春。
実は、私個人的には、あんまり春が好きではありません。
そりゃ、お花は咲き出すし、あたたかくなってきて過ごしやすくなってきて、
なんだか新しい気持ちにはなるんですが、どうも「うれしい」とか「楽しい」とは、あんまり思えないんですね。
桜を見ながら、その美しさに感動したりはするんですが・・・
その理由が、この時期特有の”だるさ”にあります。
なんだか、身体の緊張感(コリ)が取れてきて、何かが這い出してきそうな気分になる・・・
漢方(東洋医学)では、この木の芽時っていうのは、冬の間にたまった身体の疲れが溢れ出してくる時期だと見るんですが、まさしく、そんなイヤ〜な気分になるんです。
この気分にピッタリの言葉、というか文字を、私はやっと去年見つけ出しました。
それは、『蠢』(うごめく)。
パソコンの画面では読みにくいかもしれませんが、この「うごめく」という言葉、いやいや漢字は、
”春に虫虫”って書くんですよね。
このことに改めて気付いた去年の今ごろ、「そうそう!虫なのよ、虫!」と、ひとりで喜んでいたのを、
また今年も改めて、思い起こしてみました。
なぜかというと、実はここだけの話、我が家は今月お引越しをするんです。
戦前に建てられたという、ふる〜いお家なんですが、縁側なんかがあって、とっても味があるお家なんです。
もちろん、通風性はバツグン、”マックロクロスケ”が出てきても、いい具合。
そこでの、私の心配事といえば、夏の『蚊対策』。
別に寒気がするほど、虫が嫌い、というわけではないんですが、
蚊のおかげで、眠れない夜ほど、苦痛に感じるものもありません。
(ちなみに、蚊取り線香やあのノーマット類の方が苦手なんです)
気持ち的には心機一転、『変化』するんだな〜と思っていたりするんですが、
どうも落ち着かない気分なんですよね。
主人とふたりで、お互いが気に入ったお家だし、庭も小さいながらあるし、静かだし、実家からも近いし、
条件的には、言う事はないんですが・・・
でも、この気候も手伝って、それと「ここから、蚊入ってくる・・・」と、昨日チェックしてきたこともあって、
その『変化』を、気持ちよく迎え入れる準備が、なかなかできないでいたんですね。
ただ、自分の中で何かが”うごめいている”感じだけが、強くなっていくんです。
で、ふと思い出したことがありました。
それは、忘れもしない小学校卒業式の日、なんの前触れもなく突然、顔にアトピーの症状が出てきたことです。
アトピーというものの存在すら知らなかった頃ですから、まぶたが赤く腫れてしまって、単純にイヤな気分だったんです。
それに、なんだか気だるい、眠い・・・今思えば、思春期突入の合図のようなものでした。
私たちには、身体や心が大人へと成長していくときに感じる、特有のイヤ〜な気分があります。
でも、それはあまり認識されることなく、どちらかといえば、「恋」や「異性」、「まわりの目」へと向けられていたのかもしれません。
このイヤ〜な気分、実は大人になってもず〜っと影響していることが多く、
「自信がない」「やる気が出ない」「自分が嫌い」などの感覚も、元をたどれば、
”対処しきれない””手におえない” という心の中で自然に起こる、『変化』に対する反応なんです。
なんだか得体の知れないものが、自分の中にあるように感じてしまう・・・
そして、それが今にも這い出てきそうに感じてしまう・・・
それも、ジワジワと、ゆっくりと、時間をかけて・・・
そして、そんな自分がなんだか「変」に思えてしまう・・・
この感覚が、自分の意図しないところからやってくるものに思えて仕方がなかったので、
”対処しきれない”と感じてしまうんですよね。
それは、成熟していくことかもしれないし、まったく新しい職場に就くことかもしれない、
対人関係が変わることかもしれないし、年をとることかもしれません。
でも、そのすべては”新しいステージに立つ”こと以外のなにものでもないんですよね。
私たちは、「こうしたい」や「こうなりたい」という望みがあると、そこに気持ちを向けて一生懸命、
”そうなるように”と願ったりします。
でも、”そうしよう!”と何も考えずに即行動に移すのには、抵抗があるんですよね。
というよりも、まず思うのが、「どうすればいいのか、わからない」です。
で、願いはするんだけど、どうすればいいのか、わからない・・・また、気を持ち直して、やっぱりどうすればいいのかわからない・・・と、ついついグルグルと同じところを回ってしまいます。
そこに突如、登場するのが、虫が這い出てくるような、何かがうごめいているような、この感覚です。
これは、もっとわかりやすく言うと、イライラなのかもしれません。
「ムシの居所が悪い」とか、「ムシが好かない」とか、「疳の虫に触る」とか言いますよね。
小さいお子さんだと、「ムシが出る」なんて言います。
なるほど、引越しが決まるまでは、夫婦喧嘩が絶えなかったわけです。
(笑)
お互いが、「虫の居所が悪かった」うえに、やってきている『変化』に”対処しきれない”と感じていたんです。
でも、いざ”そうしよう!”が見つかって、そうすると決めると、平和なものです。
あとに残っているのは、この虫の正体を”知りたい!”という、変な好奇心でした。
みなさんの心の中にも、この虫、いるんですよ。
ただ、それは虫ではなく、感情なんですけどね。
「蚊対策」は、最悪だんなに蚊帳でもつるしてもらうことにして(風流でしょ?)、春の風の合図に合わせて、
心の中から、どんな虫が出てくるのかを楽しみにしようと思います。
源河 はるみ