全くミスしない人間などいませんから、指導したりアドバイスする場面は部下や後輩を育てようとすればするほど、チームとしてよりよくなろうとすればするほど出てくるかと思います。そこで前回からシリーズでお送りしている「効果的な叱り方を目指して~叱る技術を高める~」
実際に「叱る」場面が訪れた時に備えて、叱る側はどんな心構えや考え方でいればよいのか?
『効果的に部下を叱る為の心得』についてお送りしています、前回は心得として
心得その1:相手を非難しない
心得その2:相手の人格を否定しない
ということをお伝えしました。
前回の心得を簡単にまとめるとすると「罪を憎んで、人を憎まず」といった感じで、「ミスは訂正すればOK。そこにその人の価値や可能性まで結びつけて判断しない」と言えると思います。
今回の『効果的に部下を叱る為の心得』は、
◆心得その3:「一緒に取り組もう」という意欲をもつ
<悪い例>
上司「君の課にはあまり営業成績が伸びない者がいるみたいだね」
部下「すみません。○○君はもう少し努力すれば目標達成できる力はあると思うのですが・・・」
上司「もう少し努力すれば、ってそれをさせていない君が部下に甘すぎるんじゃないかね?もっと厳しく部下に指導しないから、いつまでたっても部下が育たないんじゃないか!?」
部下「すみません・・・」
上司「このままでは今月も目標達成が厳しいんだから、ちゃんと指導しろよ」
指導する側というのは、確かに立場的には指導される側よりも上にありますが、ただ上から下に指示や命令を投げても、あまり効果がありません
叱られたその瞬間は「頑張らなくては!」とやる気が出てくる場合もありますが、それは「叱られる恐れ」からの防衛反応のようなものなので、瞬発力はありますが、持続力には欠ける性質のエネルギーなのです。
ミスをした人、目標を達成できなかった人など、指導が必要な人を責めたり、その人1人に責任を持たせ「頑張ってこい」と試練の谷底に放り投げても、そこから自力で頑張れる人は、実は少数派なのです。
上司と部下、先輩と後輩が同じ土俵にたち、
「よりよくなるためにどうしたらいいのか?何ができるのか?」
をチームやパートナーとして考え、取り組もうとする姿勢が重要です。
同じ目標に向かって努力したり、問題解決に取り組もうとする態度や姿勢で相手に関われば、指導されている側も責められているという風には感じないものです。
また、
「応援されている」
「一緒に前に進もうとする仲間がいる」
と心強さを感じたり、横のつながりや仲間意識を持つ事で、自分もその仲間の役に立ちたい!仲間に迷惑はかけられない!と自主的に行動したり、責任感をもって行動するなどの変化をもたらす、などの効果も期待できます。
◆心得その4:変化がでるまでフォローする
上記の「心得その3」の続きのようになりますが、指示やアドバイスも上司から部下、先輩から後輩へ一方的に相手に伝えるだけではコミュニケーションとして成立しません。
コミュニケーションはよく”キャッチボール”に例えられますが、こちらがどんなに的確に相手に向けてボールを投げた後しても、相手が受け取れなければ意味がありません。
そしてまた、相手からも投げ返してもらい、こちらがキャッチすることで”キャッチボール”となります。
剛速球はそれをキャッチできる相手にしか効果がないでしょうし、相手を傷つけないようにと弱いボールや相手から離れたところに向けて投げても、それは相手にも届きませんし、自分にもボールは返って来にくいでしょう。
指導や提案、アドバイスも同じで、こちらから投げかけたものを
「相手がどのように感じているか?」
「相手の中でどのように受け止め、どう消化し、次に繋げていこうとしているのか?」
というのを、指導する側が理解しようとする事が大切なのです。
指導したあと、そのままににしておくのではなく、問題が改善したり、相手の行動や考え方、取り組み方が改善するまで見届けようとする意欲を持つことが大切です。
そうした「よりよい変化」が出て初めて『効果的な叱り方』と言えるでしょう。
もちろん、指導してすぐに変化が訪れる場合もあれば、何度も同じ事が続き、何度も同じ事で叱らなくてはいけない場合もあるかと思います。
1度や2度だけなら私たちも「相手に寄り添おう」「相手と同じ立場にたって考えよう」としやすいかもしれませんが、何度も繰り返されるように感じると、叱責したくなることもあるかもしれません。
そういう時ほど、この心得その4を思いだして見て欲しいのです。
こちらが伝えようとしていることを、
「相手がどのように感じているか?」
「相手の中でどのように受け止め、どう消化し、次に繋げていこうとしているのか?」
実はこの部分が根本的にすれ違っているからこそ、何度も同じミスが起こっているケースが多々あるのです。
こちらが相手に伝えたことが、相手の中ではどう受け止められたのか?を相手の変化を見守る中で確認したり、相手にこちらの意図が届いていないように思われる場合にはほかの角度から説明してみたりなど、”キャッチボール”を成立させる工夫が必要です。
そして、少しでも改善の兆しが見えたならば、きちんと相手を承認し、応援したり、サポートする事も大切ですね。
人は「自分のことをちゃんと見てくれている人がいる」というのがモチベーションに繋がるのです。
効果的に部下を叱るための心得を前・後編で合計4つお届けしました。
「叱る」というのは、とてもエネルギーのいる作業でもあります。
だからこそ、『効果的な叱り方』を通じて、お互いに気持ちよく思いを伝えあい、問題を改善できる環境を目指してみませんか?
—–