よりよいリーダーとなるために必要なこと(4)~”インテグリティ”を貫く~

突然ですが、あなたは後輩を育てるのは得意でしょうか?
上手に後輩のやる気を引き出し、また後輩が自分自身で考え自発的に動けるように意欲を持たせたり、自信をつけたりするサポートは得意でしょうか?『よりよいリーダーとなるために必要なこと』と題してお届けしている本シリーズは、「経営学の父」と呼ばれ、著書『マネジメント』で有名なドラッカーの教えから、”リーダーシップ”について考察しています。
本日はその第4弾です。*

”インテグリティ(integrity)”という言葉を聞かれたことがあるでしょうか?

経営やビジネスの世界ではよく出ては来るものの、なかなか日本語でこれ!という翻訳がない言葉、と言われています。

そしてドラッカーが、マネジメントするものにとって知性・知識・技能よりも根本的に必要な素質としたのが、この”integrity”です。

integrityをネットの辞書で調べると「高潔、誠実、正直、完全(性)、全体性、整合性、統合性」といった意味が出てきます。
しかしこれは第二義的な訳のようで、オックスフォード英英辞典によれば

the quality of being honest and having strong moral principles
(誠実であるとともに強固な倫理原則を維持できている状態)

なのだそうです。
・・・ますます難しい。

ドラッカーのほぼすべての著書を訳している翻訳家の上田惇生氏(ドラッカー学会会長)は、この”integrity”を【真摯さ】と訳しています。

◇P.F.ドラッカー「マネジメント(中)」
P110より

何が正しいかよりも、誰が正しいかに関心を持つ者をマネジメントの地位に就けてはならない。
仕事の能力よりも人を重視することは、堕落(corruption)であり、やがては組織全体を堕落させる。

いかに知識があり、聡明であって、上手に仕事をこなしても、真摯さ(インテグリティ)に欠ける者は組織を破壊(destroy)する。
組織にとって最も重要な資源である人を破壊する。
組織の精神を損なう。成果を損なう。

当初はその会社の掲げる理念に共感したり、志高く入社しても、現場ではその気持ちが折れてしまう出来事は度々起こります。
組織間や対人間での軋轢や壁。
ノルマへのプレッシャーや、サラリーマンであるがゆえの制約や制限。
個々の制度や権限による拘束。
人事評価や報酬。

そうした中でつい相手によって対応を変えたり、みんなとうまくやっていきたいが為に八方美人になってしまったり、暗黙の了解でダブルスタンダードが生まれることもあるかもしれません。
言ってることとやってることが違う。
日常の中にもそうしたことは多々隠れていますし、そうした不祥事が発覚する企業も少なくはありません。

でも、だからこそ、インテグリティを貫こうとする”強さ”が必要と言えるでしょう。

「この組織にとって、本当に正しい判断とは何か?」
「このプロジェクトにとって1番大切にしたいことは何か?」
「自分達の目先の利益ではなく、顧客の喜びや満足度を高めるためにすべきことは何か?」
「この会社の理念に沿った、本当に正しい決断とは何か?」

そうした、【ブレずに一貫性を貫こうとする意欲をもって、仕事(組織・業務)に取り組むこと。】
それが、ドラッカーの言う、マネジメントするものにとって何よりも大切な”素質”なのかもしれません。

もちろん、それは簡単なことではありません。
そうした中でインテグリティを貫こうとする時には、衝突を覚悟することも必要でしょう。

それが上司に対してであれば、臆することなく異論を唱えることになるかもしれません。
それが顧客に対してあれば、お客様は神様であったとしても「NO」はきちんと伝えることになるかもしれません。
多くの人が「これは白だ」と言っていたとしても、あなたが自身の倫理に照らし合わせ、本当に正しい判断をしようとした時に、それが黒と感じられるのであれば、そこでは「黒である」ということ認める勇気が必要です。

日本では昔から「和を重んじる」ことが美徳とされ、また平和主義から「長いものに巻かれる」という面もあります。
そんな中で、こうした衝突はとてもリスクがあるように感じられることでしょう。

しかし、こうした衝突は一時的なものです。
そこで例え上司と衝突して、一時的に上司との間に距離が生まれてしまったとしても、その時のあなたの思いと、あなたの言動が一致してれば、あなたが誠実に仕事に取り組もうとする態度は変わりませんから、あなたの誠意や熱意は必ず相手に伝わります。
例えお客様の要望に「NO」を突きつけることになり、一瞬お客様ががっかりさせることになったとしても、あなたのその思いが「最善の理由」に基づいていれば、何度でも相手に丁寧に説明し続けることができるので、理解者を増やしていくことは出来るでしょう。

こう書くと「リーダーの素質ってとてつもなく高尚なものだ」「そんな風には自分はなれない」と感じるかもしれませんが、最初から完璧に”真摯さ”を持っている人の方が稀です。

だからこそ、何度も何度も、”選択”することが必要なのです。
「本当に正しい判断はなにか?」
「1番大切にしたいことはなにか?」
「今出来る、最善の方法とはなにか?」

自身の意見を持ってぐいぐい引っ張っていくことだけがリーダーシップではありません。
何度も悩み、何度も壁にぶつかる。
その度に学習し、その度に視野を広げ、その度に自分を正していく。
そうした選択の連続であなたは成長し、
成長した分、真実の捉え方も変わり、
真実が変わるからこそ、行動も変わっていく。

そうしたあなたの姿に、人は自然と”リーダーシップ”を感じるのです。

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この記事を書いたカウンセラー

About Author

恋愛、対人関係、自己啓発、ヴィジョン、ビジネス心理を得意とし、”少しでも楽に・簡単に・シンプルに”をモットーに、分かりやすい心理分析と日常的に無理なく取り組める提案を行っている。 その人本来の輝きや、問題の先にあるヴィジョン(幸せな未来や才能)を引き出すカウンセリングが好評である。