企業の意思決定に求められるもの~リスキーシフトとコーシャスシフトに気をつける~

日本の商社で台湾企業に製造委託し、中国本土の工場で電子機器を製造、日本に輸入して販売している企業と販路とおつきあいしていた事がありました。
私の方は、その商社に製品を納め、その商社が製品を販売するという形です。
当然、その商社は他の製品を具体的にどこで作っているかは教えてくれません。一方、それとは別に、私が責任者となっていた機器の製造コストを下げようと、台湾企業系で中国に製造工場を持ち、引き受けてくれそうなところを探した事があります。
どうして台湾企業かというと、台湾の企業は日本との商習慣や品質に対する欲求を理解しており、日本語が通じやすく、また製造場所が同じ中国語圏であることなどがその理由でした。

台湾企業を事前調査のうえ何社か訪問し、絞り込んでその企業の中国工場の視察に出向いてみると、なんと日本の商社の担当者とバッタリ出くわしたのでした。
「ここで作られているのですね」
私の言葉にその担当者は苦笑いしていましたが、現地で一緒に食事をしたりなどして懇意になり、中国での製造の秘訣を教えてもらうと、品質や納期を守らせるためには、適切な時期に日本人が立ち会って、怖い存在になる事が大切なことだと言っていました。
確かに、日本でも製造委託先や部品メーカーを突然フラっと訪れて品質を守れる状態かどうか、納期は間に合いそうかのチェックをする事は普通にありました。
日本では、そのような事をしなくても品質が安定し、納期も守ってくれる企業が多いので“抜き打ち”的なチェックをしなければいけない企業は少なかったのですが、そこはその企業への信頼が実績として積み上がっていく感じです。

閑話休題。
最近は食に対する安全面の問題が頻繁に取り上げられています。
中国での問題もさることながら、日本においても“誤表示”と称したメーカーやレストランでの問題が多く発覚しています。
本来はお客様を第一番目に見て、大切にすることが企業発展の秘訣でもあると思うのですが、時に個人なら絶対にやらないことを企業という集団が故にやってしまう事があります。
また、個人であれば普通に行う事を企業という集団が故にやらないという決定を下すこともあります。
心理学ではこれを“集団分極化”と称し、前者は“リスキーシフト”、後者は“コーシャスシフト”と呼びます。
よりリスクの高い選択をするのが「リスキーシフト」であり、慎重な方向を選んでしまうのが「コーシャスシフト」です
これらは集団で意思決定を行う事で「普通の選択」から外れてしまう事なのです。

この集団分極がなぜ起こるのかは諸説あり、また今なお研究が進められていますが、現在の知見をおおまかにまとめると、
(1)集団のリーダーや声の大きいメンバーの意向に同調する雰囲気が形成され、それに異を唱えられない状況になる。
(2)メンバーが自分の存在をアピールするため、より極端な方向の意見を出す。
(3)集団の決定で責任の所在が曖昧である。
という事になります。
言わば「赤信号、みんなで渡れば怖くない」ということでしょうか。

企業という集団の中で意思決定を行う場合、「個人ならやらないこと」「個人ならやること」を意識して意思決定を行っていく平衡感覚が大切ではないかと思います。

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この記事を書いたカウンセラー

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恋愛や夫婦間の問題、家族関係、対人関係、自己変革、ビジネスや転職、お金に関する問題などあらゆるジャンルを得意とする。 どんなご相談にも全力投球で臨み、理論的側面と感覚的側面を駆使し、また豊富な社会経験をベースとして分かりやすく優しい語り口で問題解決へと導く。日本心理学会認定心理士。