人が感じる時の流れは、「1/年齢」だとよく言われます。
例えば、1歳の頃の時間感覚が「1/1=1」だとすると、10歳の頃には
「1/10」と1歳の頃に比べて10倍のスピードで流れていくという事で
すね。
これが40歳ともなると「1/40」となって10歳の頃の4倍のスピード
になりますから、感覚的にあっという間に1年が過ぎ去ってしまいます。
そう、気が付いてみれば今年ももう残り1/4になっているのですね。
時の流れの速さに、本当に驚かされます。
40歳も半ばを過ぎると、今までとは少し異質な「問題」が持ち上がってき
ます。
そして、その中でも特に大きな問題は、老いの始まりということなのかもし
れません。
今まで普通に読んでいた新聞が読みづらくなり「何かおかしいぞ」なんて思
っていると「老眼です」と言われてしまったり、今までと変わらない生活を
しているのに代謝が落ちて「糖尿病予備軍です」と宣言されたり、それまで
は一晩眠ると疲れが取れていたのがどうも疲れが抜けなくて何となくけだる
かったりと、体の中で様々な変化が現れてきて、自然と老いていく事に向き
合わざるをえなくなります。
老いを感じ始めると、自分に出来る事に限界を感じ始める場合がよくありま
す。
実際、体力が落ちているので当たり前の事と言えばただそれだけの事かも知
れませんが、今までやってきた通りに出来なくなるので、苛立ってみたり、
落ち込んだりします。
また、これから先の自分の人生が仕事や金銭面でだんだん先細りしていくよ
うな感じになって、不安になったりもします。
人は多くの場合今まで歩んできた延長線上に未来を見ようとしますから、こ
のままいくと・・・という事を考えてしまうわけですね。
でも、ちょっと振り返ってみて欲しいのです。
今まで生きてきた私達の人生は、自分が予想した過去の延長線上に必ず未来
が存在していたでしょうか?
昨年考えていた今年が、必ずその通りになったでしょうか?
いい事か悪い事かは別にして、大なり小なりのハプニングが起こらなかった
でしょうか?そして、今は過去に見ていた未来とは異なる状況になっていな
いでしょうか?
僕の場合、何の地縁も血縁もない九州にまさか住むなんて思ってもみなかっ
たですし、心理学やカウンセリングに関わるなんて思ってもいませんでした。
自分自身がビックリしながらの人生なのです。
今の延長線上に未来が存在するというのは、幻想なのです。
自分でそう決めただけなのです。なぜならば、何が起こるかわからないと不
安になるからです。
老いを感じる事は、私達にとって大きく2つの事を示唆しているのではない
かと思います。
先ず1つ目は、今を大切にするという事です。
今をどう楽しむか、どう生きるかです。
未来ばかり見ていると、早い時間の流れに巻き込まれて流されてしまいます。
そして不安ばかりが湧き上がってきます。
昔諦めた何かに再チャレンジしてもいいでしょうし、新たに今興味のある何
かにチャレンジしても良いとおもいます。あるいは、身近にある何かからス
タートしても良いかも知れませんね。
2つ目は、できない自分を受け入れる事です。
老いは否応なく「できない」自分を感じさせますね。
「私って十分でないなぁ」と感じていたり「私はこうありたいのにそうでは
ない」と感じていた部分があったとしたら、「人ってできない事あるんだよ
なぁ」と駄目だと感じていた自分自身を一緒に受け入れる事です。
そうすると、今までこだわっていた何かが解き放たれ、自由な感覚が甦って
きます。そうなんですね、いつの頃かに自分自身にかけた呪い、自縄自縛か
ら解放されるのです。
これら2つの事は、若くて元気な頃にはなかなか受け入れられなかった人達
も多いのではないでしょうか。
老いを感じ始めた今、それを受け入れて本当に楽しい、自分を大切にする人
生を歩み始めるチャンスなのかも知れませんね。
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