「今日はつかれたねぇ、飲みにいこうか」という感じで仲のいい友人と居酒屋に行ってきました。
ドン、ドンとテーブルの上には、大きなジョッキが二つ「ぷっは〜、美味い!!!」と一杯飲んで、一息ついて、気持ちも一ほぐれついた頃、友人が、
「あのね、ちょっと聞いてくれる」と言う形で友人は自分の夢について語ってくれました。
差別が無い世の中を作りたい、争いの無い世の中を作りたいというのが彼の夢でした。
彼は在日韓国人の3世で、差別というのを自分の身をもって知ってきたからこその夢でした。
友人は語り始めてくれました・・・・
「俺な、日本の学校で勉強して、日本語しゃべって、韓国って行ったこともないし、韓国語もしゃべられへん、でも国籍は韓国人ということで、差別の経験や、悩んだことってもあったんや・・・」
そして、差別についての現状をいろいろ教えてくれました。
今は、「そんなのぜんぜん気にならない」って人の方が多くなってたり、理解してくれる人が多くなっているんだけど中には、昔、戦争があった影響もあって血が汚いとか言う人もいるそうです、そんな人がいると思うと自分のことを言おうと思うとすごく勇気がいるし、自分をさらけ出すのって怖くなるよねという話をしていました。
すると友人は・・
「そうやねん、だから自分をだせない、受け入れられない感じって無意識的にどっかに付いてまわるねん。俺のところには娘がいるんやけど、娘にはそんな思いはさせたくない。
だから、差別のない世の中を作るのが夢やねん、もっともっと、人と人がわかりあえる世の中にしていくのが夢やねん。
でも、この夢を実現するのに、俺が悩んでいるような思いを他の人にさせたくなかったから一人で何とかできないかって思ってきた。
一人でどうやったらいいんだろう、俺一人の力でなにができるんだって、いろいろ考え た。でも、わかったねん一人でなんとかしようと思っても無理だって。」
そう語り、ふぅーっと肩の力が抜けていくような息を吐き、そして静かに吸い込みました。
その息を吸い込むと同時に友人の顔つきが変わって行きました。
なにかを言おうとして勇気をだそうとしているような、凛とした顔つきでした。
「俺、この夢をかなえるのに、誰かに協力してもらうというお願いがどうしてもできなかったんだ、でも、夢を実現さそうと思ったら誰かと協力したり、同じ夢をみてくれる賛同者がいることに気づいたんだ、なにをしたらいいのか、これからどうしていったらいいかは、解らないけど、よければ協力してくれないかな。」
誰にも言ったことが無い一言、それは本当に勇気がいったと思います。
一人で何とかしようと頑張ってきて、でも何ともならなくて、友人の夢は死にそうになっていました。
彼の夢はデットゾーンに入って終わろうとしていたのです。
でも、この夢を生き返らせるには、今までやりたくなかったことに、やったことが無いことをする必要がありました。
そして、友人は夢を生き返らせるために、今までやりたくなかったこと、やったことが無いことをやったわけです。
それが『誰かにお願いする』ということでした。
自分のこだわりや、プライド、自分なりのやり方、痛み、よりもなによりも友人は夢を大切にしたからこそ言えた一言だったと思います。
その心のこもった夢と勇気に感銘をうけた僕は、この夢に賛同したいと思いました。
「もちろん、できることがあれば協力させてもらうよ」
僕の、この言葉を聞いた友人の顔は、嬉しさと安堵が混じったような笑顔で「ありがとう」と言った後、再びジョッキに手を伸ばしてビールを飲み、ジョッキをテーブルに戻すと同時に「ふぅ〜」一仕事終えた男のため息を吐き出しました。
人は夢を食べて生きていく動物だという話を聞いたことがあります。
「僕こんなことがしたい」「私、こんな風になりたい」「俺、この女と一緒に生きていきたい」といった夢に向かって行く時、人は本当に活き活きします。
「私、この夢の為なら24時間働いてもしんどくないわ。」という人がいるくらい、どんな壁も、どんな苦境も、夢の為ならと思うと頑張れたり、苦境が苦境でなくなったりします。
もしかすると夢に生かされているような感じがするかもしれません。
それほど、夢の持つ力は、すごいと思います。
夢が本当に実現するのかどうかわからない、叶えられるかどうか解らない、なにか空を手でつかむような感じだ、と思った時、恐れや不安がでてきます。
それでも、本当にこの夢を叶えたいと願えたり、きっとできるって信じることができたり、本当に夢を大切にできた時、恐れや不安は、”力”に変わっていくような気がします。
そして夢の持つ力は、さまざまな奇跡を起したり、人生の背中を押してくれるような気が僕はします。
友人が夢を語って時、僕の心が動かされたように人に対しての影響力もあります。
僕も昔、カウンセラーになりたいという夢を持ったとき、
「ホンマにカウンセラーになれるんだろうか?」という疑いがいっぱいでてきて
何度も、何度も、あきらめそうになりました。
それでも、夢を大切に思った時、夢の力に背中を押されて、もう一頑張り、もう一踏ん張りしようって思うことができました。
すると僕の夢に力を貸してくれた人のおかげもあり、いつの間にか夢の芽が出て、花が咲いて、実がなって夢は実現していきました。
今回の友人のお話で、改めて夢の持つ力ってすごいなと気づけました。
これから、もっともっと、夢を大切にしていきたいと思えた出来事でした
原 裕輝