この二つが何となく関係ありそうだと感じられている方は沢山いらっしゃると思います。
例えば読心術を使って有利な交渉をするにはどうすればよいか、マーケティングのために集団の行動と心理をどう理解するか、部下と上司との人間関係をどう改善するかなどといった事に心理学が役立つであろう事は容易に想像できるのではないかと思います。
勿論そのような内容については心理学の得意とする分野でもありますが、実はもっと深遠な部分で心理学はビジネスと密接に結びついています。
それは、ビジネスも私達人間が人との関わりを持ちながら生きてゆく活動の一つの側面だからです。
心理学に「投影の法則」と呼ばれるものがあります。
投影の法則とは、「私達が見ている全て、感じる全ては私達の心の中を映しだしたものである」という誰しもが逃れる事が出来ない法則です。
日本のさる地方に「あぶってかも」という物があります。地元の方はご存知で容易に想像がつくかもわかりませんが、「あぶってかも」を初めてお聞きになった方はどのような物だとお考えになるでしょうか?
「何かの道具?」「鳥の仲間?」「野草?」
私達は私達の感じ方で知っている何かに結びつけてその正体を知ろうと想像を巡らせますね。
これと同じように私達は私達のできる感じ方や見方で自分の外の世界を見ようとします。理解し、判断しようとします。真実はさておき、ですが。
換言すれば、私達は自分の見え方や感じ方でしか外の世界を見る事が出来ないのです。
これが「投影の法則」です。
だから、何かの状況に直面して深刻になる人もいれば、同じ状況に直面しても深刻にならない人もいます。また、その状況では深刻にならなかった人が、別の状況では頭を抱え込むという事もあるのです。
状況の感じ方や捉え方が人により異なるのは、このためです。
私達は投影の法則に支配されますから、自分の心の中に某かの問題を抱えているとそれが自分の周りの社会に問題として映し出されます。
そしてそれがネックとなって自分の前進や成功を阻む事になります。
私達の心は、大きくは顕在意識と無意識に大別されます。
顕在意識は自分の頭でわかる意識で、無意識は自分の頭ではわからない意識です。
無意識は私達の意識の90%以上を占めており我々の行動に大きな影響を与えます。
そして多くの問題は、この無意識の中に埋もれています。
従って、「こうしなければならない」と顕在意識で思っている事があったとしても、無意識のレベルでそれに抵抗していると、そうできない事がよくあります。あるいは、何となくそうする事を避けてしまう事もあります。
「こうしたいと思っているのに、こう出来ないのは何故だろう?」
「こうなると思っているのに、そうならないのは何故だろう?」
私達はそう感じ、自分の外の世界に原因を見つけ出そうとし、あるいは転嫁しようとしますが、多くの場合その状況を作り出しているのは自分自身の抵抗なのです。
この心の問題を浮き彫りにし、理解して取り除いていくのが心理学を用いたカウンセリングなのです。
そしてその問題が緩和されたり取り除かれると、人は前に進み出す事ができます。そして自分の願いや思いを叶える成功の道へと歩み続けられるのです。
一例として、お金に関して何らかの抵抗がある場合を考えてみます。
ビジネスのシーンでは当然お金やりとりが生じてきます。
そして、それがあるレベルでは問題にならなくて順風満帆に進展してきたとしても、やりとりするレベルが一線を越えそうになったときに無意識的に心のリミッタが働いて、それ以上のビジネスの拡大を止めてしまう事や、場合によってはビジネス自体を潰してしまう事があります。
この抵抗の原因は人により様々ですが、例えば心のどこかで自分はこれぐらいが相応だと決めている場合があります。
そうすると、これ以上ビジネスを拡大すると自分にはふさわしくないので失敗するに違いないという怖れを心のどこかで感じ始めるようになります。そして自分の周りの状況にそれを投影して本当にそうなのかどうかという冷静な判断が出来なくなってしまうのです。
その様な状況になると人間は先に進めなくなりますから、ビジネスの拡大を止めてしまいます。あるいは、失敗という怖れを自分でコントロールしようとして、ビジネス自体を自ら破綻させるように動いてしまう事すらあります。
もしこのお金に関する心の問題が無ければ、ビジネスの拡大についての状況を適切に判断でき、更に拡大していくことが出来たかもしれませんね。
このように、心理学はより深い部分でもビジネスと大きく関わりを持っているのです。
さて、先ほど投影の説明に使った「あぶってかも」は、博多地方のすずめ鯛の呼び方なのです。あぶって食べると鴨肉のように脂が乗って美味しいというところから「あぶってかも」と呼ばれています。皆さんの想像は当たりましたでしょうか?
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