上手に後輩のやる気を引き出し、また後輩が自分自身で考え自発的に動けるように意欲を持たせたり、自信をつけたりするサポートは得意でしょうか?『よりよいリーダーとなるために必要なこと』と題してお届けしている本シリーズは、第5回までは「経営学の父」と呼ばれ、著書『マネジメント』で有名なドラッカーの教えから、”リーダーシップ”について5回に渡り考察してきました。
そこではリーダーとして心構えであったり、概念であったり、大切な要素であったり、というような、素質や姿勢に焦点をあててきました。
そして、第6回からは”実践編”として、実際に「育てる現場」で起こる問題に対しての対処法として『育てる技術を磨く』ということを軸にお届けしています。”実践編”で過去にお伝えしてきたのは、下の3点。
・やる気や根性ではなく「行動」をみる(第6回)
・「知識」と「行動」は分けて教える(第7回)
・「分かりました!」の返事を鵜呑みにしない(第8回)
”教える”時に重要な【誰が、いつ、どこでやっても、同じ成果が得られる為に、どうすればいいか?】がコンセプトになっています。
業種によってもまちまちだとは思いますが、それでも「新人さん」や「メンバー入れ替え」はは定期的にやってくるもの。
その新しいメンバーが「自分のやり方」「自分のこだわり」をもって業務を効率よく遂行することは大切ですが、
最初から個人の裁量や、個々の過去の経験値に頼るのではなく、
【誰が、いつ、どこで】行っても一定の成果を上げる”仕組み”を作ること
が何よりも重要なのです。
では、今回は”実践編”の第4弾は、効果的な指示・指導の仕方についてです。
●やるべきことを「具体的な行動」に言い換えて伝える
何度言っても、なかなかこちらが思うとおりに動いてくれない。
ルールを決めたのに、そのルールが全く守られないし、何のためのルールなのか?が理解されていない。
そんな経験、上に立つ立場の人であれば、1度とは言わず、日常的にあるのではないでしょうか?
その度に説明しなおしているつもりだけれども、また上記のようなことが繰り返されるとイライラしたり、失望したり。。。
では、部下や、現場のスタッフ、指示を受ける側の彼らだけに問題があるのでしょうか?
彼らの仕事への姿勢や、理解度が低いことだけが原因なのでしょうか?
【誰が、いつ、どこで】行っても一定の成果を上げる”仕組み”を作る
その為の、指示の出し方や指導の仕方を見つめなおす為に、とても有効な「MORSの法則(具体性の法則)」を、今回はご紹介したいと思います。
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「MORSの法則(具体性の法則)」とは、1960~70年代にアメリカで考えられた「行動科学」分野で、行動を定義するときに用いられる法則のことです。
M:Measurable(計測できる)→数値化できる
O:Observable(観測できる)→誰が見ても、どんな行動をしているか分かる
R:Reliable(信頼できる) →誰が見ても、同じ行動だと認識できる
S:Specific(明確化されている)→何をどうするかが明確になっている
この4つの条件を満たしていないものは、行動科学では”行動”とは呼びません。
例えば、
・クレームを出さないように、丁寧に対応しましょう
・売上を伸ばすために、各自の目標を立てて取り組もう
・チームワークを高めて、みんなで助けあいましょう
・企画書をできるだけ早く提出するように!
などの指示は一見すると「行動」を表しているような印象を持ちますが、「MORSの法則(具体性の法則)」に当てはめると4つ条件を1つもクリアしていませんので、実は「行動」と呼ぶのには当てはまりません。
あなたの指示の出し方や、考え方は「行動」に当てはまっているでしょうか?
それぞれの指示の修正点を上げるとしたら、こんな感じになると思います。
・クレームを出さないように、丁寧に対応しましょう
→「丁寧に」が具体的に何をするのか?が曖昧。
・売上を伸ばすために、各自の目標を立てて取り組もう
→実際に「やるべきこと」が曖昧
・チームワークを高めて、みんなで助けあいましょう
→どのように「助け合う」のかが曖昧
・企画書をできるだけ早く提出するように!
→「できるだけ早く」が曖昧
曖昧なことに関しては、私達はそれぞれ「自分の当たり前」を適用しようとするものです。
それが指示を出した側の思惑と一致しない場合には、
「そうじゃない」「どうしてそうなるんだ」「なんでわからないんだ」と指摘されたり、注意されたりしますが、
その時に、「自分の当たり前」が適用されているケースであればあるほど、指摘された側は「自分を否定された」と誤解しやすくなってしまいます。
この「自分を否定された」という誤解が積み重なることこそが、仕事へのモチベーションを下げることに繋がります。
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「一を聞いて十を知る」ということわざがあります。
孔子の弟子である子貢が、孔子の門人である顔回を褒めて、「顔回は一を聞くと銃を理解するが、自分は一を聞いても二を理解する程度である」といった故事に基づいているのだそうです。
しかし多くの人は子貢と同じ、「一を聞いて二を理解する」もできれば十分でしょうし、「一は一」という人の方が多いでしょう。
「一は一に十を伝える」為には、指示を出す側の発言や、作業手順、マニュアルがある場合はそのマニュアルの内容が「MORSの法則(具体性の法則)」に沿っているかどうか?を振り返っていただくと、修正すべき点が見つかりやすくなりますよ。
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