一日の大半を費やす仕事が充実していれば人生は素晴らしいものになる。そのことに疑問を挟む余地は無いでしょう。もしも今、あなたの職場がご機嫌なものならそれはとても幸せなこと。会社に上司に同僚に惜しみなく感謝しましょう。感謝は人を謙虚にし、謙虚さは良好な対人関係を長続きさせる上で重要な役割を果たしてくれるでしょう。
いっぽう、もし今あなたが退社を考えるほどに不機嫌な職場にいるならば、勢いで会社を飛び出す前に提案があります。それは、ストレスフルなその環境でネガティブな感情との向き合い方をトレーニングしておくということ。
だって新しい会社がどんな会社かは入ってみなければ分からないし、どんな仕事だって嫌な出来事というのはきっとある。せっかく転職した先でガッカリしてまた求人情報を探すより、たとえ嫌な気分になっても乗り越えることができるメンタリティを持っておく方がずっといいと思いませんか?
◎新時代のビジネススキル◎
機嫌よく仕事をしたいと願いつつも、私たちの心からネガティブな感情が消えるということはありません。
自分よりも同僚が評価をされれば妬ましく思うこともあるし、失敗すれば後悔する。自信を無くして挫折感に心が挫けそうになることだってあるかもしれません。悔しさや挫折感、失敗をバネに自分をモチベートすることが成功するための条件のように言われたりもしますが、ネガティブな感情に覆われる心をポジティブに切り替えるのは簡単なことではありませんよね。
また、現代ならではの問題もあります。
スマホやタブレットでいつでもどこでもメールチェックができるようになったのはいいけれど、オンとオフの境界線が曖昧になることで気持ちの休まる時間がなくなったという声も聞きます。ある研究によると、ビジネスマンが一時間にメールボックスをチェックする回数は少ない人で17回、多い人だと34回にもなるそうです。つまり、2分から3分に1回はメールチェックをしている計算になりますから、確かにこれでは疲れてしまうのも無理はありません。
そんなストレス多き時代に生きる私たち。一説によるとストレスによる経済的損失は年間一兆円を超えるとか。
メンタルヘルスの重要性が囁かれる現代、ストレスやネガティブな感情に負けずモチベーションを維持することのできる心を持つことはビジネスにおいてとても大切な要素と言えます。
こんな話を聞いたことがあります。
「腹が立ったり、憎しみを感じたりしないのですか?」という問いかけにある高名な宗教家が応えた言葉です。そこで彼はこう言っています。「私にも怒ったり、嫉妬したり、嫌な気分になったりというらことはあります。ただ、そんな感情の扱い方を知っているだけなのです」と。
どんなに修行を積んでもネガティブな感情の闇からは逃れられない。けれど、心の修練を積んだなら、嫌な感情に囚われて人生を棒に振ってしまうことがない、ということでしょう。
◎仄暗い感情とも向き合う◎
ネガティブな感情に支配され、仄暗い気持ちに沈みそうになる時というのが人生にはあります。そんな時、目を逸らしても闇は消えず、一層その存在は大きくなっていきます。
上司との関係に置き換えてみましょう。
例えば、上司から充分な評価をしてもらえていないと感じるとき、自分を過小評価している相手とはあまり一緒に居たいとは思いませんよね。だって、上司の顔を見る度に腹立たしさや不満、苛立ちなどネガティブな感情を感じさせらますから。すると自然と彼への態度はよそよそしくなるし知らず知らずのうちに遠ざけるような行動をとってしまうこともあるかもしれません。
そしてそんな態度は相手にも不快感を与えるのでお互いの関係は悪化して、二人の間の闇はより深くなっていくばかりでしょう。これではきっと、あなたの職場は居心地が悪く殺伐とした不機嫌なものになっていきます。
感情というのは面白いもので、遠ざけようとするほどに存在感を増すくせに、向き合ってみると意外とあっさりしているものです。悲しい出来事があったなら、涙を堪えて我慢するより悲しい唄や物語を見聞きして泣いてしまった方がスッキリとします。腹が立ったなら無理やり飲み込んで無口になるより言葉や文字にに変えて吐き出してしまった方が後々尾を引かないものです(もちろん吐き出し方には注意が必要ですが)。
子どもから大人へと成長する過程で私たちは、感情を抑え我慢することを学んできました。それは社会生活を送る上で重要なことではありますが、いっぽうで感情とうまく向き合い、コントロールする術についてはあまり考えてはきませんでした。
少し前「キレる」若者の犯罪が問題になったことがありましたが、普段は大人しくてめったに怒らない人ほど強い感情と向き合った時に扱い方がわからずに暴発してしまうのかもしれません。
仄暗いネガティブな感情と出会う時、それを怖れて遠ざけるより、正面から向き合って感じてみる。ただそこにある感情をみつめて少しの時間でもいいからそれを味わってみる。
悔しさの味を噛み締めるように、挫折感にざわつく心の感触を確かめるように。ほんのちょっと勇気をもって取り組んでみると、そこから先、新しい世界が見えてくるかもしれません。
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