離職率を下げるには

「辞めることを見越して、多めに人材を採用している」と、とある業界の経営者の方がおっしゃっていました。
確かに、大切なことなのかもしれません。
ですが、その「多め」が「かなりの多め」なのです。「辞めなかったら経費がかなり嵩むのでははいだろうか?」
「教育するのにも経費がかかるのでは?」
「経費が嵩みすぎた場合は、リストラするのであろうか?」
いらぬ心配と思いながらも、様々なことを考えてしまいました。

確かに会社にとって、せっかく採用した人が辞めてしまうと、また募集して、採用して教育してと手間と経費がかかります。
ですから、最初から辞めるであろう人数の予想を立てて対応することは、あるかもしれません。
でも、必要以上に多めに人材を採用するよりも、離職率を下げることに目を向けてもいいのかもしれませんね。

私たちが、「会社を辞めたい」と思うとき、会社で感じている感情が嫌なのです。

ですので、会社で働く人たちが、いったどんな感情を感じているのかに目を向けると、離職率を下げることができます。

「何のために仕事をしているのかわからない」「やりがいがない」などのように、モチベーションに関する感情が、ネガティブなものであるために、会社を辞めたいと思う人もいますし、「同じ部署の人との関係性がうまくいかない」「上司が怖い」「同僚が理解してくれない」など人間関係に関するネガティブな感情もあります。

「給与が低い」と報酬に関することが、会社を辞めたい理由であったとしても、そこには、「もっともらってもいいくらいだ」「自分の働きを認めてもらえていない」という感情があります。

「通勤に時間がかかる」などの一見、感情とは関係がない離職理由もあります。
ですが、そこにもやはり、感情はあるのです。
どんなに通勤時間がかかったとしても、仕事にやりがいを感じている人は、辞めようとは思わないのです。

通勤時間が長いことで感じる「つらい」「しんどい」というネガティブな感情よりも、その仕事によって感じる「達成感」「充実感」「うれしい」「楽しい」などのポジティブな感情が上回れば、「辞めたい」とはならないのです。

社員のモチベーションを上げるために、臨時ボーナスを出すなんてことを、やり続けたとしたら会社の経営は圧迫されるでしょう。

上司が怖いと訴えれば、その上司を移動させるなんてことをやっていると、会社は成り立ちません。

社員が希望する金額を報酬にしていたら、会社がつぶれてしまうことだってあります。

通勤時間が短くてすむように、会社の近くに全員分の住まいを準備するなんて、到底無理な話です。

でも、感情レベルで考えれば、社員をサポートできることは、たくさんあります。

「ありがとう」「助かっているよ」「君の力のおかげだよ」と、承認することによって、社員のモチベーションをあげることもできます。
人は、誰かの役に立ちたいものですし、感謝されたいものです。
自分の働きによって、誰かが喜んでくれているということがわかれば、それだけでやる気がわいてきます。

「つらい」「理不尽だ」と感じている人がいたら、「甘い!」「もっとみんな頑張ってるぞ!」と、その嫌な感情を認めないのではなく、いったん受け入れてあげることで、「理解してもらえた」という良い感情を感じさせてあげることができます。
それはなにも、甘い考え方、逃げ腰の考え方を肯定するということではないのです。
その人が、今は「つらい」と感じているのだな。
「理不尽だ」と感じているのだなということを、ただ受け入れるだけです。

もし、その人が感じてている「つらい」「理不尽だ」というものが不当なものであったとしても、いったん気持ちを受け止めてもらえたら、誰かの意見を聞きいれる準備ができますから、自ら「自分の考え方は甘いのかもしれない」と、考え方を改めることもできるのです。

会社で働く人たち全員に、100パーセントポジティブな感情をもってもらうことはできないでしょう。
人間である以上、ポジティブな感情もネガティブな感情も両方感じますからね。

でも、ネガティブな感情よりも、ポジティブな感情を感じる時間が上回れば、離職率は下がるのです。

とある会社では、社員食堂の料理をおいしくしたことで、離職率が下がったそうです。
これは「おいしい!」とポジティブな感情を、感じる時間が増えたからかもしれません。

また別の会社では、職場に花を飾るようにしたところ、離職率が下がったと聞きました。
もしかしたら「きれいだな」とポジティブな感情を感じる人が増えたからかもしれません。

実際の業務とは関係のないところでも、人は感情を感じています。
会社にいる時間に感じるポジティブな感情を増やす努力をすることで、離職率は下げられるのです。

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この記事を書いたカウンセラー

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