心理学には「投影」というものの見方があります。簡単に言うと、人は自分自身の体験や感覚、または、その時の自分の感情などを通して、目の前に起こっている出来事を解釈する、ということです。簡単な例をあげると・・
・過去の体験の投影の場合の例
以前、背が高くてめがねをかけたとても怖い女性の先生に教わった経験がある人が、背が高くてめがねをかけた女性に対して「怖そうな人」という印象を持ちやすくなる。など・・
・その時の気持ちの投影の例
仕事に失敗した帰りに、雨に濡れるあじさいを見て「しょんぼりしてる」と感じたのに、翌日、気を取り直して出社している時には、同じように濡れているあじさいを「雨にも負けずがんばって咲いてるな」と感じる。など・・
この投影という見方を使って「上司」と「部下」の関係について、少し考えてみたいと思います。
一般的に「上司」と「部下」の関係は、
面倒をみる側とみられる側、
守る側と守られる側、
権威のある側とそうでない側、
序列としての上下関係、などと言い表されます。
では、わたしたちが最初に、似たような関係性を作るのは・・とさかのぼっていきますと、最終的には「親子関係」にたどり就くのです。子どもの頃、親に対して遠慮したり、怖れを抱いていると、上司にも遠慮しすぎたり、上司というだけでどことなく怖い人のように感じやすくなる、というようにです。
◆父親・母親との関係と上司◆
男性の上司との関係を作るのが苦手、女性上司との関係を作るのが苦手、という場合、父親の事が苦手だったり、母親にどことなく嫌悪感を持っていたりすることが少なくないのも、子ども時代に父親や母親との間で、経験したり感じたりしたことを上司に投影しているという側面があるからです。
こういった場合は、自分と両親の関係性を見直したり、心の傷や思い違いを癒すことで、上司との関係がラクになっていくことも多いように感じます。また、上司に両親のどんな部分を重ねあわせているかを知ることで、上司に対して必要以上に感じている「苦手意識」を軽減していってみてもいいかもしれません。
◆結果を知りたい男性上司と経過を把握しておきたい女性上司◆
上司に「親」を投影して苦手意識を感じるというのとは、別の次元の話になりますが、男性と女性のやり方やものの見方の違いが原因で、苦手だなぁと感じてしまうことも少なくありません。
例えば、「○○という仕事を△△までに完了して欲しい」と上司に依頼されたとします。
以前の上司のAさん(男性)「途中の報告は手短に」「理由に関わらず結果を」というタイプだったので、引き受けるときに「可能か、否か」を明確に答え、その後は、経過を聞かれた場合のみ、進捗状況を伝え、とにかく、その期日までに完了させておけばOKでした。ところが、今の上司Bさん(女性)は、引き受けたときに「△△までに完了します」と伝えたにも関わらず、しょっちゅう、「○○はどこまで進んでる?」「どんな段取りでやっているの?」と聞いてくる。Aさんのやり方に慣れていた部下のCさんは、B上司は、自分の事を信頼していないから、細かく聞いてくるのでは?と不安になったり、信頼されていないことに不満を感じたりすることが増え、Bさんが苦手になりました。
この例のような場合に可能性として一考していただきたいのが、「男女の違い」です。
例えば、上記のような場合、男性は、短い言葉でのコミュニケーションを好み、結果を重要視しやすく、女性は、頼んだ仕事がどう進んでいるかを確認しながら進めることを好む、といった男性と女性のリーダーシップの取り方の違いのせいかもしれない、という目で、出来事を見なおしてみると、B上司はCさんを信頼していないわけではなく、ただA上司とは進め方が違うだけ、という見方もできますよね。
◆「苦手」だと感じたら・・◆
親を投影している場合も、男女のやり方の違いに戸惑う場合も、大切なのは、必要以上に「嫌われているのでは?」「信頼されていないのでは?」という不安を持たないことです。
そのためには、「今と違うものの見方をしてみる」ことが大切。時には「投影」や「男女の差」という視点も活用してみてくださいね。
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