囚人の制服を着せたグループと、看守の制服を着せたグループに実験参加者達をわけて、実際の刑務所で実験をしたのです。
もちろん、囚人役も看守役も、本物の囚人でも看守でもない一般の人達です。
その結果、最後は実験を中止しなくてはならないぐらいに、看守役が囚人役に暴力をふるうようになったそうです。何とも恐ろしい実験ですね。
でも、この実験でもわかるように、看守でも何でもない人が、看守の制服を着て、看守として扱われることで、看守のように振る舞い、囚人でも何でもない人が、囚人の制服を着て、囚人として扱われることで、囚人のような振る舞いになっていくのです。
これって、ビジネスでも応用可能だど思いませんか?
相手をどう扱い、自分がどう振る舞うかで、状況を変えていくことができるのです。
ちょっと頼りない上司がいたとしましょう。
役職は、課長。
『万年課長』なんて呼ばれたりして、自分でも、定年退職するまで、クビにさえならなければいいやと思い、ひっそりと会社で生きています。
こういう人を上司に持つと、部下としては、頼りなさにイライラし、つい『それでも課長ですか』という態度をとりたくなってしまう。
呼び方も、『課長』ではなく、『△△さん』と役職をつけずに呼んでいる人もいるかもしれませんね。
そうすると、その課長は、ますます頼りなくなります。
なにせ、『課長』ではなく、『△△さん』として扱われているので、『△△さん』としてふるまうからです。
もちろん、親しみを込めて役職をつけずに『△△さん』と呼んでいることもあるでしょう。
そうすることで、上司と部下ではなく、友人のような仲の良さは生まれるかもしれません。
でも、それではこの頼りない課長は、ずっと頼りないままです。
もちろん、『あなたそれでも課長ですかっ!もっとしっかりして下さい!』『××先輩の方が、よっぽと頼りがいがありますよ!』などと、言ったとしても、ますます頼りなくなってしまうだけです。
人は、扱われたようになるのです。
しっかりしろと部下に怒られるぐらいに頼りない人として扱い、××先輩よりも、頼りがいがない人として扱うことになってしまいます。
ですから、そのような人でい続けることになるのです。
もし、『△△さん』と名前で呼んでいるのなら、きちんと『△△課長』と、呼び方を変えてみましょう。
課長として扱うのです。
課長として、自分の上司として扱うのです。
尊敬できないかもしれませんが、尊敬できる部分を探しましょう。
探せば、一つや二つぐらいは、尊敬できる部分が出てきます。
もちろん、上司が部下を扱うときも同じです。
『きみは、本当にダメなやつだ!』なんて叱ったとしたら、その部下のことを、本当にダメな人間として、扱うことになります。
そうすると、その部下はダメな人間としてふるまい続けるのです。
『きみ』と名前を呼ばれずに、名前のない人として扱われることで、影が薄くなっていくかもしれませんん。
『○○くん』と、きちんと名前を呼ばれることで、上司に名前を覚えてもらえ、一人前の人間として扱ってもらえることになりますから、振る舞いがそのように変わってきます。
他にも、私はときどき、宿泊するにはちょっとお値段が高いので泊まれないけど、雰囲気を味わいたくて高級ホテルでお茶を飲むことがあります。
そうすると、高級感溢れる家具や、サービスに、自分の行動がいつもと変化していることに気付きます。
とても大切なお客様として、お店の方が私のことを扱ってくれるので、いつもよりも歩き方や振る舞いがお上品になるのです。
大切なお客様として扱われるのは、とても気分が良いものです。
そう扱われると、大切に扱われるにふさわしい人の振る舞いに、勝手に変化しているのです。
そんな自分に、ときどきクスッと笑ってしまいます。
高級ホテルでは、お客様をとても大切に扱いますので、そこに来る客も、大切に扱われるにふさわしい品のある振る舞いになるのです。
席についたお客様に、水の入ったコップを、バンッ!と置くようなお店は、お客様を大切に扱っていないことになります。
そうすると、大切に扱われていない客は、大切に、扱われなくて当然のような振る舞いになるのです。
つまり、客側も、言葉や態度が荒くなるのです。
みなさんは、自分の周りの人達を、どのような人として扱っているでしょうか?
そして、自分はどのような人として振る舞っているでしょうか?
一度、チェックしてみるといいかもしれませんね。
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