上司の唯一にして最大の仕事は部下をモチベートすることであるともいいます。良い上司というのは、部下のやる気を引き出しモチベーションを高めることに長けている人、ということができるのではないでしょうか。
ところがこのモチベートが実に難しい。
「最近の若い社員は…」なんてこぼしていても成果はあがりません。ジェネレーションギャップも、考え方の違いも乗越えて部下を動かす技術を身につけることができればどんなにいいでしょう。
今回は、そんな「人を動かす」上司力について考えてみたいと思います。
◆上司のやる気が部下を苦しめる
コンピューターなら条件や指示をインプットすればシステムエラーでもない限り、決まって一定の成果を生み出します。もちろん与えられたタスクに対して『何故?』なんて疑問は生じることはありません。ところが私たちはどうでしょう?
例えば、「明日の朝までに会議資料仕上げといて」という指示が午後9時にメールで届いたら?二つ返事で「Yes!」とはいかないですよね。
『どうしても朝までじゃなきゃダメですか?』とか、『何でもっと早く言ってくれないんですか?』って聞き返したくなるでしょう。
与えられたタスクに疑問など感じないコンピューターと違って無茶な注文には嫌な気分にもなるし、無理を強いられると反発したくもなります。
では、そんな無茶な指示に逆らったり無視を決め込んで実行しないかというとそうでもなくて、結局ほとんどの場合不満や疑問をグッと飲み込んでは仕事に向き合っているというのが現実ではないでしょうか。コンピュータと違うのは、そこに不満やストレスというネガティブな気持ちが生まれるということ。
もちろんビジネスであれば緊急対応が必要なケースもあるでしょうし、無理をしなければならない場合もあります。けれど、過度なストレスが部下を疲弊させ、仕事の効率そのものを落としているとしたら見過ごすことはできませんよね。
仕事熱心な人ほど短納期で大量の仕事を請負い易ってしまいやすいものですが、部下を持つ立場になったならそれがチーム全体に関わる問題である、という認識も必要。
プレーヤーとして優秀なビジネスパーソンがリーダーになった途端、部下をうまく使うことができていないというのはよく聞きますが、心当たりがある方は自分の仕事の進め方が時として部下を苦しめているかもしれないという見方を持っておくことも大切なのかもしれません。
◆「意味あるもの」に人は動かされる
自分のやり方が時に部下を疲弊させているかもしれない。そんな見方ができるようになると、一方的になり易い指示にもすこし柔軟性が出てきます。
それだけでも随分と雰囲気は変わるものですが、より効果的に事を進めるなら、ただ指示をするのではなく、そこに意味を持たせることです。
部下に限ったことではありませんが、人は「動くこと」に意味を見出せば能動的な行動にでるものです。
例えば、幼稚園児に保母さんが言います『みんな~元気にお返事しましょうね~』。
たいがいの子ども達は『はーい!!』と大きな声で応えます。それは、『元気にお返事する』ということが、保母さんに褒められるという『意味』ある行動だからです。ところが同じ事を中学生にしたって無視されるかシラけた態度を取られてしまうのがオチ。なぜなら「先生に褒められる」ことが中学生にとってはそれほど意味のあることではないからです。
私たちは、自分が大切だと意味づけをしている価値観に従って行動します。人に行動を求めるなら、その行動に相手の価値観に沿った「意味」を持たせてあげることが大切なんですね。
◆部下を動かす上司力
人を動かす、というのは決して簡単なことではありません。私たちは誰だって「人に言われたこと」よりも「自分のしたいこと」や「こだわりのあること」に意味を見出しているものだからです。
それでも、部下を持ったからには会社からは彼らを動かし、独りでできること以上の成果を上げることを求められます。
そこで上司に求められるのは、部下の価値観に沿って、仕事に対する「意味」を見出させてあげるスキルです。
例えば、収入やキャリアを大切にしている部下であればその仕事がいかに昇給や評価に繋がっているかを伝えればきっとやる気を出すでしょう。ボーナスやインセンティブも効果的かもしれません。
いっぽう、同僚との人間関係を重視する部下に報酬の話をしてもあまり響かないばかりか、時として反発を招く恐れだってあります。
お金に関する分野、キャリアアップに関する分野、家族や友人など人間関係に関する分野など彼らがどんな分野に興味を持ち、何を大切にしているのか?
部下を理解しなければ分からないことですが、まずは彼らを知ること、それが『部下を動かす上司力』を育む第一歩なのかもしれません。
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