私の目の前に立ったのは、背の高い背中を少し丸め、紺色
の三つボタンシングルのスーツの(に着られている)男の子と、膝丈タイトス
カートリクルートスーツをきりっと着こなしストレートの黒髪をぴっちりと後
ろで束ねている、大きな瞳が印象的なお嬢さん。
単行本を手にしながらも、興味を惹かれてしまったこの二人の会話。自分の好奇心をたしなめながらも、聞き耳をたてておりました。
さてさて、イマドキの学生さんたちの就職戦線やいかがなものなのでしょう?
会話は男の子主導で進められていきます。
『どうどう?説明会。マスコミ行った行った、あっさり落ちたよ、あ~あ、
さよーならだよっ!』
『いいじゃん、いいじゃん。なんでもアリよ。』
『女の子で○○製鋼?やるね、女子で何人目?』
『女子で3人目って会社のヒト言ってた言ってた、私、結構 ヤルよね?!』
『おぉ、そうかぁ。金融はどう?』
『あぁ、ウケタけど、どうかなぁ、嫌になっちゃわないかな?』
『いいじゃない?女の子は嫌なら結婚してやめればいいじゃん?』
『えっ?う、うん。ヤメレバいいじゃん、だね。』
(彼女のオオキナ瞳はほんの一瞬だけ輝きを失ったように見えた。)
『あっ・・・。そっ、ボクタチ男子だって嫌ならヤメレバいいんだよ。
(焦)』
微妙にオチタ空気に罪悪感を感じながらも、なんとかノリを取り戻そうとガン
バルお嬢さんと男の子。
単行本に意識を集中するように努力するも、『女の子は嫌なら結婚して辞めた
らいいじゃん?』の言葉に私の耳もひっかかり・・・。
この年代の子達と昨今あまり出会う機会がないからでしょうか、ちょっとびっ
くりしたのは‘やはり未だにこれから就職しようという女性に対して女性だか
ら・・・という価値観を持ち接しているんだなぁ’って事でした。
ただ考えて見ると当たり前で、この子達が20代前半であれば、この子達の親
の多くは現在50代前後の世代。
この言葉の示唆するところとして‘男性は外で仕事をして稼ぐ事を良しとす
る’‘会社とは我慢が強いられる場所であるはずだ’‘女性は家庭に入る事で
生活が守られても良しとする’‘嫌でも自分を曲げてでも会社に所属すること
が男性として一つの美徳である’等々。
まだ見ぬ社会に対して、とはいえ、‘女性とは’‘男性とは’‘社会とは’
‘会社とは’‘お金とは’、‘生活とは’、に対する観念が意外とたくさん含
まれ、刷り込まれているのだということをこの男子学生さんが理解するのはも
う少し後かもしれませんね。
そして、もしも、です。
お互いの性別に対する羨ましさ、女のほうがいいなとか男だったら、とか。
こういった感情は 常日頃感じるところではあるのでしょう。
ですが年月が少したち愛する女性と家庭を築こうとした時に、もしも、貴方が
この観念を大切に持ったまま貴方のやり方を通そうとしたら、相手の女性から
長い時間をかけての抗議に出会うかもしれません。
もしかすると、今この時点で感じている 彼女に何だか分からないけれど悪い
事を言ってしまったような気がするな、何か彼女の存在を軽く見たような気が
するな、という感覚。
この感覚を持っているのであれば、自分自身の人と接する時の感受性として大
切にされることをおススメしますよ、キミの明るい家族計画のためにね、学生
君!と心の中で老婆心ながら呟いていました。
イマドキの学生さんたちの会話から、ジェンダー(社会的役割の意味も含まれ
た性別として)に対する観念について、触れました。
未だに‘女性は結婚すればいいじゃない’という価値観ももちろん生き方のひ
とつですし、そうでない生き方も選択する事は可能だと思うのです。
ただ、私たちの世代であっても(雇用機会均等法施行後に就職しています)年
齢が1つでも2つでも、ましてや10以上上の女性達から比べれば、まだ、働
き易く生きやすい環境が社会に存在してた、というのも今になれば理解できま
