「お二人ともカウンセラーだったら、ケンカもしないでしょう?お互いに理解し合えていいですよね。うらやましいです・・・。」
恋愛や結婚の問題で来られる方はほとんど申し合わせたようにそうおっしゃって下さいます。
今日はそのお話をさせていただきましょう。
コラム初登場というのにいきなりケンカの話か・・・。
うーむ・・・(苦笑)
さて、心を扱うカウンセラーというイメージから『きっと相手の考えていることが分かるから、ケンカになる前にきちんとお互いで解決できるんだろう。私の彼とは大違い』なんて思われているのかもしれないですね。
でも、実際は普通のカップルとあまり違いはなく、当たり前のようにケンカもするんですよね。
ついこの間も妻の理加が体調を崩したときに、僕の配慮・理解が足りないという件にて一戦交えたばかりです。
ちなみに我が家の夫婦喧嘩は冷戦が3、交戦が7の割合で、過去に何回か核戦争級のケンカが勃発し、危うく破滅の道を進みかけたこともあるんです。
(この比率や回数については、往々にして夫婦間で異なるものですから、理加に言わせれば全然違う数字が返ってくるかもしれません。)
ただ、ケンカの焦点は普通のカップルとは違うかもしれないのは確かです。
僕もカウンセラーになる前は普通の人だったわけで、普通の人とたぶん同じような恋をしていたはずです。
そのうちきっと話をさせていただくことになると思いますが、僕も色んな恋をして、色んな別れをして、色んな悪い男もやってきたんですね。
その違いというのは、普通のカップルの場合、つまるところ「あなたは私の気持ちをわかってない!!」というところだと思うんです。
これは僕のカウンセリングの経験からも圧倒的に一番人気ですね。
一方我らカウンセラーカップルの場合は「私の気持ちをわかっていながら、なにその態度は!?」というところで、ちょっとフクザツになります。
事実、私たちのケンカを目撃した友人Tは「カウンセラー同士の夫婦喧嘩って、ちょっと怖いね・・・」と素直な感想を漏らしてくれたこともあるくらいで。
でも、実は一番違うのはその戦争の期間ではないかと思います。
かつて僕が普通の恋愛をしていたとき、一たび戦火が上がれば、優に一晩は和解することなどなく、下手をすれば1週間以上に渡ることも珍しくなかったんです。
しかも、僕はいつも「謝るのは俺の方や」と思っていました(因みに当時の彼女も同じ事を思っていたらしい)。
ところが、カウンセラー夫婦となった今は、長くても一晩。
総じて揉め事として長引くことはあっても、単発的なケンカとしてはそんなものなんです。
なぜなんでしょう?
僕たちは経験上、ケンカは止むを得ないものであることを知っています。
パートナーシップというのはいわば二人でトンネルを掘っていく作業に等しいので、掘り進んでいけば必ず堅い岩盤にぶつかるものなんです。
その岩盤を回避して進むときもあれば、思い切ってダイナマイトで爆破して道を作ることだってありますよね。
ケンカというのはその爆破のことなんです。
火薬の量を間違えてトンネルが崩れるごとく恋愛が終わってしまうこともよくある話です。
だから、僕たちは岩盤の爆破処理をした後は、どういう方法でその後片付けをするか?に意識を集中するわけです。
そうすると、カウンセラーというのは、そのためのツールを開発して提供しているといっても過言ではないかもしれないですね。
僕たちは失敗や争いを本来は好みません。だから、ケンカや仲違いを非常に怖がってしまうんじゃないでしょうか。
これも無理ないことです。
でも、依然戦争がなくならないように、僕たちの間の争いも必ず起こると思っていたほうが賢明だと思ってるんです。
だとしたら、起こってしまった後にどう対応しようか?を考え、実行する心を持ちたいと僕は思うんです。
まあ、言葉ではかっこいいことを言っているかも知れませんが、実際はなかなかうまくいかないから難しいんですけどね。一回目の爆破の後に予期せず更なるダイナマイトを仕掛けてしまうこともありますし、一人で爆破してしまい、彼女の冷たい視線に晒されることもありますし、火薬の量を間違えて関係が終わりそうになったことも、連日のように岩盤にぶつかることもよくありました。
でも、長年のセラピーのお陰でそういった心の体力はだいぶ鍛えられているせいか、そんな状況でも「どうしようか?」を考える余裕が自然と出来てきたようです。
では、その処理ツールとは何でしょう?
その多くはコミュニケーションだと思うんですね。
「ごめん、俺が悪かった」と自分の非を認めるだけがケンカの解決方法ではないと思います。
「今回はこういう点で分かり合えなかったよな。次はうまくやるようにしよう」と深刻にならずに次への展望を示すときも必要でしょう。
お互い反論なし、ただ聴くだけと約束して、言いたいことを全部言って収まることもありますし、しばらく冷却時間を取って、改めて向き合って話をするときもあります。
どんな方法を取るにせよ、つまらないプライドは捨てて、素直になることが大切ですよね。
付き合っているということは相手のことが好きということです。
それに素直になった方がきっと強い。
そこに嘘をついても苦しくなるのは自分の方ですから。
もちろん、ケンカのときだけそれをやってもうまくは行きっこないですから、普段から心や本音のコミュニケーションを大切にして、向き合うときはきちんと向き合うし、話をする時間を意識的に作るようにもしています(その点、二人共おしゃべりなので話をする時間を作ることにはほとんど事欠かないのは幸いですね)。
そして、その大切さをお互い確認するようにしています。
これも実際のコミュニケーションと同等に大切なことだと思っているんですよ。
僕らの場合、カウンセリングという場で、そういう話をさせていただくことも多いのでやりやすいことは確かだとは思いますが。
実際に、そうした日常の積み重ねとケンカの時間は反比例するようです。
お互い忙しくて話をする時間が少ないときは和解までの時間はとても長く感じるものです。
失敗やケンカは必ず起こるものだと思います。
それにどう対処していくか?が大事ですし、そのとき僕たちの当たり前の日常が必ず大きな影響を及ぼしてくるものです。
だからといって、何も難しいことをしなくてもいいと思うんです。
普段は思いっきり楽しんでいるだけでいいでしょう。
僕たちも、仲間内ではかなり有名なバカップルですし、バカップルな分、お互いの間に嘘や作り事をしなくて済むようになります。
。
案外これが一番大きいことかな、とも思います。
人間としてはまだまだ未熟だから、お互い分かり合えないところはいっぱいあります。
だから、衝突するし、ケンカにもなります。
当然のことだと思うんです。
未熟であるということは成長する余地がまだあるということでもありますから、そこを次のテーマとしていけばいいのではないでしょうか。
ケンカというのも自分を成長させるための一つのコミュニケーションツールなんだと思います。
本音を言えば、出来ることなら避けて通りたいものだけど、仕方がないので、その場はまた気合を入れて頑張ることにしようと思います。
根本 裕幸