よりよいリーダーとなるために必要なこと(11)~人を褒めることの効果が高い理由~

突然ですが、あなたは後輩を育てるのは得意でしょうか?
上手に後輩のやる気を引き出し、また後輩が自分自身で考え自発的に動けるように意欲を持たせたり、自信をつけたりするサポートは得意でしょうか?『よりよいリーダーとなるために必要なこと』と題してお届けしている本シリーズは、第5回までは「経営学の父」と呼ばれ、著書『マネジメント』で有名なドラッカーの教えから、”リーダーシップ”について5回に渡り考察してきました。
そこではリーダーとして心構えであったり、概念であったり、大切な要素であったり、というような、素質や姿勢に焦点をあててきました。
そして、第6回からは”実践編”として、実際に「育てる現場」で起こる問題に対しての対処法として『育てる技術を磨く』ということを軸にお届けしています。”実践編”で過去にお伝えしてきたのは、下の5点。

・やる気や根性ではなく「行動」をみる(第6回)
・「知識」と「行動」は分けて教える(第7回)
・「分かりました!」の返事を鵜呑みにしない(第8回)
・「具体的な行動」で指示を出す(第9回)
・小さなゴール(達成感)が成功へ導く(第10回)

”教える”時に重要な【誰が、いつ、どこでやっても、同じ成果が得られる為に、どうすればいいか?】がコンセプトになっています。

業種によってもまちまちだとは思いますが、それでも「新人さん」や「メンバー入れ替え」はは定期的にやってくるもの。
その新しいメンバーが「自分のやり方」「自分のこだわり」をもって業務を効率よく遂行することは大切ですが、
最初から個人の裁量や、個々の過去の経験値に頼るのではなく、

【誰が、いつ、どこで】行っても一定の成果を上げる”仕組み”を作ること

が何よりも重要なのです。

では、今回は”実践編”の第6弾。
「人を褒めることの効果が高い理由」についてです。

●「やっても無駄」と思えると、人は動かなくなる

人の行動原理を説き明かしていく「行動分析学」という学問があります。
そこでは「人が行動をする原理」がABCモデルで説明されています。

A:“Antecedents”=誘発要因→「~のとき」
B:“Behavior”=行動→「~したら」
C:“Consequences”=行動結果→「~になった」

人の行動には、何らかのきっかけ、すなわち誘発要因がある(A)。
そのきっかけで行動が引き起こされ(B)、行動の成り行き(C)によって、再び同じ行動が将来生起するかどうか決定されていく。というもの。

簡単な事で言えば、

A:早朝出勤して部屋が暗い。自分の部署だけ点灯できるスイッチがある

B:スイッチを押す

C:明るくなった!

「明るくなった」という望ましい結果が得られたので、次回また部屋が暗いと感じたら、迷わず明かりをつけることでしょう。

「え?そんなの当たり前じゃない?」と思われるでしょうが、この「当たり前」が大切なのです。

例えば、
A:上司から「会議では積極的に発言しなさい」と言われた。

B:発言としては内容はまとまっていなかったけれど、部下は自分の意見を発言した。

C:「どんな意見でも、自分の考えを会議で発言することに意味があるし、よくやった!」と上司が褒めてくれた。

この部下が次の会議でも発言する可能性は高くなるでしょう。

しかし、もし、A・Bまでの過程が全く同じでも、Cの”行動結果”が

「上司から『もっと考えてから発言しろ!』と言われた」や
「発言したこと自体をなかったかのように扱われた(発言がスルーされて会議が進む、会議後上司からのコメントが一切ない、など)」

という場合では、部下が積極的に発言をする可能性は低くなります。

それは「会議で発言しても(B)、いいことが起こらない(C)」と思うたびに、部下によって、会議で発言すること(B)が抑制されていくからです。

人は、何かしらの行動をした後に、”望ましい結果”が得られると、再び同じ行動を繰り返そうとするものなのです。

●行動したら”よいことが起こる”という状態を作る

部下に継続して実践してもらいたい行動があるのであれば、叱咤激励やノルマとして課題を与えるのではなく、「C:行動結果」をうまくマネジメントすることが重要となります。

とは言え、仕事ですぐに成果が見えたり、分かりやすい形でよい結果が入ってくることが少ないでしょう。

ダイエットや、健康のための運動が続かないのも、頭ではその行動が「意味のあることだ」と理解していても、すぐに体重が目標の数値まで落ちたり、翌月には健康診断の数値が改善されるとまではいかないからです。
すると、食事制限辛い、運動しんどい、苦しい、という望ましくない結果の方が先に手に入ってしまうので、私たちは行動を継続することをやめてしまいます。
これはビジネスの分野でも同じこと。

だからこそ「B:行動」の直後に、「望ましい結果」=”ご褒美”を与えることが「C:行動結果」をうまくマネジメントすることに繋がります。

そしてその”ご褒美”の1番シンプルな形が【褒めること】
・上司から評価される
・上司から褒められる
・上司が頑張りを認めてくれる

とても単純な事に思われれるでしょうが、各方面で効果が認められている方法でもあります。

目をかけられている。
ちゃんと見てもらえている。
そうした安心感が、人を育てるのかもしれませんね。

あなたのチームには「褒め合う」環境や仕組みはありますか?

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この記事を書いたカウンセラー

About Author

恋愛、対人関係、自己啓発、ヴィジョン、ビジネス心理を得意とし、”少しでも楽に・簡単に・シンプルに”をモットーに、分かりやすい心理分析と日常的に無理なく取り組める提案を行っている。 その人本来の輝きや、問題の先にあるヴィジョン(幸せな未来や才能)を引き出すカウンセリングが好評である。