す。
もちろんのこと、そのためには女性の生き方とは、という問いにいくつもの答
えを導き出そうと本気で取り組まれた上の世代の方々の努力があってこそ、と
いうことも。
従来の価値観に気づき、その価値観にアンチテーゼを唱え、若しくは少なくと
もアンチテーゼを感じる人たちが居る事を主張する事は、従来の価値観を幅を
広げる事も含めて変化させる事に他なりません。
変化をする事は、変化をする側も、変化を受け対応する側も勇気が必要なこと
であり時には傷みや苦しみを伴う事も。ただ、そこに立ち向かうエネルギーは
下の世代を楽にしてくれるものでもあると思います。
その、大きな愛と優しさの受領していることを感謝できる事が、年齢の恩恵だ
といえるかもしれません。
そして感謝ばかりでなく、無視できないのは、そろそろ大人としての責任・・
・。
そう、前述した学生さんたちの‘未来’としての自分たち。
一方。
上の世代から更に何を受け取るのか。
これはあくまで、個人的な体験ですが。
私の父は、私の年代から察しくださるかもしれませんが、還暦を少しばかり越
えています。
還暦を越える頃、家族間のことも含め人生の岐路に出逢い、心理学を学ぶよう
になりました。
彼の世代の価値観でいえば、図式は
‘カウンセリング’=‘人に話を聞いてもらう’=‘恥を晒す’
と言うものであったと、今はこそこそと躊躇いながら話してくれます。
最近、父を自慢に感じることがあります。
価値観を変化させる、それは生きてきた方法を変える、自分や家族の乗ってい
る船の舵の切り方を変えるような勇気を伴うことも多々あると思うのです。
更に例えて言えば、彼の世代であれば‘勝つ事’に執着することも多いと思う
のです。
なにしろそのために頑張って頑張って頑張って、私たちの世代を豊かにしてく
れたのですから。
ですが、彼は勝ち負けだけで人と接し続けてきた末に孤独を感じることになっ
たことに気づいた時にあっさりともっと別の心の遣い方があるはずだ、と変化
する事に同意したのです。
人生に対する姿勢として確固とした価値観を持つ事もとても素晴らしい事だと
も感じます。父のように60を越えて、自分の生き方を変化させていく事のでき
る勇気もまた素晴らしい事だと感じます。
こうして時代や世代を考えたうえで。
さて 心理学。
自然科学の分野として捉えたときに心理学とて、取ってつけた学問ではなく、
もともと学問より先にあった人の‘こころ’とはどうなっているんだろう?と
普遍性を見つけたり、人と人との間の不思議さを探ったりしているに過ぎない
と私は捉えるのです。
同じ世代の集団や、今まで自分が選んできた環境-例えば会社や家庭、集団な
ど-で無言で共通と化している価値観だとか無意識に刷り込まれた観念だとか
と、本当のあなたの心が感じることのできる快適さやしっくりした生き方がい
つもぴったり同じであるとは限りません。
カウンセリング、という場面をひとつ取ったとしても‘問題があるからなんと
かする’という方法論としても有効かもしれませんが、誰かが自分自身と向き
合ってくれる事で自分が何を感じているか何を思っているか、それを探す鏡と
しても有効なのではないかなと思います。
‘鏡’でみて自分を変化させる、バージョンアップしてみる、着替えてみる。
40代から、という、
一通りがむしゃらに生きてきた、その次の一歩は先の世代にもしかするとない
答えを探すことかも知れず、後の世代に道を示すものかもしれません。
人類の‘感じるこころ’の普遍性とそして変幻自在さ、多様さをフルに活用す
るアプローチのひとつとして。
40代からの心理学のススメ、こんな切り口はいかがでしょう?
上西直美のプロフィールへ>>>

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