「子どもを育てる」ことや「親の介護」というのは、単独であっても、肉体的にも精神的にも大変なことだと思います。やらなければならないことは山積みだし、想定していないことが次々に起こることも多々あります。そういった状況を抱えながらも、「仕事をする」場合、一時的にかもしれませんが、何も抱えていない時と同じように働くことができなくなります。「急な発熱で早退しないといけない」「思いがけない出来事が起こって、休まざるを得ない」ということが起こるからです。こういった状況の中で大切なことは「一人で抱え込まずに、上手に助けてもらうこと」ではないかと思います。◆心に余裕がないと一人で抱え込んでしまう◆
育児や介護は、先ほども書きましたが、それだけでも大変なことなので、当事者は、心理的にも肉体的にも疲れやすくなっています。「疲れている」時、多くの人は余裕を失います。余裕がないので、周りの人に気を使えなくなったり、逆に周りの人が出している「助けるよ」というサインを見逃したりしやすい心理状態になりがちです。特に、日頃から「自分一人でがんばる」タイプの人は、「自分でなんとかしなくては!」と思うので、「大変だ」と思うことを禁止して、「もっとできるはずだ」「自分でやらねば」と多くのことを一人で抱え込んでいき、心の余裕を失ってしまいやすくなります。
また、心に余裕がなくなり、自分に対して「もっとがんばらねば」と感じている時には、
「がんばれていない自分」に対して、こんな自分はダメだとも思ってしまいます。すると、
その心理状態を他者に投影して「がんばれない自分のことをみんなもきっとダメだと思っているだろう」というようにも感じてしまうので、余計に「助けてもらえない」と思いやすくなるのです。
◆余裕をなくす前に準備しておく2つの力◆
子育てや介護などで心に余裕がなくなるほど、「助けを求める」ための心の余裕もなくなるならば、そういった状況になる前に「助けを求める力」を身につけておくことが重要になります。「助けを求める」ために必要なのは「お願いする力」と「感謝を表現する力」。この2つの力は、子育てや介護などの問題がなくても、「持っていた方がいい力」でもあります。
◆「お願いする力」
子育てや介護と仕事を両立していこうとすると、やらなければならないことがたくさん出てきます。そのすべてを自分で抱え込むには限界がありますから、誰かに助けてもらう必要がでてきます。ですから、日頃から、ちょっと困ったときや忙しい時に、周囲の人に「○○を手伝ってください」と発信する練習をしておくといいと思います。その際に大事なのは、「誰に」、「どんなことを」、「どんなふうに」お願いするか、ということです。
「お願いする」のが苦手な人の中には、「お願いする」=「迷惑をかけること」だと思っている、という方が大勢います。「迷惑をかけたくない」という気持ちがブレーキになって「お願い」できないのです。そういった場合にこそ「誰に」「どれくらいのことを」「どんなふうに」ということをしっかり考え、段取りを組んでお願いし、相手に迷惑をかける量を少なくする工夫をするといいでしょう。
また、「相手には自分のお願いを断る権利もあるのだ」という心構えを持つことで、「迷惑をかけるかも?」という不安を軽減することもできます。
◆「感謝を表現する力」
何かをお願いしたときや助けてもらった時、「ありがとう」というのは、あたりまえの事かもしれませんが、大切なことです。
「ありがとう」と伝えられることで、相手は「助けて良かった」と感じたり、「手伝った甲斐があった」と感じやすくなるからです。
ところが、「迷惑をかけてしまった」という思いが大きすぎると、申し訳なさをたくさん感じて、素直に「ありがとう」と言えず、「スミマセンでした」「申し訳ありませんでした」と伝えたり、時には、何も言えなくなってしまったりします。
「スミマセンでした」と繰り返して言い続けていると、「迷惑をかけている自分はだめだ」と感じてどんどん自分を責めやすくなり、余計に「ありがとう」と言いにくくなります。また、言われた側は、「スミマセン」と小さくなっている姿を見て「こんなにおびえさせているのは自分のせい?」と、不快な気分を感じやすくなります。
「迷惑だったろうに、引き受けてくれてありがとう。感謝します。」と感謝を伝えることは「スミマセン」「ごめんなさい」よりも、相手の行動を賞賛する行為であり、相手の気分を良くする効果があるのです。
「お願い力」と「感謝力」は人間関係を良くする「潤滑油」。基本に立ち返って、再度見直してみるとよいかもしれませんね。
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